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オカカウメ星

東京はひたすら雨の多い10月ですが、20日の夜は本当に久しぶりに晴れの予報。そこで、平日ですがちょっと無理していつもの公園に出撃してきました。


到着時には、西の空にやや雲があるものの、ほぼ快晴で申し分のない条件でした。何を撮るかについては少々迷ったのですが、まだ撮ったことのない天体ということで、はくちょう座の「まゆ星雲」ことIC5146を第一目標に。その後は鏡筒をミニボーグ60EDに切り替えて「アンドロメダ大星雲」ことM31を狙うことにします。M31は過去にも撮ったことがありますが、一番最近でも4年前のことで、そこからは多少成長しているだろうと期待してのことです。もっともこの間、LED街灯の普及はさらに進んでいるので、逆に撃沈の憂き目にあう可能性もなきにしもあらずですが……。


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ともあれ、まずはIC5146の撮影から入ります。フィルターについては、NebulaBooster NB1を用いようかとも思ったのですが、IC5146周辺の反射星雲等もひょっとしたら写るかとも思い、従来型の光害カットフィルターであるLPS-D1を用いました。


外気温は20℃前後なので、ASI2600MC Proの冷却温度は-10℃に*1。正直、夏場に使っていた「0℃」とそれほど変わらないだろうとは思いますが、気分的な問題です(^^; Gainは0、露出は1枚あたり15分……という条件はいつも通りです。


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撮って出しだとこんな感じ。例によってそこそこ白いですが、中心部には星雲の赤い色も非常にうっすらとですが、たしかに見えていて期待が持てます。


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一連の撮影が終わったら、今度は鏡筒をミニボーグ60EDに載せ替えてM31を狙います。


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ところが、このあたりから雲の通過が頻繁になり、なかなか撮影に集中できません。私が行っているような、長時間露出を前提にした撮影の場合、シャッターを開けている間は雲が通らないことが条件になるので、こういう空模様だとなかなか厳しいものがあります。また、ガイドカメラの前を頻繁に雲が通過していくため、オートガイドも安定せず、得られるのは流れたコマばかり。2時間近く粘りましたが、どうにもまともなコマが撮れそうもないので、1時過ぎには諦めて撤収しました。


ちなみに、機材を片づけている最中に雲が取れて、すっかりきれいな快晴になったのはお約束です orz



翌日以降、新しいディスプレイが届いたりして画像処理が滞りましたが、隙間時間を使ってダークやフラットを確保し*2、画像処理を進めて出てきた結果がこちら。


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2020年10月20日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, 0℃, Gain=0, 露出900秒×8コマ, IDAS LPS-D1使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

赤く輝く「まゆ星雲」中心部だけでなく、周辺に広がる反射星雲もどうにか捉えることができました。全体の印象としては、いて座の三裂星雲 M20にちょっと近いでしょうか?


このボウッとした光芒と、周囲から尾のように伸びる暗黒星雲(B168)が「まゆ星雲」の見どころの1つなので、捉えることができてまずは満足です*3。あわよくば分子雲も……と思ったのですが、さすがにそこまで甘くはなく(^^; とはいえ、光害カットフィルターにあえてLPS-D1を選んだかいがありました。


今回は、例によって「RGB分割フラット補正」によって丁寧に画像の平坦化を行い、光害カブリの除去も行った上で、この3色分解した各プレーンに対して「Silver Efex Pro 2」による強調処理(フルダイナミック(弱))を噛ませています。「Silver Efex Pro 2」の強調効果の中では比較的おとなしい部類ですが、極端な荒れも発生せず、まずまずうまく行ったのではないかと思います。


それにしても、この「まゆ星雲」という愛称、おそらくは星雲を取り巻く光芒が繭のように見えるところからだろうと思いますが、個人的には色合いといい、星雲の中を走る暗黒帯の具合といい、どうにも「梅干し」にしか見えません。心の中で密かに「オカカウメ星」*4と呼んでるのはここだけの内緒です(笑)

*1:ASI2600MC Proの最低到達温度は「外気温-35℃」です。

*2:温度管理が簡単確実なので、別の日に撮ってもOKなあたり、冷却カメラのありがたさを感じます。

*3:暗黒星雲の存在がこれだけ分かるなら、「まゆ星雲」をもう少し左に寄せたり、レデューサー使って写野を広げ、尾を引く暗黒星雲全体が写るようにしてやればよかったような気もします。

*4:言わずと知れた、スッパマン@Dr.スランプの故郷。

ディスプレイ交換

普段使っているメインマシンのディスプレイは、NECディスプレイソリューションズのMultiSync LCD2490WUXiです。

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このディスプレイは2007年末、突然壊れたナナオ(当時)の17インチCRT「FlexScan T765」の代わりに急遽購入したものです。当時は(既に開店休業状態でしたが)お絵描き系のウェブサイトを運営していたこともあり、画質にこだわってカラーマネジメントモニタを購入した経緯があります。

hpn.hatenablog.com


このとき、ナナオ(現・EIZO)のColorEdgeも候補に挙がってはいたのですが、当時の主力だったCG241WはなんとVAパネルを採用しており、さすがに画質面に不安があって選択肢から外していました*1


で、大枚はたいて買ったLCD2490WUXiですが、画質は非常に上品かつナチュラルで、目に刺さるようなぎらつきもなく、長年、大変満足して使ってきました。



ところが、使い始めてからそろそろ13年目になろうかという最近になって、さすがに画面上に異常が出てきました。

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パッと見、おかしいところは何もないように見えるのですが……

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所々で妙な暗筋が現れています。この筋はディスプレイを長時間点灯していると現れてくるもので、昨今のご時世で利用時間が伸びてきた結果、気が付いた現象です。もしかしたら、もっと前から異常が発生していたのかもしれません。


背景が明るい色でなければ気づきづらく、実害も大きくはないので放っておいても良かったのですが、一度存在に気づいてしまうと、やはりどうにも気になります。また、このディスプレイはバックライトが冷陰極管*2消費電力が大きく*3、夏場など、部屋が猛暑に襲われる一因にもなっていました。こうしたこともあり、寿命と割り切って後継機を探すことにしました。


希望としては

  • 質は落としたくないので、ハードウェアカラーマネジメントに対応
  • 24インチ(1920×1200)だとやや狭く感じるので、27インチ(2560×1440)程度の広さ*4

……程度のものです。今ではカラーマネジメントモニタも海外製品を中心にすっかり安くなり、選択肢はずいぶん多くなりました。


とはいえ、信頼性や実績等も考えると……

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こうなりましたw


モノはEIZOColorEdge CS2731です。同時に、専用フードとキャリブレーションセンサーも購入しました。価格はディスプレイだけで127765円(税込)+ドット抜け交換保証6600円を足して134365円。液晶ディスプレイとしては高いですが、「SHARPSTAR 76EDPH専用レデューサーを足したのと同じくらい」(税抜133800円、税込147180円)と聞くと、とても安く感じます。不思議!(笑)


対抗馬として、従来機と同じNECディスプレイソリューションズのMultiSync LCD-PA271Q-BKも考えたのですが、価格が絶対的に高い(税込157900円)こと、そして「ドット抜け交換保証」を行っているツクモで取り扱いがないことから見送りました。モノがいいことは間違いないんですけどね……。


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計算上、机の上に置けるのは分かっていましたが、実際においてみると思った以上に違和感はありません。気になる画質も、気になるムラやぎらつきなどは見られず、価格相応に十分快適です。*5


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ちょっと気になると言えば、電源とOSDメニューの操作法。いずれもベゼル部分の光っている個所をタッチすることで操作するのですが、液晶の向きや角度を変える際、うっかり触ってしまいがちです。慣れの問題ですが、触っただけでスイッチが反応してしまうので、ここだけは注意が必要です。


ともあれ、これでまた10年くらいはディスプレイの心配はしなくて済むのではないかと思います。

*1:一般に、VAパネルはコントラストに優れるものの、視野角の広さに問題があり、色再現性もIPSパネルに比べて劣ると言われています。

*2:当時、LEDバックライトはまだ採用が始まって間もなく、それほど広がっていませんでした。

*3:通常使用時で83W

*4:老眼に4Kは厳しいので除外(^^;

*5:とはいえ、IPSパネルの構造上の宿命で、厳しく見ると若干の黒浮きや、黒色について視野角によるムラは見られます。

都会からの星雲・星団撮影 ~機材・撮影対象編~

先日、軽い気持ちでハッシュタグ「#画像を4枚晒したらrtがきてフォロワーがぶわーって増えると聞いて」で過去の作品をTweetしてみたところ……

普段と比べてかなりのRT数と「いいね」数。思った以上の反響でちょっと驚いています(^^; やはり皆さん、「東京都心での撮影」という所に反応したようで、中には自分でもチャレンジしてみようという嬉しい反応が……。


そこで、「都会からの星雲・星団の撮影」という点に絞って、その勘所を少し紹介してみようと思います。


なお、この記事では、オートガイドを使って天体の撮影ができる程度のスキルを持っていることを前提にしています。「そもそも星の撮影ってどうやるの?」とか「オートガイドって何?」という方は、まずは成書やこちらの記事などをご参照ください。
urbansky.sakura.ne.jp
urbansky.sakura.ne.jp


必要な機材について


さて、まず使用する機材についてですが、これについて特別なことはほとんどありません。基本的には、普通にオートガイドで撮影できる機材があればOKです。逆に、オートガイドなしでの撮影は、赤道儀の精度次第で露出時間が限られてしまうため、あまり望ましくありません*1


一方、街なかから撮影するにあたって、十分に留意しなければならないのは「光害カットフィルター」です。


都心で撮影しようとした場合、最大の問題になるのはやはり夜空の明るさです。これは街明かりで空が照らされているためで、これを「光害」(「こうがい」または「ひかりがい」*2)と言います。


この光害の影響をできるだけ取り除く働きをするのが俗に「光害カットフィルター」と呼ばれるフィルターです。原理としては、光害の主な原因である水銀灯やナトリウムランプ、蛍光灯などから出る波長の光をなるべくカットしつつ、星雲が出す波長の光は素通しするようにできています。代表的な製品としては、IDASのLPS-P2LPS-D1ケンコー・トキナーASTRO LPR FilterサイトロンLPR-Nなどがあります。
icas.to
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www.kenko-tokina.co.jp
www.syumitto.jp


ただ、最近はLED照明が普及し、ちょっと事情が複雑になってきています。というのも、LEDはほぼ全波長にわたって光をまき散らすので、星雲が出す光とを波長でふるい分けることが困難になってしまうのです。そこで、LEDが出す光のうち、強度の強い青系の光だけでもカットしようという製品も現れ始めました。IDASのLPS-D2などがそうですが、一方で従来型の光害カットフィルターで取り除けていた光害を一部素通ししてしまうなど、効果としては「ビミョー……」というのが正直なところです。
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現在のところ、ウチではLPS-P2(or LPS-D1)を標準的な光害カットフィルターとして用いています。LED照明が広がってきたとはいえ、今のところ、それ以外の光害がまだ無視できないためです。
hpn.hatenablog.com


一方、「光害を取り除く」というよりは「星雲からの光のみ通す」という発想で作られたフィルター(いわゆる「ワンショットナローバンドフィルター」)も増えてきています。IDASのNebulaBooster NB1、STCのAstroDuoサイトロンQuad BPなどが代表的なもので、惑星状星雲や赤く輝く散光星雲に対して絶大な効果を発揮します。現在ウチで使用しているのはNebulaBooster NB1です。
icas.to
stcoptics.com
www.syumitto.jp


ただし、ワンショットナローバンドフィルターの場合、幅広い波長の光で輝いている系外銀河や反射星雲、星団などに対しては、天体由来の光も弱まってしまいほとんど効果がない……どころか、むしろ画質が悪化するので、その点は要注意です。*3


なお、光害カットフィルターの特性については、以下の記事にもまとめてありますので、興味があればご覧ください。
hpn.hatenablog.com


撮影場所について


都心で厄介なのが「どこで撮影するか?」という問題です。安心して長時間機材を展開できなければなりませんし、上空を這う電線や、視界を遮る建物もできるだけ避けたいところです。また、街灯などの光が望遠鏡に直接差し込むような場所も避けなければなりません。


その意味で、路上は基本的にNG。周囲が暗くて空が開けているとなると、あとは公園や河川敷、駐車場、住宅やマンション等の屋上くらいしかなさそうです。ウチの場合は幸い、比較的照明の少ない公園が近所にあるので助かっていますが、もしかするとここが最大の難関かもしれません。


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公園は、近くに照明さえなければ有力な場所の1つです。たとえ照明で明るく照らされていたとしても、撮影には案外支障がないことも多いので、諦めないでください。星が見えなくて無理っぽく思えるかもしれませんが、星が見えないのは手元の明るさにより瞳孔が小さく絞られてしまっているせいで、天体が写真に写るかどうかとは別問題です。ただし、照明の光が光学系に入り込んで、変なカブリやゴーストを発生させることもあるので、なるべく迷光対策はしっかりしておきましょう(フードの延長やフード内部への植毛紙の貼り付け等)。

ちなみに、ウチで普段撮影に使っている公園は、大気の透明度が高い冬場の深夜、最も条件がいいときでも天頂付近で3.5等がギリギリ見えるかどうか。平均的には2.5~3等がやっとというような環境です。


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河川敷は、街なかでも暗いことが多く、その意味では魅力的です。しかし川のすぐ近くということで湿気が多く、結露などが起こりやすいのが困りもの。水の事故にも最大限の注意が必要です。加えて、夜間は人通りがほとんどない上に、不良などのたまり場になっていることもしばしばあり、治安の面で大いに不安が残ります。あまり積極的にはお勧めしません。


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駐車場は空が開けている場合も多く、候補地の1つにはなりえます。また、私有地であっても法的には住居侵入罪は成立しないようです。
news.livedoor.com

とはいえ、そもそも駐車以外の目的での侵入を禁じているところも多いですし、これとの絡みで、上記記事にもあるように軽犯罪法第1条第32号違反『入ることを禁じた場所または他人の田畑に正当な理由がなくて入った者』(拘留または科料)に問われる可能性はあります。夜間でも車の出入りがあって危険かもしれませんし、こちらもあまりお勧めはできません。


どうしても撮影場所が見つからない場合は路上などを使うのもやむなしですが、上空に障害物がある場合、撮影対象がどうしても短時間露出で捉えられるものに限られます。


撮影対象について


一口に「星雲・星団の撮影」といっても、都心でも比較的撮りやすいものから難しいものまで、その難易度はかなりの差があります。まずは撮りやすいものから始めて、慣れてきたら難しい対象にチャレンジしてみるとよいでしょう。


大まかに言うと、水素ガスなどが輝いている光星雲や惑星状星雲は光害に強くて撮りやすく、星の光が直接影響する星団や系外銀河は撮りづらい対象です。



◎散光星雲(含 超新星残骸)

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夜空に赤く浮かび上がる散光星雲は、昔から人気の被写体です。この赤い光は水素に由来する波長約656nmの光(Hα線)で、目にはほとんど感じませんが、IRカットフィルターを取り除いたカメラ*4ではよく写ります。一方で、この波長域は光害の影響が比較的少なく、その意味で、街なかでも絶好の被写体です。


特定の波長の光でしか輝かないため、光害カットフィルターの効きもいいのが特長で、一般的なLPS-D1などのほか、NebulaBooster NB1やAstroDuoといったワンショットナローバンド系のフィルターも絶大な効果を発揮します。また、散光星雲の色と光害交じりの夜空の色は全く違うため、画像処理の際に散光星雲の領域を抽出しやすく、強調処理がしやすいのも利点です。東京都心のような劣悪な環境下でも、愛称がついているようなある程度有名な散光星雲であれば、十分にものにできると思います。


ただし、比較的長時間の露出が必要になるので、十分な精度でガイド撮影ができること、また障害物で星雲が隠れたりしないよう、見晴らしの良い場所で撮影することが必要になります。



◎惑星状星雲

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ユーモラスな形や色が特徴的な惑星状星雲は、街なかから最も撮りやすい対象の1つです。


一般に星雲や系外銀河は淡いものが多いですが、惑星状星雲は見かけの大きさこそ小さいものの、その小さい領域に光が凝縮しているため意外と明るく見えます。また、散光星雲と同様、出す光が特定の波長に限られている*5ので、ワンショットナローバンド系のフィルターが大変に効果的です。


惑星状星雲の場合、一般に単位面積当たりの光度が高いので、露出時間は短くてOK*6。むしろ、数秒~数十秒のごく短い露出で撮った写真を多数枚コンポジットし*7、これをRegistaxなど本物の惑星の画像処理に使われるソフトを用いて処理を行うと、微細な構造まで浮かび上がって迫力が出てきます。1コマ当たりの露出時間が短いので、必ずしもガイドが必要ないのも楽なところです。


一方で、見かけの大きさが非常に小さいものが多く、長焦点の望遠鏡が必要になりがちなのは少し面倒なところ。しかし逆に言えば、上空を電線が多数這っていても、その隙間から十分に狙うことができるということでもあります。都会派に優しい天体と言えるでしょう。



球状星団

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星がみっちりと集まった球状星団は、その独特の迫力が魅力です。単なる星の集団で淡い部分もないため、撮るだけなら都心でも簡単にその姿を捉えることができます。露出も比較的短くてOK。


ただ、空の暗いところで撮った場合と比べると、どうしても微光星の写りという面で劣ります。露出を伸ばせば暗い星も捉えられますが、今度は中心部の星が密集した領域がつぶれたり、星の色が真っ白に飛んでしまったりで、美しく表現するのは意外と厄介です。


また、こちらも見かけの大きさが意外と小さいものが多く、M4(さそり座)やM5(りょうけん座)、M13(ヘルクレス座)といった大型のものを除くと、35mm判換算で2000mm以上の焦点距離が欲しくなります。



散開星団

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若い星々が散らばる散開星団には明るいものも多く、都心でも良い観望対象です。これも球状星団同様、写真に姿を捉えるだけなら非常に簡単です。しかも、球状星団ほどの長焦点もいらないので、その点でもお手軽です。


しかしながら、これも「微光星が写りづらい」、「微光星を写そうと露出を伸ばすと、星の色が飛ぶ」という球状星団と全く同じ問題に突き当たります。下手をすると「白い点々が漫然と散らばっているだけ」という猛烈に地味な写真になりがちで、きれいに撮ろうとすると一気に難易度が上がります。



〇~△系外銀河

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アンドロメダ銀河 M31に代表される系外銀河は、街なかから撮りにくい天体の1つです。M33(さんかく座)や回転花火銀河 M101(おおぐま座)など、渦巻が正面を向いているタイプの銀河は特にそうで、淡い腕が光害に飲まれてしまって、きれいに撮るのは非常に困難です*8。また、散光星雲と違って特徴的な色もないため、銀河の部分だけ選択して強調するのも難しいことになります。


また、見かけの大きさが小さいものが多いのも厄介なところで、長焦点の望遠鏡を精度よくガイドするための装備や技術も必要になります。


ただ、銀河を真横から見た形になるソンブレロ星雲 M104(おとめ座)や、正面を向いているものの、腕が比較的濃い子持ち星雲 M51(りょうけん座)など、都心でも比較的姿が捉えやすいものも少なくありません。



△~×反射星雲

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近くの恒星の光を反射して光る反射星雲は、街なかから狙うには極めて難しい対象です。そもそも非常に淡いものが多い上、星団や系外銀河同様、特徴的な色がないので光害カットフィルターの効果は小さく、撮影後の強調処理も非常に難しいのです。


街なかから比較的容易に捉えられるのは、M78(オリオン座)やプレアデス星団 M45(おうし座)の周りに広がるメローペ星雲など、明るいものに限られるでしょう。



……と、長くなってきたので今回はここまで。実際の撮影等については次回以降に回します。

*1:1コマ当たりの露出が比較的短くて済む惑星状星雲などを除く

*2:「公害」と混同しないための言い回しです。

*3:従来型の光害カットフィルターの場合は、なるべく光害由来の光のみをカットするような設計になっているので、これらの天体への影響は少なく抑えられます。

*4:通常のカメラでは、赤カブリするのを防ぐため、撮像素子の直前に赤外線(IR〙カットフィルターが取り付けられています。しかしこのフィルターはHα線もカットしてしまうため、散光星雲の写りが非常に悪くなります。そこで、このフィルターを取り除く改造がいくつかのお店で行われています。有名なところでは瀬尾一夫氏のSEO-SP4改造(三基光学館およびシュミット扱い)やハヤタ・カメララボのHKIR改造などがあります。ただし、メーカーの保証は切れてしまうので、その点は注意が必要です。

*5:主に、水素原子由来のHα(656.28nm)、Hβ(486.13nm)、酸素原子由来のOIII(495.9nm, 500.7nm)に限られます。

*6:ただし、亜鈴状星雲 M27やらせん状星雲 NGC7293など大型のものは淡いことが多く、散光星雲と同様、長めの露出が必要になります。

*7:機材によっては、動画で撮影して惑星と全く同様にスタッキングする手もあります。

*8:近赤外の領域では光害の影響がほとんどないので、この波長域を狙えば街なかでも結構ちゃんと撮れますが、ここでは置いておきます。