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ようやく梅雨明け

長かった東京の梅雨もようやく明けました。とはいえ、今年の夏はどうも不順になりそうな雰囲気で、週間予報を見る限り、「梅雨明け十日」と言われるほどには安定してくれなさそうな感じです。

そこで、久しぶりに晴れそうな金曜の夜、早々に仕事を片付けて帰宅し、そのまま近所の公園に出撃しました。家を出るころには雲一つなく、風もこの季節にしては涼しくて絶好のコンディションです。

しかし、なにしろ久しぶりの撮影。忘れ物をして家に一度戻ったり、Windows10にアップデートしたPC上でBackyardEOSが再認証を求めてきたり、V132(beta4)にバージョンアップしたPoleMasterのソフトウェアの使い勝手が微妙に変わっていて戸惑ったりと、いろいろ手間取り、撮影に入れたのは21時半を回ってから。せっかく急いで帰宅して、薄明終了を狙って出撃してきたのに少々もったいないことをしました orz

ともあれ、準備が整って撮影開始です。この夜の機材はED103S+レデューサーED。この組み合わせで、はくちょう座の網状星雲の東側領域NGC6992, 6995を狙います。

この領域は、全く同じ機材を用いて2013年8月に撮影しているのですが、当時と比べれば撮影や画像処理のノウハウも多少は蓄積されているはずですし、どこまで撮れるか3年前の自分と勝負です。


昨夜は上にも書いたようにこの季節の都心にしては涼しく、空の透明度も上々でした。天頂付近では、こと座β星シェリアク(3.5等)が難なく見えていましたし、日付が変わるころにはやぎ座α星アルゲディ(3.6等)やγ星ナシラ(3.7等)も見えていたくらい。新宿・渋谷から10km圏内のこの場所で、ここまで見えるのはなかなか珍しいことです。


この好条件に後押しされて、出てきた結果がこちら。



2016年7月29日 ED103S+レデューサーED(D103mm, f533mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO400, 露出240秒×32コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
ミニボーグ60ED(D60mm, f350mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

透明度がいいとはいえ、基本的に光害まみれの都心にしてはガスの色がよく出てくれました。絡み合ったガスのフィラメントの様子もよく分かります。東京都心のど真ん中で、非冷却のカメラでここまで出れば、現時点では上出来かと思います。


部分をアップにして見ると、Veil nebulaの英名の通り、複雑なガスの色合いとフィラメントの絡まりあい方が実に美しいです*1




以前撮った時には高感度での撮影だったこともあってか、ノイズだらけの上に色味がほとんど出なかったのですが、ここでも比較的低感度で絶対的な露出時間を延ばす戦略が当たった感じです。


とはいえ「撮って出し」の元画像はこんな感じなので、強力な画像処理なしには上の写真のようにはなりません。



その画像処理のほうでは、前エントリで書いた三色分解後のガンマフラットとか、星雲マスクを使った強調とか、3年前にはできなかった手段をいろいろと講じています。


とりあえず、3年前の自分は超えられたようでホッとしました(^^;


なお、上に書いたフラット補正の方ですが、今回は残念ながら端の方まできっちりと決めることはできず、やむを得ず画面中央部をトリミングしています。光のまわり方が「ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG」と比べると、いまひとつ素直ではないようです。画質面も含め、レデューサーの品質がもう少しいいと助かるのですが……。

*1:その代わり、光学系の色収差や画像処理の痕跡も丸分かりですが