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スーパームーン

先日の「アトラス彗星(ほぼ)終了」の記事は、Twitterでバズったこともあってか、前代未聞の大量アクセス。「通知が止まらないとはこのことか……」と嬉しい一方、内心冷や汗ダラダラでした。みなさま、ありがとうございます。


しかし、あの記事では「(ほぼ)終了」と断言してしまったけど、何かの奇跡でうっかり大復活を遂げたりすると、とんでもない飛ばし記事を書いたことに……。が、海外の観測データなどを見ると、どうやら無事(?)核崩壊&減光に向かっている*1ようで、とりあえず記事内容は嘘にならずに済みそうです(^^;


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さてさて、そんなこんなで落ち着かなかった一昨日の晩、いわゆる「スーパームーン」とのことで、こちらも機材を玄関先に出して撮影を行いました。


機材はED103S+SDフラットナーHD+EOS KissX5(未改造機)。焦点距離811mmなので、APS-C機で月を撮るのにちょうどいいです。最初は、EdgeHD800にASI290MMを組み合わせてモザイク撮影を行うことも考えたのですが、どうせ満月で細かい地形もはっきりしないので、前記のセッティングで行くことにしました。


とはいえ、Registaxでのウェーブレット処理はぜひかけたかったので、EOS KissX5でひたすら連写。5秒間隔*2で、270コマほどを撮影しました。あとは、Autostakkertで75%を目途にスタックしたのち、Registaxでウェーブレット処理を加えて……こう!


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2020年4月7日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5, ISO200, 露出1/1000秒×200コマ
Autostakkert!3でスタック後、Registax6によるウェーブレット処理

やはり、動画カメラでモザイク撮影をやった時ほどの精細さには欠けますが、大きさを見る分には十分でしょう。この時の月までの距離はおよそ35万6900km(地心距離)。今後、最小径の月と比較すれば、その大きさの違いがハッキリ分かるでしょう。


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ちなみに、ティコクレーターの左下、欠け際近くには月面最大のクレーター、バイイ(Bailly)が見えています*3。直径はおよそ300kmで、東京~名古屋間の距離に匹敵します。


月は、地球の周りを楕円軌道で公転しています。また、月の赤道面は公転面に対して6.7度傾いています。これらの理由のため、月は上下左右に首振り運動をします*4。そのため、時期によってはこのバイイも見えやすくなったり見えづらくなったりします。今の時期は月の南極側がこちらを向いていて、比較的バイイが見やすくなっています。


なお、オマケで上の写真の彩度を思いっきり上げてみたのが下の画像。


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思った以上にカラフルなのに驚かれたかもしれません。これは溶岩の噴出した時期や成分の違いを反映しています。


まず、ティコなどの新しいクレーターの周りは青白くなっていますが、これは岩の表面が削れてフレッシュな内部が見えているためです。時間がたつと、これらの岩は宇宙風化によって赤みを帯びてきます。また、「静かの海」*5は青黒く見えていますが、これはチタンの含有率が高いためと言われています。一見、灰色一色の世界にしか見えない月面ですが、こうしてみると面白いものです。

*1:Comet Observation Databaseの最新データでは、10.0等を切る観測データも出ています。

*2:ミラーショックを防ぐため

*3:月の表側で最大。裏側にはヘルツシュプルング(直径536.37km)やアポロ(直径524.23km)などさらに大きなクレーターがあります。

*4:この動きを秤動(ひょうどう)といいます。

*5:うさぎの頭に相当する部分