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CP+ 2016

今年もCP+が開幕。ちょうど今日は大学の前期試験がある関係で、キャンパス内の職場に立ち入れず休みなので、混みそうな土日を避けて出撃してきました。昨年同様、各カメラメーカーも新製品をCP+に合わせて投入してきているので、色々と楽しみです。

平日とはいえ初日なので、それなりに混むだろうと思って早めに出かけたのですが、一般開場40分前ですでにこの待機列。開場10分前くらいになると列の伸びがものすごい勢いで加速していきました。土日に出かけることを予定している方は、それなりに早めにつくことを心がけた方がよさそうです。

さて、ではここからは各ブースで目についたものを。

ビクセン

今回のCP+で、びっくりするほど元気だったのがビクセンです。

ここ数年、どうも元気のなさが目につき、発表される製品も「?」というのが正直多かった印象ですが、今回はとにかく参考出品数がすさまじく、これが順調に製品化されれば、今後1〜2年は新製品ラッシュになりそうです。



一番の目玉は、昨年「SXP-Concept」として参考出品されていたものに相当する「AXJ赤道儀」(参考出品)です。昨年は赤緯軸がSXPベースだったところがAXDベースのデザインに変更になっています。名前から分かる通り、AXDの1つ下のクラスに相当していて(AXJの「J」はジュニアの「J」)、搭載可能重量は20〜25kg程度を想定しているとのことです。


赤経軸、赤緯軸に全周エンコーダを装着可能で、装着した場合はリアルタイムで追尾誤差が補正される上、クランプを緩めて手動で操作してもアライメントが狂いません。iOptronなど海外メーカーの赤道儀では、こうした機能を搭載したものがすでに発売されていますが、ようやくこれに追いついてきた格好です。

価格はAXDを超えないところを目指している(「ジュニア」が本家を上回ってはアレなので)とのことですが、まだデザインや使用部品を含めて仕様が固まっていないのでどのくらいになるか現時点では不明。仕様が固まるにはまだ1年やそこいらはかかるだろうとのことでした。

なお、AXJ赤道儀にエンコーダを搭載できるならAXD赤道儀にも搭載できるのでは?と思うところですが、残念ながら内部構造的にAXD赤道儀にはエンコーダの内蔵はできないとのこと。逆に言えば、AXDとAXJはガワの形は似ていても、内部構造はそれなりに違うということのようです。


展示されていたAXJ赤道儀は、同じく参考出品の「WiFi機能つきアドバンスユニット」を使い、タブレットから制御されていました。架台の向きが変わると、タブレットに表示されている星図もリアルタイムで動きます。文字通りStarbookがタブレット経由で動いているようなもの。この分野ではセレストロンに大きく水をあけられているので期待したいところです。ただ一方で、今のアドバンスユニットの価格(税別定価66000円)を考えると、製品化できたとしても結構な価格になってしまいそうな気がします。どこまで価格を抑えられるでしょうか?



AXJ赤道儀に載っていた鏡筒は、実はこれも参考出品の「R200SSPro」。現行のR200SSに比べ、鏡筒の強度アップ、増反射コートに加え、鏡を保持する爪をなくして像質の改善を図っています。コレクターPHと合わせれば、魅力的な撮影鏡筒になりそうです。


参考出品の「APシリーズ 目盛環ユニット」。AP赤道儀は架台が向いている方向を知る手段がないという、赤道儀としてはあまりに大きな欠点を抱えていましたが、これがあればその欠点が解消されます。これが出れば、APシリーズが赤道儀の選択肢に入ってくるという人も多いのではないでしょうか?APシリーズが出た時にこれがあれば、評価ももう少し変わっていただろうと思えてなりません。

あとの問題は、製品化された場合にどのくらいの価格になるかですね。数万円もするようだと、二の足を踏む人が少なからず出そうです。

なお、APシリーズはユニット構造なので、理屈の上では目盛環のみならず「エンコーダユニット」のようなものも考えられます。ただ、価格が10万も20万もするようでは本末転倒もいいところなので、そこはバランスをみて…とのことでした。実際問題、高精度のエンコーダはかなり高価なので、現実には難しかろうと思います。


こちらは新製品の「XYファインダー脚II」です。従来のファインダー脚はアリミゾに下から差し込み、側面をネジで与圧して留めていましたが、これだとネジが少し緩んだだけでファインダーが脱落する危険がありました(実際、何回かやらかしたことがあります)。

この新型は底面にピンがあって、これがアリミゾと接触して上下方向にテンションを発生させるため、側面のネジが緩んでも脱落することがないという仕組みです。ビクセンのファインダー脚のアリミゾは半ば世界標準化しているので、いまさら規格を変えるのは難しい状況ですが、これなら規格を変更しないですみますし、うまい工夫だと思います。*1


参考出品の新型鏡筒「FL55mm F5.5」。ビクセンのフローライトとしてはずいぶん久しぶりの登場です。鏡筒バンドも削り出しの新型で頑丈そう。スペックとしてはBORGの「55FL」に近いですが、あちらの方がF4.5と明るいので実際に市場でぶつかった場合どうなるか。55mmという口径から考えてあまり眼視用ではないと思うので、F値の違いや周辺機器、補正光学系の充実度なども考えると、価格設定によってはちょっと分が悪いかもしれません。


こちらは「FL55mm F5.5」の色違い。接眼部に装着されているのは参考出品の「バリパワーエクステンダー」です。


「バリパワーエクステンダー」は倍率可変のバローレンズといった感じの製品で、1.4倍から4.35倍まで倍率を変えられます。言い方を変えれば、普通の接眼レンズがズーム接眼レンズに変わるようなもの。奥がズームリングで手前がピント微調整用のヘリコイドになっています。シビアな像質を追求する類の製品ではありませんが、気軽な観望には面白そうです。


参考出品の「A62SS」。口径62mm、F8.4のアクロマート屈折です。接眼部はクレイフォード式で回転機構を装備。フードは伸縮式で、コンパクトかつ軽量なので、入門機やサブ機、公共交通機関での移動用によさそうです。見た感じ、海外製品のOEMっぽい感じもしますがどうでしょうか?


今日、ビクセンのウェブサイトでも発表された新型アイピース「HRシリーズ」。惑星観察にターゲットを絞り、最近の短焦点鏡でも高倍率が出せるよう1.6mm、2.0mm、2.4mmとかなりの短焦点のラインナップです。短焦点ですがアイレリーフは10mmを確保しており、アイレンズもそこそこ大きくて焦点距離の割に覗きやすそうです。コントラストを重視してレンズ枚数を5枚に抑えたとのこと。価格は税別28000円です。ちなみに手前のターレットは試作品。



面白かったのは参考出品の「ポラリエ用ミニ極望」。のぞき穴に挿して使う、口径8mm、倍率1.8倍、実視界10度の極小の極軸望遠鏡です。これなら取り付けたままカメラが使えるので、従来の極軸望遠鏡のように取り外した拍子に合わせた極軸がずれた、といったことが起こらずにすみます。


パターンは北天、南天両対応になっています。今までのぞき穴にストローを挿したりして四苦八苦していた人も多いと思うのですが、これなら精度も出せて安心です。




参考出品の小型経緯台。望遠鏡を保持するアームに可動軸が設けられているため、折りたたんでコンパクトにしたり、天頂付近を見るときに大きくオフセットさせたりすることが可能です。見るからに強度は期待できなさそうですが、小型の鏡筒で低倍率で使う分には問題ないでしょう。三脚バッグなどへの収まりもよさそうです。



参考出品の「ファインダーアイピース」。焦点距離100mmという超長焦点の接眼鏡で、これによりメインの鏡筒をファインダー代わりに使えます。別途ファインダーが要らなくなるので、使い方によっては便利そうです。


昨年参考出品されていたレンズヒーターが製品となって発売に。素材が柔らかく、また自己吸着性なので留めるのも簡単です。幅30mm、長さ600mm。USB対応で、5000mAhで4〜6時間使用可能とのこと。3月17日発売予定で価格は10000円(税別)。


また、同様のヒーターを内蔵したカメラバッグインナー、カメララップ、グローブなども展示されていました。いずれもモバイルバッテリーから電源を取れるので、使い勝手はよさそうです。


……と、こちらの興味を引いた目新しい展示品を列挙しただけでもこの分量です。全部が全部商品化されるとは限りませんが、内容的にも期待が持てます。実際に値札が付くとまた印象が変わるかもしれませんが、そこはなんとか頑張ってほしいところです。


トミーテック

続いてはトミーテック(BORG)のブースです。

今年は天体にかなり回帰している印象を受けました。昨年は小型の鏡筒を中心に品揃えを大幅に整理したため、天体望遠鏡の製品ラインがぽっかり空いてしまっていましたが、ここを埋めに来た形でしょうか。



一番手前に置いてあったのが、ビギナー向けを謳うBORG77EDII天体ビギナーズSWIIセットと89ED天体ビギナーズ鏡筒セット。価格は未定ですが、相当する望遠レンズセットは既にあるので、ここからおおよその推測はできそうです。


同じくビギナー向けを謳うBORG77EDII鏡筒セットとコ・ボーグ45EDII天体セットS、同36ED天体セットS。コ・ボーグ45EDIIは、光学系のスペックとしては終売となったミニボーグ45EDIIと同じなので、おそらく同製品をコ・ボーグとして焼き直した形でしょう。


小物の新製品群。60φの鏡筒バンドが、80φのものと同スタイルで復活します。ミニボーグを使っている人には朗報かもしれません。M57ヘリコイドDXII-Hは、触った感触は良好で「天体向け」を謳うだけのことはありそうな感じです。ただ、価格が3万円を超えるので、そこをどう考えるかでしょう。


フラッグシップとなるBORG107FL。価格未定ですが「それなりのお値段」とのこと。90FLのセットが20万前後なので、そこから考えれば、まぁ…というところ。一応手持ちできるように展示してはありましたが、さすがにこれを手持ちは無茶でしょう(^^;


90FLと71FLの新セット。前者はM75ヘリコイド、後者は1.4×テレコンバーターとのセットとなっています。構成から見て、どちらかというと鳥屋向けでしょうか。

ちなみに最近の出荷比率としては、やはり鳥撮り用と思われるものが圧倒的とのこと。白鏡筒がラインナップから消えつつあるのもそこが原因でしょう。白はフィールドで目立って、鳥が逃げますからねぇ…。

サイトロン

サイトロンのブースでは新製品として、SkyWatcherの新赤道儀EQ6-Rが展示されていました*2。以前ケンコー・トキナーが取り扱っていたEQ6Proの後継という立ち位置の製品です。


本体には極軸の傾斜を示す大型の傾斜計と、持ち運びに便利な取っ手がついています。

モーターはステッピングモーターで、動力伝達系としてタイミングベルトを使用しています。エンコーダ内蔵で粗動操作でもアライメントを保持できるとのこと。搭載可能重量は20kg。価格は未定ですが、EQ6Proと同程度を想定しているとのことです。為替の関係などもあり値上がりはあるでしょうが、コストパフォーマンスのいい赤道儀になりそうです。


なお、EQ6-Rのアリミゾはビクセン規格、ロスマンディ規格の両対応となっています。

ケンコー・トキナー

ケンコー・トキナーはスカイメモSの下位機種としてスカイメモTを参考出品していました。本体はかなり小型で、文字通り手のひらサイズです。


極軸望遠鏡は取り付け可能ですが、サイズ的に本体から飛び出してしまうので、Sとは違って取り付けたままにはできません。


本体上部には素通し穴が2つ付いていて、これで簡易的に極軸合わせが可能です。製品の性格を考えると、むしろこちらを使うべきでしょう。穴の位置は覗きやすく、また2つの穴を見通すように覗くため、視線がずれることもなさそうです。


本体にダイヤル類はなく、回転速度や回転方向の切り替えはスペック表にもある通り、スマホのアプリから行います。この割り切り方はいかにも今風です。

ペンタックス

ここからは天文とは直接関係なく、カメラメーカーの話です。


ペンタックスブースはやはりK-1が目玉中の目玉です。写真だとそれなりに大きく見えますが、実際に持ってみるとホールド感は従来のAPS-C機とあまり変わらない印象。重さもそれほど大きくは違いません。


気になる可動液晶ですが、ステーで支えられた液晶は適度のテンションがあり、想像以上に操作性は良好です。引き出したのち、パネルだけを跳ね上げてウエストレベルにも対応します。

縦位置ではパネルの跳ね上げはできません。目いっぱいステーを引き出しても、可能な液晶の傾きは20〜30度程度でしょうか。しかし液晶の視野角が広いので、これだけでも随分便利に使えそうです。

操作部やマウント周辺などを照らす「操作部アシストライト」ですが、白色LEDなので眩しいのではないかと懸念していたのですが、それほどの強烈な光ではなく、これなら目がくらまずに済みそうです。ただし、光量調節ができるのは液晶モニタ背面のLEDのみ(2段階)。そのほかはON/OFFだけです。


D FAレンズについては、2017年以降に単焦点レンズが予定されています。

さて、しかし困った。思った以上に感触がいいので、欲しくなってきてしまいました。今回は見送ろうと思ってるんだけどなぁ…( ̄w ̄;ゞ

シグマ

CP+直前になって、sd Quattroと同Hという衝撃の変態カメラ(褒め言葉)を出してきたシグマ。実物を見てもやっぱり変態でした(褒め言葉)。


マウントの奥にひかえるAPS-H型センサー。まさかこう来るとは思いませんでした。


バッテリーグリップ装着時。強烈な存在感です。


一見変な形ですが、実際に持ってみるとレンズに添えた左手の掌が無理なく本体底部に当たり、実に安定したホールド感。握り心地はかなりいい部類です。

EVFの位置が恐ろしく右寄りなので、利き目の左目で覗けるかが心配だったのですが、EVFの見口が後ろに突き出しているので、カメラをグリップする右手と干渉することなく覗けました。ただ、レンズの光軸が身体の中心線から大きく離れて肩あたりに来てしまうので、構えとしての違和感はすさまじいですが。


それにしてもシグマのカメラが並ぶと、どれも個性が強すぎて凄い風景になりますね(^^;

*1:一部の屈折鏡筒のアリミゾは、ピンの当たる位置にくぼみがあるため、滑り止めがうまく働きません。それ以外は現行製品に取り付け可能です。

*2:展示されていたのは試作品で、本体に書かれている製品名がEQ6-HDになっています。