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木星と土星の大接近

新聞でも話題になっていましたが、今、西の空で木星土星が大接近して見えています。これほど接近して見えるのは400年ぶりとか800年ぶりとか言われていて、とにかく珍しい現象には違いありません。


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ちなみに前回は約400年前、1623年07月17日のことですが、このときは東京における日没時の木星土星の高度が10度以下で、実際には観測できなかったものと思われます(図の視野円は0.2度)。


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約800年前の1226年03月05日には、明け方の空で両者が大接近していて、こちらは十分観測が可能だったでしょう。この時は今回よりもさらに倍ほども近く、互いの衛星の軌道面がほとんど交わりあうほどでした。


今回はさすがにそこまで近くはありませんが、太平洋岸は晴れ間が多い季節で、時間帯にも恵まれていることから、かなり早くから注目されていました。



こちらは12~13日ごろにロケハンして、いつもの公園で見えることを確認したのち、まずは17日の三日月、木星土星の三重会合を狙いました。


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ところが、この日は日暮れ前に、西空の肝心なところに雲がかかり続け、一向に月や惑星が見えません。それでも日没頃から1時間ほど粘っていると、高度はすっかり低くなってしまったものの、ようやく雲の隙間から月や惑星が顔を出し始めました。すかさず撮ったのがこちら。


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2020年12月17日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) AZ-GTiマウント
Canon EOS Kiss X5, ISO100, 露出1秒
Digital Photo Professional 4ほかで画像処理

また、この画像を思いっきり強調すると……


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ガリレオの4大衛星」に加えて、土星最大の衛星タイタンまで見えてきます。


写真だとどうしても明るいところが飛んでしまいますが、双眼鏡を使って肉眼で見ると、月、木星土星、月の地球照すべてを捉えることができて、実に美しい眺めでした。




次いで21日、この日は木星土星の最接近の日です。計画としては、SXP赤道儀+ED103S+ASI290MM/MCで撮影を、AZ-GTi+MAK127SPで眼視をする予定でいました。


で、荷物を台車に詰め込んで、公園までゴロゴロ転がしていったのですが、公園に到着する直前、AZ-GTiを家に忘れてきてしまったことに気づきました*1。眼視を諦めるのも難ですし、ここまで来ておいて今さらこのクソ重い台車*2を転がして家まで戻るのも面倒なので、やむをえず荷物を公園に置いたまま、家までAZ-GTiを取りに走ることに。とんだ運動になってしまいました。


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それでも、16時半前にはセッティング終了。準備万端です*3


……と、望遠鏡のセッティングを見ていた女の子が「何をやっているんですか?」と声をかけてきました。聞けば天文に興味があるようで、急遽、その娘を含めた10人ほどの小学校高学年の男女を相手に、即席の観望会を開くことに。今時の小学生は子供向けスマホを持っている子も多く、眼視のほかにコリメート撮影にもチャレンジしていました。


見ごろの半月が空高くに出ていたこと、初心者にも分かりやすい土星木星が接近するという一大イベントであることもあり、小学生のほか、その親御さんや近所の方々も集まって、想像以上の大盛況になりました。全部で15人ほどにもなったでしょうか。さすがに、これほどの観望会の準備はろくにできていなかったのでアレですが、そこそこ楽しんでもらえたのではないかと思います。


しかし、こんな状況では撮影に集中できるはずもなく(苦笑) おまけに、この日はPCのご機嫌が今一つで、撮影の途中でキャプチャソフトがフリーズすることもしばしばでした。そのため、とても思い通りに撮れたとは言い難いのですが、それでもなんとかそれっぽく仕上げたのがこちら。


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2020年12月21日15時13分12秒(日本時間)
ビクセン ED103S(D103mm, f795mm) SXP赤道儀
ZWO ASI290MC, Gain=150, 30ms, 約2000フレームをスタック
OPTOLONG UV/IRカットフィルター使用

さすがに木星土星では輝度差が大きすぎ、両者をきれいに収めるのは無理でした*4。とはいえ、カメラや望遠鏡の視野の中に2つの巨大惑星が同居するというのは実に不思議な光景です。もちろん、自分としても初めて見る光景で、写真云々を抜きにして非常に印象深い経験でした。

*1:電源としているエネループを充電していて、うっかりそれごと置いてきてしまいました。

*2:台車等の自重を含めて、おそらく100kg近くあったんじゃないかと……。

*3:写真は、一連の写真撮影&観望終了後のもの

*4:木星に露出を合わせれば、土星は炙り出せた可能性がありますが、PC不調&子供たちがひしめいている中では細かい試行錯誤は無理でした。