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大気による色分散量と補正量

「現物合わせ」で補正をやってみて正直かなりつらかったので、どの程度プリズムを動かせば大気による色分散を補正できるのか、計算してみました。

大気による色分散量の計算は「PlanetPrism」で行いました*1焦点距離は6000mmと設定しています。一方、プリズムによる補正量は、BK7のR, G, B各色に対する屈折率*2を基に屈折角の差を求め、さらに撮像素子面までの距離を考慮して算出しています。ここでR=660nm, G=550nm, B=440nmとしています。


まず、大気による色分散量ですが、計算の結果はこちら。BとG、GとR、そしてBとRの像の位置のずれを示しています。

ASI120MM/MCのピクセルサイズは3.75μmですから、今シーズンの木星のように60度以上高度があっても、3〜4ピクセル分くらいの色ずれがあるのが分かります。これは実感とも合致する数値です。


一方、今回のシステム(プリズム以降の光路長=308.5mm)での補正量を計算したのがこちら。

頂角はウェッジプリズムの頂点の角度で、このADCでは0〜2度の範囲で調節が可能です。プリズムに接続されている2本のレバーが閉じているときは頂角0度で補正効果はゼロ、180度開いた時は頂角2度で最大の補正効果を示します。


この結果を基に、大気による色分散量を打ち消すだけの補正効果が得られる頂角を計算すると以下のようになります。

グレーの部分は、そのセッティングが不可能であることを示します。

こうしてみると、60度ほどの高度にある天体の色分散を補正するには、プリズム間が水平指標を挟んで10度ほどの角度をなすように回っていれば十分ということが分かります。プリズムハウジングのひと目盛が15度ですから、かなり微妙な調整です。苦労したのも当然と言えば当然でしょう。


そこで、プリズムをフリップミラーの直前……正確には「ADC〜【7522】M57→M36.4AD(逆向き)〜【7459】M57→M57AD?〜【7506】2インチホルダーSS〜フリップミラー」とつないだ場合(バックフォーカス=170.5mm)を同様に計算してみると、

となります。この場合、同様の状況下でプリズムの回転量は2倍ほどになります。画質への影響は多少あるかもしれませんが、こちらの方がまだ操作しやすそうです。

*1:実際の色分散量は、気圧や温度によって変動します。ここに示すのはあくまでも目安ということで。

*2:http://www.products-sigmakoki.com/category/opt_d/opt_d01.html