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新年初撮り

この年末年始は月齢の周りがいい上に天候にも恵まれ、昨年の天候不順の鬱憤を晴らすかのように出撃しまくっています。昨日は風が穏やかで長焦点鏡を使っても大丈夫そうだったので、EdgeHD800を引っ張り出していつもの公園へ。これで12月28日、30日、1月2日とほとんど1日おきに出撃していることになります。

こういう時、遠征せずに自宅周辺で撮るスタイルは便利です(^^; *1


日没と前後して公園に到着。夕空には月と金星が並んで実に美しい光景です。その上には火星も。



撮影用のEdgeHD800とは別に、観望用として持ってきていたミニボーグ60EDの接眼部にコンデジPowerShot S120)を押し当て「手持ちコリメート」でパチリ。地球照とのコントラストが印象的です。とはいえ輝度差が大きすぎて、写真では肉眼で見たときの美しさに到底かないません。人間の目は優秀だなぁとつくづく……。


さて、日没を待って機材を展開します。今回の目的は、先日動作確認したオフアキシスガイダーの本格稼働。実は12月中旬に、同じ目的でペルセウス座の惑星状星雲「小あれい状星雲」ことM76の撮影を試みていたのですが、その日は薄雲が空から取れず、結局未遂に終わっていました。

今回はそのリベンジです。

M76が天の川の近くにあることもあってか、ガイド星はすんなり見つかりました。今回はガイド精度がどの程度出るか全く分からなかったので、露出時間は10分に抑えましたが、ガイド状況を見る限り、ズレは±1秒以内で極めて安定しており、これならより長時間の露出をかけても大丈夫そうです*2


M76を撮り終わった後は、向きを変えて「かに星雲」ことM1を。M1もM76も以前も撮ったことがありますが*3、ガイド鏡ガイドで長時間露出が難しかったこともあり、かなり荒い写りでした。このあたりが改善できれば……というところです。


ところでこの時、ちょっとしたトラブルに見舞われています。M76からM1にターゲットを移してガイドを再開したところ、ガイド星が暴走気味にどんどん外れていくのです。

一瞬、赤道儀の不具合やケーブルの断線を疑いかけましたが、気づけば答えは簡単な話。M76→M1の移動で望遠鏡の姿勢が東西入れ替わっているので、オートガイダーからの指令と動作方向の対応も逆にしなければいけないのですが、キャリブレーションのやり直しをサボっていたため、これがされていなかったのです。

一応、PHD2には望遠鏡のフリップに伴い動作方向を逆転させるためのオプションがあるのでこれを利用すればいい*4のですが、撮影中でない限り、フリップ後は横着せずにキャリブレーションをやり直した方が確実でしょう。


そんなこんなでどうにか予定枚数を撮り終え、翌日まとめて画像処理。で、出てきた結果がこちら。



2017年1月2日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出600秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

まずはM76です。見かけの大きさが小さく、明るさも10等程度とメシエ天体の中では最も暗い部類ですが、それでも角柱状に見える中心部の両側に、蝶の羽のように淡いガスが広がっているのが分かります。

以前撮ったときは、この「羽」の部分がよく見えなかったのですが、今回どうにか捉えることができました。




2017年1月2日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出600秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

続いてM1。こちらも、前回よりフィラメントがハッキリと写ってくれました。気持ち的にはフィラメントのシャープさがもう一息欲しいところですが、このあたりはシーイングの問題も大きいのだろうと思います。長波長側の光はシーイングの影響を相対的に受けづらいので、Hαのナローバンド画像でもブレンドでもすればもう少しマシになりそうな気はしますが、今の手持ちの機材だとまずはこんなところでしょう。


しかし、今回撮ってみて思ったのは、EdgeHD800の「F10」というのはやっぱり暗いということ。12月28日に使用した「ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG」の組み合わせ(F5)と比べると面積当たりの光量は1/4しかありませんから、露出不足気味にもなろうというもの。

幸い、オフアキが実用できることがハッキリしましたので、可能な限り長時間露出する方向で運用していきたいと思います。

*1:空はダメだが役に立つ(ぉ

*2:PoleMasterで精密に極軸を合わせている効果もあるでしょう。

*3:しかも、奇しくも2015年12月5日にM76とM1を同時に撮っています。冬に長焦点鏡で狙う小天体というと同じようなチョイスになるようです。

*4:赤道儀のASCOMドライバによっては、PHD2側で逆転を指示しなくても、姿勢を検知して自動的に動作を逆転させてくれるものもあります。