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月下のDSO狙い

この週末は満月前の大きな月があってDSO撮影には不向きですが……せっかくの快晴、何もしないのはもったいないということで、自宅前に機材を展開しました。

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狙うは月齢に関係のない惑星……といいたいところですが、なんとなくDSOを撮りたい気分だったので、惑星状星雲を。単位面積当たりの明るさが大きいので、究極的に淡いものでない限り、月齢はあまり関係ないのです。


この夜のターゲットはみずがめ座の「土星状星雲」ことNGC7009。こいつは過去にも撮ったことがあるのですが、当時は加減が分からずに長めの露出時間をかけた挙句、微細構造をあぶりだすのに失敗するというミスを犯しています。


今回は、これまでの惑星状星雲撮影の経験を活かし、1コマ当たりの露出は10秒にとどめてとにかく枚数を稼ぎました。

180コマ分を確保したのち、データを先日組んだメインPCに突っ込んで現像&コンポジット。


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ここではコア数の多さがストレートに効いてくれました。それでも結構時間がかかったのですが、逆に今までのPC(Core i7 3770K, 4コア8スレッド)だったらいったいどれほどの時間がかかっていたか……。


コンポジット終了後、色調補正等を行った後、Registax6でウェーブレット処理をして出てきた結果がこちら。


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2018年8月26日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO800, 露出10秒×180コマ, OPTOLONG CLS-CCD for EOS APS-C使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド

土星状」の名の通り、土星の環を横から見た時のような突起物が認められます。よく見ると突起物の先端は赤っぽくなっていて、水素の存在が示唆されます。また本体内部の複雑なシェルの構造も浮かび上がってきていますが、このあたりはウェーブレット処理の賜物でしょうか。この内部構造は以前の撮影ではうまく出せなかったので、その意味では満足です。

以前から何度か書いていますが、惑星状星雲は視直径の小さささえ除けば、月齢や光害の影響をほぼ受けない、短時間露出なのでガイドは不要、形がユーモラスで撮っていて面白い、と初心者向けの特性を多く備えています。

火星狙いで長焦点の望遠鏡を買ったという人も少なくないでしょうし、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

はくちょう座ループ

日が暮れると夕立に襲われたり、晴れていても全天薄雲に覆われたりと、猛暑の割になかなか好天に恵まれないこの夏ですが、先週金曜は秋の乾いた空気に入れ替わって昼間から雲一つない快晴。これは期待できると思って、月没を待っていつもの公園に出撃してきました。

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ところがこの日は、夕方ごろから雲が広がり始めていて、22時ごろ、公園についた時には北東の空の一部を除いて層積雲に全天が覆われてしまいました。その北東の空も機材を展開している間に雲に覆われ、待機を余儀なくされることに。

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それにしても……雲が下から照らされてるのがハッキリ分かるわ、夜空がまるで青空みたいだわと、とても天体写真が可能とは思えない本当にひどい空。さすがは大東京のど真ん中です(^^;


日付が変わるころまでに雲が取れなければ諦めようと思っていたのですが、23時半ごろから雲が切れ始め、0時過ぎにはほぼ雲のない快晴となりました。待てば海路のなんとやら、です。

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この日のターゲットは網状星雲の全景。ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55の200mm, F3.6で狙います。今まで撮ったことのない対象ということでカシオペヤ座の「クエスチョンマーク星雲」も考えたのですが、ガスの絡まりあったあの繊細な構造が大好きなので、こちらを。網状星雲も、東側の明るい領域(NGC6992-5)を撮ったことは何度もあるのですが、全景は初めてです。


光害カットフィルターは、相手が超新星残骸でほぼ輝線のみで輝いていることからOPTOLONGのCLS-CCDを選択。ただしこのフィルターは光量がガッツリ落ちるので、露出を1コマ当たり15分確保しました。以前、網状星雲西側を撮った際は、ED103+レデューサーEDを用いたF5.2の光学系で15分露出でしたから、それよりさらに光量が増えていることになります。

撮って出しだとこんな感じ。


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この夜の透明度の高さ*1も手伝ってか、かなり淡いところまで見えていて期待が持てます。薄明開始までにこれを10コマほど確保して、撮影終了です。


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撮影を終わるころにはオリオン座も昇ってきていて、季節の進みの速さを感じます。


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ところで、機材の展開や片付けの際、子猫がずいぶん近くまで寄ってきていました。撮影中も近くをずっとうろちょろしていたのですが、機材をガサゴソやりだすと至近距離まで接近してきます。ビニール袋などを持つと激しく興味を示す様子からすると、餌をくれると勘違いしていたのかもしれません(^^;


帰宅後、フラットフレームなどを撮影し、あそこをああやってこうやって……ででん!((c)あぷらなーと


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2018年8月18日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×10コマ, OPTOLONG CLS-CCD使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

網状星雲は、数万年前に起こった超新星爆発により放たれたガスが秒速100kmという猛スピードで広がっている姿ですが、その様子がよく分かります。ガスは、地上から見て満月の3倍以上の広がりを持っていて、これら全体を指して「はくちょう座ループ(Cygnus Loop )」と言うようです。

全体の構成はこんな感じ。

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Wikimedia commonsより)

広がりが大きいだけに、複数の天体としてカタログナンバーが振られています。

上の図は人工衛星から紫外域で撮影されたものですが、これと見比べると、今回の写真はかなり淡いガスまで表現できていて、東京都心から撮ったにしては上出来ではないかと思います。欲を言えば、もう少しOIIIの青緑色が出てほしいところですが、この先はナローバンド撮影の領域でしょう。


今回も、フラット補正については例の「RGB分割フラット補正」を使っていますが「どうせ三色分解して処理してしまうのなら」ということで、R, G, B各プレーンのヒストグラムのピークがライトフレームに合うよう、露出を変えて3通りのフラットフレームを作成し、各色ごとに処理しています。

精度が高まるおかげか、ちょっとガンマをいじるだけで補正がほぼ完ぺきに決まってくれました。強烈な画像処理も可能になるので助かります。

*1:みずがめ座の目印である「三ツ矢」の中心の星(みずがめ座ζ星)が肉眼でギリギリ見えていたので、最微等級は3.7等くらいはあったでしょうか。

メインマシン新調 その1

今年のお盆休み、こちらでは土日を含めて9日間取れることになりました。これだけまとまった休みも久しぶりですし、この際、以前からの懸案事項だったメインマシンのリプレースに着手することにしました。


メインマシンの置き換えを考えた理由は、おおよそ以下のような感じ。

Windows7のサポート期間終了が近い
現在のメインマシンではWindows7が動いています。以前、Win7→Win10への移行が無償で行われていた頃に何度か移行に挑戦したのですが、Win10にするととにかく不安定でとても実用には堪えませんでした。2020年頭にはWin7の延長サポート期間も終わりますし、その前にWin10に移行しておきたいところです。*1
・前回作成時から5年以上たつ
前回、メインマシンを新調したのが2012年の8月。PCをはじめとしたIT系機器の製品寿命はおおよそ5年と考えているので、そろそろ替え時なのは確かです。

一応、これまでの遍歴を振り返ってみると……

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CPUPentium II 266MHz→Celeron 533MHz
M/BASUS P2L97(チップセット:440LX)
メモリSDRAM(PC66) 32MB→160MB→256MB
GPU*2RIVA128→MilleniumG400
HDDSeagate ST34342A(4.2GB)(+IBM DPTA372050(20GB))
サウンドCreative Sound Bluster AWE64
OSWindows95 OSR2.1→Windows98

キューハチ以外で最初に手にしたのは、1997年に購入したTWOTOP(当時)のショップブランドPC。決して悪いマシンではなかったのですが、ちょうどCPUなどの性能向上が著しい時期で、ちょこちょこ強化していたものの追い付かず、2002年1月には全面的に組み替えることになります。


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CPUAthlonXP 1800+(1.53GHz)
M/BMSI K7T266 Pro2-RU(チップセット:KT266A)
メモリDDR(PC2100) 512MB
GPURADEON7500→RADEON9500
HDDIBM Deskstar 120GXP(40GB)(+IBM Deskstar 180GXP(60GB))
サウンドオンボードONKYO SE-90PCI
ケースWiNDy MT-PRO1200
OSWindowsXP Pro

二代目は、1GHz超え競争に勝利して当時勢いのあったAthlonで。大学院を出て就職し、神戸にいた時分に組んだPCです。かつて自身が運営していたお絵描き系ホームページの全盛期と被っていて、非常に思い入れの深いマシン。壁紙にWoody_RINN氏*3の絵が設定されているあたり、時代を感じます(^^;


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CPUCore2 Duo E6600(2.4GHz)
M/BASUS P5K(チップセット:P35+ICH9)→ASUS P5K-E(チップセット:P35+ICH9R)
メモリDDR2(PC2-6400) 3GB
GPUGeForce7900GS→Radeon HD 5770→GeForce GTX 460
HDDHGST Deskstar T7K500(500GB)(+WD VerociRaptor(300GB))
サウンドONKYO SE-90PCI
ケースAntec Solo
OSWindows Vista

三代目を組んだのは2007年の6月。先代マシンの調子があちこちおかしくなってきたことなどもあって組み替えました。マザーボードが突然死したり、ソフトの対応の関係でビデオカードを何度も入れ替えたり、後日勤めていた会社が倒産した腹いせに、10000rpmの最速HDD、VerociRaptorを導入してしまったりと、手間もかかりましたがバランスの取れたマシンでした。


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CPUCore i7 3770K(3.5~3.9GHz)
M/BASUS P8Z77-V(チップセット:Z77)
メモリDDR3(PC3-12800) 16GB→32GB
GPUGeForce GTX 460→GeForce GTX 960
HDD/SSDWD Cavier Green(2TB)→Plextor M5 Pro(256GB)→Crucial MX200(500GB)(+WD Red(8TB))
サウンドONKYO SE-90PCI
ケースAntec Solo
OSWindows7

で、2012年8月に組んだのが現行の四代目になります。ここまで見てみると、マシンの入れ替えはきれいに約5年おきになっています。

性能的に大きな不満はないのですが、前記のOSサポート期間の問題に加え、スイッチが壊れかけているケース*4PCIスロットを使ったサウンド周りに難を抱えているのも確かで、ここらで一念発起というわけです。

パーツの選定

さて、どのようなパーツで組むかですが、今までの方針として「その当時の一般向けCPUで最上位クラスのものを使う」というのがあります。このレベルの機材であれば、この先5年間はメインを張れるという計算です。

となると、CPUは今ならCore i7 8700K*5Ryzen 7 2700Xということになります。性能も拮抗しているうえに価格も近くて悩んだのですが、天体写真の処理などで並列処理を多用しがちなこと、さらにツクモで週末にRyzen 7 2700Xが安売りされる情報をつかんだことなどから、Ryzenで組むことにしました。Athlon 1800+以来のAMD製CPUです。

AMD CPU Ryzen 7 2700X with Wraith Prism cooler YD270XBGAFBOX

AMD CPU Ryzen 7 2700X with Wraith Prism cooler YD270XBGAFBOX


マザーボードはこれまでの慣れと実績からASUSで。ゲーム向け機能は不要なのでPRIME X470-PROの一択です。メモリについては、搭載量を減らしたくなかったので容量は32GBとします。Ryzenの場合、メモリ速度がパフォーマンスに結構影響するので、できればオーバークロックメモリを狙いたいところです。


システムディスクは、せっかく新規に組むのですからNVMe接続のM.2 SSDを使いたいところ。性能と耐久性を考えてSamusung 970 PROの512GBを狙います。データディスクは従来のマシンからの流用でもいいのですが、万が一の事故を考え新規に用意することに。容量等に不満はないので、同じWD Redの8TBでいいでしょう。


CPUクーラーについてですが、Ryzen 7 2700Xには「Wraith prism」という立派なクーラーが付属しています。普通に使う分にはこれで全く問題ないのですが、なるべく静音で運用したかったことから社外品の利用を考えます。具体的にはCRYORIGの製品ですが、どれを取り付けられるかは選択するケース次第となります。


しかし問題はそのケース。価格低下圧力が強いのか、まともなケースがほぼ皆無なのです。ヘナヘナの鉄板&安物感丸出しの樹脂部品が多用されているものばかりで、ロクな製品がありません。5インチベイが絶滅寸前なのも、光学ドライブを積みたい自分としては死活問題です。

おまけにPCを机の下に置くケースばかりを想定しているせいか、スイッチやポート類がケース上面に配置されているものが大半で、これも非常に困ります。誰もが机の下にPCを置くわけじゃないですし、ポートが上を向いていると埃対策も考えなければならず、面倒なだけなのですが……。

それでも、ないものは仕方がないので5インチベイの存在を最優先として妥協します。一応、事前に現物を店頭で確認したりしていくつか目星を付けはしたのですが、これはしばし保留です。


電源も厄介なところです。機器構成的にいえば大した電力は必要ないはずなのですが、市場のメインは大容量のものばかり。特に80PLUS Goldなどの高効率電源はなおさらです。一方で、電源をケチると痛い目を見るのは経験済みなので、なるべく容量を抑えつつも、SeasonicやEnermaxなど専業メーカー製のしっかりしたものを選びたいところです。


あと、悩ましいのはサウンド周りですが……これについては後述。

お買い物

と、おおよその構成が決まった土曜朝、アキバへ出撃です。

本当なら、少しでも安い製品を求めていくつもの店舗を右往左往するところですが、昔と違って秋葉原も店舗数がずいぶん減りましたし、そもそも猛暑の中を延々動き回るのもイヤだったので、基本的にはRyzen 7 2700Xを安売りしていたTsukumo eX.ですべてのパーツを買う方向で考えます。

結局、買ったパーツ類はこんな感じ。

CPUAMD Ryzen 7 2700X\31,980
CPUクーラーCRYORIG H7 Quad Lumi\7,480
M/BASUS PRIME X470-PRO\19,800
ケースThermaltake Versa H26\4,180
SSDSamsung 970 Pro(512GB)\36,852
HDDWD WD80EFAX(8TB)\24,980
電源Seasonic SSR-650FX\13,480
OSWindows10 Pro(DSP版)\20,800
消費税\12,763
\172,315


CPUは相場からしても大幅な値引きで、しかもマザーボード&電源と同時購入でポイントが3000円分余分に付いたのでなかなかお得でした。


ケースは安物とはいえ、売れ筋のVersa H26に。5インチベイ装備、前面にスイッチ&ポート類と、一応希望条件は満たします。となると、CPUクーラーの高さは160mmまでに制限されるので、R1 Universalなどの大型クーラーではなく、H7 Quad Lumiを選択しました。


また、せっかく側面がアクリルパネルのケースを買ったのだし、マザーボードもケースファンもCPUクーラーも光るので、ここまで来たらメモリも光らせてみよう……と思ったのですが、残念ながらツクモでは光るものはおろかメモリは全体的に品切ればかり。

結局あちこち歩きまわって、最終的にドスパラでG.SkillのF4-3200C15D-32GTZR(DDR4-3200/PC4-25600, 16GB×2)を確保。税抜\48,889(税込\52,800)でした。決して安くはないですが、Ryzen 7 2700Xの評価キットに含まれていたもの*6と同シリーズのメモリですし、信頼性は十分でしょう。


最後に、買い忘れていた高熱伝導グリスをポイントで購入して買い物終了です。


最終的に、使った金額は税抜\208,441、税込で\225,115でした。なんとか20万円以内に収められればと思っていたのですが……消費税の高さが本当に痛いですorz


というわけで、一連のパーツがそろったので組み立て開始……なのですが、長くなったので今日のところはここまで。

*1:ちなみに撮影等に使っているノートPCはすでにWin10になっています。

*2:当時はGPUとは言わなかったけど便宜上。

*3:一世を風靡した、PC-9800シリーズ用グラフィックツール「マルチペイント」の作者として有名。

*4:スイッチボタンを支えるプラスチック製のバネが折れていて、押すのにかなりコツがいる。

*5:厳密にはCore i7 8086Kがあるけれど、限定品扱いで高価なので除外。

*6:G.Skill F4-3400C16D-16GSXW