先日撮影したM59とM60の写真ですが、色々調べているうちに、ちょっと面白い天体が写っていることに気が付きました。


上の写真でマーカーを付けた天体ですが、一見ただの星のようにしか見えません。ところがこれ、なんと銀河なのです。
それぞれM59cO、M59-UCD3、M60-UCD1と名付けられていて、いずれもM59またはM60のすぐ近傍に位置しています。それだけならただの伴銀河なのですが、調べてみるとこれらが普通の銀河ではありえないほどの密度で星が密集していることが分かりました。
この種の銀河が発見されたのは2000年代に入ってからと意外に新しいのですが、もちろん天体自体が知られていなかったわけではありません。こんな高密度の銀河など完全に想定外で、長いことただの星と思われていたのです。このような銀河にはUltraCompact Dwarf galaxy(UCD、超コンパクト矮小銀河)という新しい分類名が与えられています。
ここに写っている中で最初に見つかったのはM59cOで、2008年に報告が上がっています(Chilingarian, IV & Mamon, GA (2008))。直径は約200光年で、私たちの銀河系の1/750ほどしかありません。ところが、銀河系が太陽2兆個分ほどの質量をもっているのに対し、この天体の総質量は太陽3000万個分を超えます。直径が1/750なので、もし同密度なら質量は1/4億2000万*1にしかならないはずですが、これが1/6万~7万もあるのです。
しかも中心部には、全体の18%に相当する太陽580万個分の質量をもつ超大質量ブラックホールが存在していることが明らかになりました。銀河系中心にある超大質量ブラックホールが太陽410万個分ですから、これを上回っているわけです。
2013年に発見されたM60-UCD1もなかなか(Strader, J et al. (2013))。直径は約300光年で、銀河系の1/500ほどしかありませんが、その一方で、この天体は太陽1億4000万個分もの質量をもっています。これも異常な高密度です。
また、直径160光年以内に全質量の半分が集中していて、その中心部には全体の15%に相当する太陽2000万個分の質量をもつ超大質量ブラックホールが存在していることが明らかになりました。銀河系中心にある超大質量ブラックホールの実に5倍もの質量になります。
2015年に発見されたM59-UCD3はさらに凄まじいです(Sandoval, MA et al. (2015))。直径はM60-UCD1と同程度ながら、質量は太陽1億8000万個分とM60-UCD1を上回ります。中心部には、銀河系に匹敵する太陽420万個分の質量をもつ超大質量ブラックホールが存在しています。この銀河の星の密度は太陽周辺の1万倍ともいわれていて、もしこの銀河の中から夜空を見上げたら、暗い部分が見えないほど空一面にギラギラと星が輝いていることになります。
こんな風変わりな天体が生まれた理由ですが、元々はずっと大きな銀河だったものが、M59やM60に接近したことで星をはぎ取られ、中心部分のみが残ったものではないかと考えられています。
それにしても、都心から撮ったアマチュアのこんな写真でも、こういう面白い天体や数億光年も離れた天体が写るのですから、銀河の写真は面白いです。
……処理はものすごく大変なんですけど(^^;
*1:1/750の三乗