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「春の銀河祭り」継続中

土曜の夜、月が沈む夜半頃から明け方にかけて移動性高気圧に覆われて晴れそうな予報だったので、先週に引き続き「対 系外銀河砲」EdgeHD800を携えていつもの公園へ出撃してきました。


実は前日も、GPVの予報に釣られてマルカリアンチェーン狙いで夜半から出撃していたのですが、早々にベタ曇りになって撤退を余儀なくされていました。二日連続で体力的にしんどいところですが、来週、再来週は月明かりがあるため、春の銀河を狙うには不向きになります。ここは踏ん張りどころです。

何を撮るかはちょっと迷ったのですが、おとめ座銀河団のメンバーは楕円銀河が多めでクローズアップで撮るには面白みに欠けるので、まずはちょっとマイナーながらも形が面白そうなM109に決定。

そのあとは春の定番、「子持ち銀河」ことM51を狙うことにします。M51については以前EdgeHD800で撮影を試みたことがあるものの、これはガイドシステムが不完全だった頃に、流れが比較的目立たないものをコンポジットして、ひとまず見られる形に仕立て上げたもの。とても満足できるシロモノではありませんでした。最近のやり方で、どこまで向上できるでしょうか……?

撮影自体は特に大過なく。明け方近くにはISS夏の大三角の付近を通過するという、ちょっとした「ご褒美」もありました。また、南の空にはさそり座が*1。季節が着々と進んでいることを実感させられます。


帰宅して仮眠をとった後、画像処理を始めたのですが……M109の写真を開いてビックリ!



なんだこの虹色!?


どうやら、M109から角度にして40分ほどしか離れていないフェクダ(おおぐま座γ星、2.4等)の光を拾ってしまっているようです。派手に分光しているところからして、一番怪しいのはオフアキのプリズム。この天体に関してはプリズムの角度や位置を変えてみるなり、気休めかもしれませんがプリズムのコバ塗りくらいはしておいた方がいいのかもしれません。


それでも強引にフレアを消して処理した結果がこちら。



2017年3月5日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

ただでさえ暗めの銀河なのに、無理してフレアを消した分、処理の余裕がなくなってなんとも冴えない写りに。棒渦巻銀河の形が分かるだけ、まだ良しとするべきでしょうか。これならいっそ、中程度の焦点距離でフェクダも入れてしまった方がアクセントになって良さそうな気さえします。

ちなみに、M109はこの周辺に点在する銀河とともに「M109銀河群」と呼ばれる集団を形成していますが、よーく見るとこの写真にもM109の西側にUGC6969という暗い伴銀河が見えています。派手さでは「おとめ座銀河団」に負けますが、おおぐま座の方向もそれなりに銀河の密集地なので、その気になって写真をよく確認すると、結構な数の銀河が写っていることがよくあります。


一方のM51ですが、こちらは特に問題なさそうです。処理して出てきた結果がこちら。



2017年3月5日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出900秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

元々、フェイスオンの銀河にしては明るく写真写りの良いものですが、長焦点鏡で狙うとなかなかの迫力です。以前は露出不足かつガイドが流れたコマを無理やりコンポジットしてたので不鮮明でしたが、今回はオフアキでしっかりガイドしている分、力強い2本の腕や暗黒帯の複雑さもある程度出すことができたように思います。

なお、空の条件の良いところで撮影された冷却CCDでの作例などを見ると、M51と伴銀河であるNGC5195の周囲にはさらに淡い領域が広がっていますが、東京都心から、かつデジカメではそこまで抽出するのはなかなか大変そうです。

*1:写真に写っているのが分かるでしょうか?こんな有様なので、光害を含め、空の状態は推して知るべしです。ちなみにこの夜の最微等級は3等ジャストといったあたりでした。