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SXD赤道儀の(私的)評価

SXD赤道儀は、自動導入赤道儀の普及機であるSX赤道儀の強化版として2007年に導入されました。

古くはスーパーポラリスとスーパーポラリスDX、現行機種でもGP2とGPD2といった具合に、各部材を強化した上位版を出すという展開はビクセンの伝統のようなもので、2003年、SX赤道儀が発表された当時からSXD赤道儀の登場を予測する向きは少なくありませんでした。

事実、SXD赤道儀は前記事の表にもある通り、部材の見直しなどによりSX赤道儀よりもはるかに堅牢です。ビクセンのラインナップ中、これより上の機種となると、過去には定価50万円前後のニューアトラクス、後には100万円を超えるAXD赤道儀しかなく、撮影などのために精度や強度を求める中級以上のユーザーの多くは必然的にSXD赤道儀を選ぶことになります。


しかし、ここにSXD赤道儀の不幸があったといえます。


機械的強度は十分であったにせよ、肝心の駆動・制御系がSX赤道儀と共通だったため、トータルとしてみた場合に非常に中途半端なものになってしまった感が否めません。採用されていたDCモーターはレスポンスが鈍く非力でガイドが安定しない、STARBOOKの機能は眼視に主眼が置かれていて前世代のコントローラーであるスカイセンサー2000PCより撮影時の機能面で大幅に退化している、そもそもSTARBOOKのデザインがいかにも初心者向けでSXD赤道儀の客層とあわないetc, etc…

かくして、発売からわずか5年後の2012年には販売終了。SXD赤道儀黒歴史化してしまったと言ってよいだろうと思います。残念ながら。


振り返ってみると、ビクセンのDCモーター採用機はSXDにせよ、上位機種のSTARBOOK版ニューアトラクスにせよ、お世辞にも成功したとは言い難い部分があります。おそらくビクセンにDCモーター制御のノウハウが乏しかったのであろうことに加え、そもそも眼視を主目的とする制御系を上位機種に安易に持ち込んだことが失敗の原因でしょう。

また、子午線越え反転回避機能や、彗星・人工衛星追尾機能、オートガイド時のアライメント結果反映キャンセルなど、スカイセンサー2000PCですでに実装されていて、ユーザーから少なからず要望のあった機能がとうとうSTARBOOKに実装されなかったところを見ると、リソース面を含め、ソフト開発能力にも若干問題があったのかもしれません。