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Nik Collectionをフォトショップなしで使う

ドイツのNik社が開発していた高機能なPhotoshop用画像処理プラグイン「Nik Collection」。このNik社がGoogleに買収され、それに伴って「Nik Collection」が2016年3月から無料で提供されています。元々500ドルもしていた製品が完全無料になったという衝撃もさることながら、簡単に高品質な画像処理ができる*1ことから、天体写真の分野でも大変に注目を集めていることはご存知の方も多いと思います*2

しかし、これの唯一の泣き所が「Photoshopプラグインである」ということ。PhotoshopLightroomがないと使えないのです。せっかく簡単に処理ができるというのに、高額なソフトが必要なのか……orz


ところが先日、あぷらなーとさんが驚くべき報告をブログに上げていました。なんと単体で利用可能だというのです。


そこで、こちらでも試してみました。なお、検証はすべてWindowsで行っています。Macで可能かどうかは未確認なので、もし「我こそは」と思う方がいたら、ぜひ試して報告してみてください。


あとお約束ですが、以下に書く内容はすべて、本来の使用方法とは異なるものです。この記事に書かれた内容を実行したことで、何か不具合や損害が発生したとしても、私やあぷらなーとさん、Google、その他関係各社は一切責任を負えません。自己責任ということで、よろしくお願いします。


まずはNik Collectionのサイトにアクセスして、プラグインをダウンロードします。

右上の「ダウンロード」をクリックし、対応するOSを選んでインストーラをダウンロードします。


インストーラを起動し、作業を進めていくと「対応ホストアプリケーション」を選ぶ画面が出てきます。ここで左側のボックスには本来、このプラグインが対応しているソフトの一覧が表示され、どのソフトに組み込むかを選択します。しかし私の場合、対応するソフトを持っていませんのでここは空欄になっています。

なので、無視して「インストール」のボタンを押すと……何事もなくインストールが完了してしまいます。


プラグインの本体は「C:\Program Files\Google\Nik Collection」に、種類ごとのフォルダに分かれてインストールされています。試しに中身を覗いてみると……


Photoshopプラグイン本体である「.8bf」ファイルと、実行ファイルの形式である「.exe」ファイルとが入っています。


また、フォルダの中には64bit版も格納されていて、こちらも同じ構成です。そこで「.exe」ファイルをダブルクリックして起動してみると……


何事もないかのように、単体のソフトとして普通に動作しました。ファイルの入出力も普通にできれば、処理もまったく問題ありません。おそらくこのプラグインですが、Photoshopはあくまで呼び出しを行うだけで、あとは昔風に言うところの「子プロセス」として起動するタイプのものなのでしょう。

天体写真用として最も使いでのある「Silver Efex Pro 2」をはじめ、「Color Efex Pro 4」、「Analog Efex Pro 2」、「HDR Efex Pro 2」と、いずれもちゃんと動作してくれました。


と、ここまでなら万々歳なのですが……Nik Collectionに収載のいくつかは、単体で起動こそできるものの利用することができません。具体的には、ノイズを除去する「Dfine 2」、シャープネス処理を行う「Sharpener Pro 3 - Raw Presharpner」、「Sharpener Pro 3 - Output Sharpner」、色調補正を行う「Viveza 2」の4つです。


起動してみると分かりますが、これらにはファイルを読み込む機能がありません。見ての通りファイルメニュー自体がありませんし、ウィンドウにファイルをドロップすることもできません。


単体でファイル入出力できないプラグインを無料で使う方法 その1

せっかくここまできたら、なんとかこれらも利用してやりたいところです。これらの共通点は、比較的機能が単純な「フィルター」であること*3。おそらくファイルの入力をプラグインとしてのインターフェイスに依存しているため、単体で使うのが不可能なのでしょう。

しかし逆に言えば、プラグインを「ちゃんとプラグインとして扱うことができるソフト」があればOKなわけです。


そこは昔取った杵柄。これでも一応、以前はウェブサイトでCG講座とかやっていた身ですから、Photoshopプラグインを利用できるフリーウェアに心当たりはあります。ご存知の方やすでに利用している方も多いと思いますが……画像ビューアーとして有名な「IrfanView」(リンク先:窓の杜)です。


まずはIrfanViewに画像を読み込ませます(IrfanViewは16bit TIFFの読み込みに対応しています)。そうしたら、IrfanViewのメニューから「Adobe 8bf PlugIns」→「フィルター一覧」を選びます。


ここで「Add 8bf filters (Files)」のボタンを押すと、組み込むプラグインファイルを選択する画面になるので、上で書いた「Nik Collection」がインストールされているフォルダを開き、組み込みたいプラグインに対応する「.8bf」ファイルを選択します。なお、IrfanViewが対応しているプラグインは32bit版のみです。

これで左側のリストにプラグインが追加されますので「Start selected filter」のボタンを押すと……


見事、ちゃんと動作しました*4。パラメータ調整後、右下の「OK」ボタンを押すと、制御がIrfanViewの方に戻され計算が行われます。完了後、「フィルター一覧」の「Exit」ボタンを押すと表示されている画像にも実際に処理が適用されます。

これで、「Nik Collection」の全機能を無料で利用できたことになります*5


この方法の注意点

ただし、IrfanViewを使ったこの方法には1つだけ弱点があります。IrfanViewの処理自体は8bitの画像にしか対応していないのです。読み込み自体は16bit TIFFも可能なのですが、読み込まれた時点で階調が8bitに丸められてしまいます。出力できる画像も当然8bitに限られます。

ですので、この方法での処理はほぼ最終段階に限られます。初期〜中間処理の段階でIrfanViewを介してしまうと、せっかく画像が持っていた階調を捨てることになってしまいます。


16bit画像を16bit画像のまま取り扱え、かつPhotoshopプラグインまで使えるフリーウェアとなると、さすがに心当たりがありません。もし、そんな高機能なフリーウェアをご存知でしたら教えてください。


単体でファイル入出力できないプラグインを無料で使う方法 その2

一応、ここまでで機能的にはすべて使うことができるようになったわけですが、せっかくの16bit画像が8bitに丸められてしまうのは、やっぱりどうにも気持ち悪い。なんとかならないか……と思うのが人情というもの。そこで、困ったときのコマンドラインです。


目的のプラグインの入ったフォルダに移動し、「.exe」ファイルの名前の後ろに処理したいファイル名を入れて……Enter!


動 く の か よ !


なかばダメ元でやったのですが、まったく問題ありませんでした。16bit TIFFもちゃんと16bitのまま処理、保存してくれますし、拍子抜けもいいところですorz ただし保存については、右下の「保存」ボタンを押した時点で問答無用で元ファイルを上書きしてしまうので、その点は注意が必要です。


なお、「Viveza 2」については、「.exe」ファイルの名前内に半角スペースが入っている(Viveza 2.exe)ため、そのまま入力してもコマンドが「Viveza」までと認識されてしまい、うまく動作しません*6。コマンドをダブルクォーテーション(")でくくって入力してください("Viveza 2" 対象ファイル名)*7

MS-DOSの知識がある人やコマンドプロンプトに慣れている人には当たり前の話ですが、一応念のため。


しかも、そのあとさらに試したら「.exe」ファイルのアイコンに処理したい画像ファイルをドロップしただけで動いたという……。えぇと……プラグインってなんでしたっけ?( ̄▽ ̄;ゞ

*1:テクニックを駆使すれば、多くは既存のソフトで達成可能な範疇ですが、「簡単に」という部分がキモです。

*2:2016年11月号から「天文ガイド」で使い方についての連載が始まっています。

*3:ぶっちゃけ、このレベルなら他のソフトでも十分に代替可能で、正直あまり無理をする必要もないのですが、ここまで来たら意地です。

*4:ただし、動きはしますが本来のスペック通り正しく動いている保証はありません。特にViveza 2は少々表示がおかしいようです。

*5:逆に、単体で利用できたプラグイン類は、この方法ではIrfanViewがフリーズしてしまい、使用できませんでした。

*6:コマンドプロンプト……というかMS-DOSの「お作法」として、半角スペースが通常、コマンドとオプション、引数の区切りとして利用されるため。

*7:ファイル名を変更してしまうのも手ですが、不具合が起こるかもしれません。