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予定外の出費

HDDを買いに土曜は秋葉原をうろついていたわけですが、無事HDDを買い終えたところで、せっかく秋葉原に来たのだからとスターベースやシュミットを冷やかしに…………ハッ!!

……おかしい、なぜこんなものが手元にあるのだ?(笑)


というわけで、OPTOLONGのCLS-CCDフィルター(CLS-CCD for EOS APS-C)をつい買ってしまいました(^^; CLS-CCDはいわゆる「光害カットフィルター」に属するフィルターです(CLSは"City Light Suppression"の意)。LPS-P2フィルターがあるのになぜ?と思われるかもしれませんが、この両者、かなり性格が異なります。






上はLPS-P2、下はCLS-CCDの透過特性のグラフ*1 *2です。これを見ると、LPS-P2は光害成分である水銀やナトリウム由来の輝線はカットしますが、他の波長は極力通すようになっています。一方、CLS-CCDはむしろ逆に、天体由来のOIII(496nm, 500nm)、Hβ(486nm)、 NII(654nm, 658nm)、 Hα(656nm)、 SII(672nm)のみを通し、それ以外は積極的にカットするような設計になっています。

つまり、CLS-CCDは輝線を発する天体専用と言っていいでしょう。具体的には惑星状星雲や超新星残骸、もっぱらHαで輝く散光星雲など。逆に、系外銀河のような連続光で輝く天体には向きません。「光害カットフィルター」というよりはむしろ「複数のナローバンドフィルターを組み合わせて1枚にしたようなもの」と理解すべきかと思います。


これで、網状星雲のような天体や暗めの散光星雲を撮るのが少しは楽になるといいのですが……。



一応、LPS-P2-FFとCLS-CCDの外見を比べてみます。写真だとやや分かりにくいですが、CLS-CCDの方が多くの波長をカットするということで、透過してくる光は暗く感じます。



裏側はこんな感じ。LPS-P2-FFは開口部とほぼ同サイズのガラスを使っているのに対し、CLS-CCDでは円形のガラスの上下をマスクするような構造になっています。前者は全面をフルに使うため、わずかな蒸着の瑕疵も許されませんが、後者の場合、たとえ多少蒸着不良の箇所があっても、マスク部分に回すことができれば良品として出荷できます。ガラスを円形に切ると無駄が出るとか、逆にコストアップになりそうな部分もありますが、そのあたりは歩留りとの兼ね合い。おそらく、いろいろ考えられたうえでこの構造になっているのでしょう。


開口部は、縦方向のサイズが両者ほぼ同一である一方、横方向についてはLPS-P2-FFが枠ギリギリまで四角く開いており、円形のCLS-CCDに比べコーナーの分だけ広くなっています(最大幅はどちらも同程度)。ただ、どちらもセンサーサイズからすれば十分に開口しているといっていいと思います。本当に問題がないかどうかは、試写してみないと何とも言えませんが。

CLS-CCDの方で特徴的なのは、フィルター下部の「爪」の部分。LPS-P2-FFの方も似たような作りになっていますが、爪はCLS-CCDの方がずっと長くなっています。マウント内にフィルターを取り付けたとき、この「爪」がバネの働きをして内壁に突っ張り、フィルターが固定されるのですが、CLS-CCDは爪が長い分、この「突っ張り力」が強く、かなり強固にマウントに食いつきます。撮影中に外れる心配がないのはいいのですが、結果として付け外しが非常に固く、やりにくいものになってしまっています。もっとも、Astronomikの同様のフィルターを見ると、構造は違えど爪の長さは似たようなもの。こっちが世界標準なんでしょうか……(^^;



あと、両フィルターを光に透かして見ると、CLS-CCDはほぼ全面にわたって均一な一方、LPS-P2-FFはフィルター枠に近いところに明確な「蒸着ムラ」のようなものが見られます。上で書いた、開口部とほぼ同サイズのガラスを使うことの欠点が出た感じです。

実際に画質に影響しているかどうかは不明ですが、これまでも画像の四辺に沿って青っぽくカブる現象がしばしば見られたので、もしかするとこれが原因かもしれません。CLS-CCDでこの現象が解決するようなら、このLPS-P2-FFを何か別のフィルターに入れ替えることも考えないといけないかもしれません。

*1:両図とも各メーカーのサイトより

*2:横軸が異なることに注意