先の週末は、典型的な冬型で天気は良好。月は夜半過ぎにならないと沈みませんが、光害が多少なりとも和らぐので、翌朝がつらいことを除けば出撃には好都合です。また、明け方近くになれば(予想より暗いとはいえ)そこそこの明るさになってきているカタリナ彗星(C/2013 US10)も見られるはず。
というわけで、夜半過ぎにいつもの公園に出撃。ここは本来「午後10時まで」という利用時間制限があるにはあるようなのですが、常駐の管理人や見回り、監視カメラなどがあるわけでもないので、騒いだりしなければ大丈夫なようです。まぁ、傍目に怪しいことは怪しいので、近隣住民に通報される危険性*1はなきにしもあらずですが……。それでも正直、多摩川河川敷あたりで観測するよりは治安的に安全だろうと思います(^^;
本命のカタリナ彗星が程よい高さに上ってくるのは午前4時ごろなので、それまでは他の天体を狙います。まずは「オリオン大星雲」ことM42&43。過去にも撮影している天体ですが、明るいだけに都心でも比較的撮りやすく、その一方で明暗差が大きくて難しい対象でもあります。今回は、多段階露光で中心部の白トビをなるべく抑える方針です。

2015年12月20日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO800
露出240秒×16+120秒×16+60秒×16+30秒×16+15秒×16
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1dで画像処理
加減が分からないので、露出は2倍ずつ変えた系列で各16枚を撮影。各々を加算平均でコンポジットした後に加算合成して元データとしています。これを色々と加工していくわけですが……本当に難しいですね、これは。中心部をつぶさないようにしすぎるとノッペリした印象になりがちですし、色にしてもいじればいじるほどどうしたらいいのか分からなくなってきます。それだけいじりがいがあって面白いんですが……。ともあれ、東京都心のド真ん中でこれだけ写れば、ひとまずは上出来かと思います。画像処理的にはもう少し追い込めそうな感じもなくはないのですが、差が小さそうですし、キリもないのでこのへんで。
ちなみにM42の上方の青い星雲はNGC1977。「ランニングマン星雲」という愛称がつけられています。そう言われてみれば、影の部分が人が走っている姿のように見えなくも……。
オリオンが西に大きく傾いたところで、今度は春の散開星団狙い。この撮影では1つだけちょっとした実験をしています。散開星団は恒星が集まっているだけなので、撮り方によっては「白い点々が群れているだけ」でさびしい画面になりかねません。特に屈折望遠鏡の場合、ニュートン反射などと違ってスパイダーの回折による光条も現れないので、よけいさびしくなってしまいます。
そこで、星の色を出す意図でソフトフィルターを筒先に取り付けてみました。星野写真では効果的ですが、この目的ではどうでしょう?

2015年12月20日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出120秒×8コマ
IDAS/SEO LPS-P2-FF, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン[A](W)使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1dで画像処理
かに座の「プレセペ星団」ことM44ですが……正直、結果としては少々ビミョーな感じです。確かに星の色は出ているのですが、光芒の拡散が大きすぎてM45(プレアデス星団、すばる)のように星雲をまとっているかのよう。星の明るさの違いによる光芒の出方の差もちょっと極端な感じです。今回使ったのはケンコー・トキナーの「PRO1D プロソフトン[A](W)」ですが、このくらいの望遠域で使うならもう少し効果が弱いものの方が向いているような気がします。

2015年12月20日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出120秒×5コマ
IDAS/SEO LPS-P2-FF, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン[A](W)使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1dで画像処理
一方、より小さく暗いM67では光芒自体がほとんど現れず、フィルターがあってもほとんど無意味な感じに。散開星団は星雲と違って明暗差などに悩まされることはありませんが、きれいに撮ろうとするとこれはこれで難しいものですね。
ちなみにこのM67、散開星団としては最も古いものの1つで、年齢としては太陽とほぼ同じ50億年ほど。メンバーの星の化学組成も太陽と似ていて、星は黄色っぽいものが多くなっています。青い星が多いM44(年齢約7億3000万年)とは好対照です。
ところで、上のM67でコンポジット枚数が中途半端なことになっていますが……はい、ここでカメラのバッテリーが切れました orz
バッテリーは2個一組で運用していて、いつもは常に両者を満タンにして撮影に臨んでいるのですが、今回は撮影が夜半過ぎということもあって出発前にダークフレームを撮影しており*2、一方のバッテリーをほぼ使い切ってしまっていたのです。このままじゃ危険なのは分かっていたのでバッテリーの充電器も持ち出していたのですが、メインバッテリーのSG-3500LEDのAC出力ではこれが動作しなかったのが誤算でした。AC出力とはいえ、矩形波ではダメだったか……。
で、寒さも手伝って予想以上に早くバッテリーが干上がった、というわけです。撮影に使っているBackyardEOSの電池残存量表示がまったくアテにならなかったのも予想外。せめてこれが確認できていれば、M67の撮影はスキップしていたはずです。この様子では、DC/DCコンバータと組み合わせて、メインバッテリーからの給電も本気で考えないといけないかもしれません。

2015年12月20日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO1600, 露出120秒
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1dで画像処理
というわけで、肝心のカタリナ彗星はなけなしのバッテリー残量を振り絞りつつ、かろうじて撮れた1コマのみ。「かったりぃなぁ彗星」とか陰口を叩いてたせいでしょうか
ちなみに、双眼鏡での確認も試みましたが、近くに目印となる明るい星がないこともあって確認できず*3。それにしても、当初はかなり明るくなる予想だったのに、この期待外れ感といったらもう……。いい加減、オールトの雲から来るバージンコメットについては光度式を改良すべきかと思います。マジで。