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北アメリカ&ペリカン再処理

先週末に撮影&アップした北アメリカ星雲&ペリカン星雲、どうしても仕上がりに納得いかなかったので再処理してみました。

先週の段階では、実はフラット補正が追い込み切れていませんでした。具体的には、特にBチャンネルが過剰補正に。仕方がないのでIRISの「Remove gradient」などで誤魔化していたのですが、やはり情報の欠落は無視できず……。


そこで、今回はフラットフレーム、天体の写ったライトフレームともにRGB三色分解を行い、R, G, Bの各プレーンごとにフラット補正を行いました。ステライメージ7には、フラットフレーム自体にガンマ補正をかけて濃度の傾き具合を調節する機能があります。そのままではフラット補正が決まらなかったBチャンネルについては、この「ガンマフラット」を用いて平坦化し、これらを再度RGB合成、コンポジットを行って仕上げています。


そうして出てきた結果がこちら。



2016年6月11日 ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO400, 露出300秒×16コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1dほかで画像処理

フラット補正がそれなりにしっかり決まったおかげで、かなりの強調処理が可能となり、星雲をよりはっきり浮かび上がらせることができました。また、前回はソフトウェア的に背景の傾きを修正したせいで、北アメリカの「中部〜西海岸」が巻き添えを食って薄くなってしまっていましたが、これも避けることができました。


ちなみに「撮って出し」の元画像はこんな感じで、星雲はかろうじて「ユカタン半島」付近が見えるような気がするだけで、それ以外はほとんど影も形も見えません。



しかし情報としては確かに存在するわけで、これをいかに引っ張り出してくるかが工夫のしどころと言えるでしょう。


ところで、このフラット補正が決まらなかった原因ですが、1つはフラットフレーム作製に用いているELシートの色味に原因があるとみています。ELシートの発光はかなり「青い」ので、フラットフレームを撮影するとBチャンネルのヒストグラムがかなり右側に寄ります。一方、デジカメでは白飛びを防ぐため、また黒潰れを防ぐ(あるいはノイズを目立たなくする)ため、高輝度側、低輝度側ののトーンカーブを捻じ曲げて記録します。もしフラットフレームやライトフレームのBチャンネルがこうした領域に入ってしまっていたとすると、輝度とシグナルとの関係がお互いに変わってきてしまいます。

そのほかにも様々な原因が考えられますが、いずれにせよライトフレームとフラットフレームとで輝度分布の食い違いが出てしまったのは確か。これをリカバーする方法として、今回の手はなかなか使えるのではないかと思います。