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春の銀河祭り開幕

先週の土曜は、日中こそベタ曇りだったものの、日が沈んでからはGPVの予報通り急速に天気が回復。21時ごろ空を見てみると、雲一つない快晴です。しかも、西空に傾いたシリウスに目をやるとほとんど瞬いておらず、シーイングもよさそうな雰囲気。

そこで、月が沈む夜半過ぎを狙っていつもの公園に出撃してきました。携えるは対系外銀河砲のEdgeHD800。天文ファンの間では「ヤマ○キ春のパン祭り」に並ぶ奇祭と名高い「春の系外銀河祭り」の開幕です(ぉぃ


この日の月没は日付が変わった0時50分。そして天文薄明の開始が4時13分なので、撮影に使えるのは3時間ほど。このうち最後の30分〜1時間くらいは惑星の撮影に使いたいので、正味2時間ほど枠があることになります。光害のひどい東京都心だと、1天体に2時間はかけたいところなので、撮れるのは1つだけになりそうです。


何を撮るかちょっと悩んだのですが、比較的撮りやすそうということで、かみのけ座にある銀河NGC4565を狙ってみることに。典型的な「エッジオン」(銀河を真横から眺めている状態)の銀河で、細長い見た目から"Needle galaxy"の愛称を持つ天体です。メシエ番号のついていない銀河の中では比較的明るく大きいものの1つで、長辺は満月の半分ほど(約15分)もの広がりがあります。

エッジオンの銀河は淡い部分が少ないため一般に撮りやすく、シーイングが良ければ暗黒帯の詳細も写せるはずです。


ところが現地について空を見上げてみると、天頂近くのアークトゥルスが瞬いていて、宵の頃よりシーイングは悪化している感じ。加えて、いざ撮影となったあたりから地上の風が強くなってきました。鏡筒が揺さぶられてガイドグラフが暴れます。さらに、時折薄雲が流れてきて何度か撮影の中断を余儀なくされました。

それでもなんとか最低限の枚数は確保し、処理した結果……



2018年3月25日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出600秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

風や雲に邪魔されて1コマ当たりの露出時間をかけられず、根本的に露出不足気味の上、シーイングも悪くて暗黒帯の詳細を写すどころではありませんでしたが、どうにかエッジオン銀河の雰囲気の片鱗くらいは出たでしょうか?周辺の銀河もいくつか写っています。

高度が高い分、光害の影響が比較的マシだったのは助かるところですが、それでも都心からの銀河の撮影は難物なのは確か。散光星雲などと違って特徴的な色がないので、星雲部分を選択しての強調処理が困難ですし、これにF10という鏡筒の暗さが追い打ちをかけます。

できれば、シーイングのいい日に倍くらいの露出をかけて*1じっくり取り組みたいところです。

*1:露出時間をかけると淡いところまで写りますが、シーイングの影響で像がぼやける危険性は高まります。最大エントロピー法による画像復元やシャープネス処理など、画像処理の腕の見せ所です。