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最近のお買い物─P-51 Mustang簡易レビュー

最近、Fiioをはじめとするポータブルヘッドホンアンプ(PHPA)がちょっとした盛り上がりを見せていますが、先日、ヨドバシでオーディオテクニカのAT-PHA30iを試聴する機会がありました。普段iPodに組み合わせて使っているImage X10はインピーダンスが50Ωと、この手のイヤホンにしては比較的大きめなものの、特に音量が取りにくいというわけでもないので、その意味では必ずしもPHPAは必要ありません。しかし、接続機器による描写力の差が大きく出るとの評価もありますので、軽い気持ちで試してみました。
ご存知のとおり、AT-PHA30iはiPodのDock端子からライン出力を取り出して増幅するタイプのアンプで、手軽に高音質を楽しめるのがウリになっています。で、早速聞いてみると、なるほど、ベールを1枚はいだようなクリアな音で、iPod直結とは一線を画しています。また、低音も深く沈みこむ感じで、なかなか迫力があります(良くも悪くもオーディオテクニカらしい「音の硬さ」も感じましたが)。ただ、ちょっと低音の鳴り方が、いかにもイコライザーで弄りましたというようなわざとらしい感じはしました。
とはいえ、この程度の製品でこれだけの効果があるのなら、もうちょっと上のクラスだとどんな音がするのだろう…と考え始めたのが運の尽き。気づいたときには海外の製品をあれこれと物色してました(^^; 最近だとMeier-AudioのCORDA STEPDANCEが性能面で非常に評価が高く、どうしようか迷ったのですが…結局購入したのはこちら。

いまさらの感はありますが、その方面では有名なRay Samuels Audioの「Emmeline "P-51 Mustang"」です。価格は本体$375+送料$45の計$420。決して安くはないですが、幸いこの円高ですので、Paypalの手数料等含めても35000円程度でしょうか。国内の業者を経由して買うと5万円近くしますので、直接取引の方が圧倒的にお得です。また、見積・注文から納品までも1週間以内で済んでしまいましたので、少なくともここの製品を買うのであれば、下手な輸入代行業者に頼むくらいなら、自分でちゃっちゃと注文してしまったほうが絶対に楽です(^^;
STEPDANCEではなくこちらを選んだのは、主に運用面の問題。P-51は内蔵バッテリーで連続56時間持つと謳われていますが、一方のSTEPDANCEは、電源が9Vの角型積層電池(006P)。で、アルカリ電池を使った場合、ローカレントモードで30時間、電圧を2倍に昇圧するハイカレントモードでは15時間程度しか持ちません。本体こそP-51より安いものの、電池の入手性やランニングコストを考えるとP-51の方が圧倒的に有利です。また、本体サイズもSTEPDANCEが91×65×28(mm)なのに対し、P-51は48×58×22(mm)と半分程度。PHPAは常に持ち歩くものだけに、結構重要なポイントです。

で、実際に手持ちのiPod nano(第4世代)と比べてみると、ご覧のとおり。このサイズで本格的なヘッドホンすら鳴らしきるパワーがあるというのだから驚きです。ただ、逆に小さすぎてiPod classiciPod touchとは合わせにくいかもですね(^^;

AUDIOTRAK iPodオーディオケーブル3GS 10cm AT-iacS3

AUDIOTRAK iPodオーディオケーブル3GS 10cm AT-iacS3

iPodPHPAとの接続に使うDockケーブルは、価格と入手性の面からAudioTrakのものを購入。世の中には、線材やシールドに凝った挙句、これの10倍近くもするようなバカ高いケーブルもありますが、実用上はこれで十分*1
むしろ、ケーブルが細めで柔らかい分、取り回しが楽であったり、万が一断線した場合でも精神的ダメージが小さい(ぉ など、普段使いではメリットも大きいです。

ハードウェアとしての使用感など


さて、まずは外観などからチェック。本体はヘアライン加工がされた総金属製で、仕上げも美しく高級感があります。サイズは、上にも書いたとおり48×58×22(mm)と非常に小さく、重量も実測値で66gしかありませんので、持ち運びに苦労することはないでしょう。

まぁ、そうはいっても余分なものを持ち歩くには違いありませんから、できればポーチなどが欲しいところ。私の場合、手近にあったACアダプターに付属していた、コード結束用のマジックテープでiPodとアンプを束ねた上で、デジカメ用のポーチ(ハクバ ピクスギア ツインパック M)に入れて持ち歩いています。

入力、出力はともにステレオミニジャックで、本体前面に配置されています。小型のアンプの場合、入力、出力が本体の前後に分かれて配置されていることがありますが、ケーブルの取り回しを考えると、P-51のように同じ側に配置されていたほうがありがたいです。ただ、本体サイズの関係上、両ジャックは比較的接近して配置されています。間隔は実測値で13mm程度。プラグが太い場合、干渉することもありそうです。
本体上面にはゲイン調整用の小さなスイッチがありますが、このスイッチは奥まった位置にあって、爪楊枝のようなものがないと動かせません。そうしょっちゅう弄るようなものではありませんし、不用意に切り替わってしまうのも問題なので、これはこれでもいいとは思いますが、できればもう少し操作しやすい方がよかったように思います。
バッテリーは非常によく持ちます。むしろ、iPodの方が先にバッテリーが切れたくらいです。「連続56時間」という公称は伊達ではないですね。充電は付属のACアダプターで行いますが、このアダプターにはLEDがついていて、充電中は赤、充電が完了すると緑に点灯します。一方、本体にはバッテリー残量を示すようなものはありません(他のPHPAも大体そうですが)。バッテリー自体はLiイオンバッテリーで、継ぎ足し充電しても基本的には問題ありませんので、使用頻度にもよりますが2〜3週に1回も充電すれば十分だろうと思います。ちなみに、バッテリーはiPod nano用のものらしいので、いざとなれば、最悪自力でも交換は可能です。

音質

Ray曰く、100時間程度のBurn-inを推奨とのことですが、現時点での稼働時間はせいぜい2〜30時間程度。なので、もしかしたら今後音が変わってくることもあるかもしれませんが*2、とりあえず現時点での印象のようなものを。環境は、プレーヤーがiPod nano(第4世代)、イヤホンがImage X10です。
まず、なんといっても特徴的なのは、フロアノイズの少なさと表現力豊かな中低音です。特に、ノイズの少なさに関しては、単にライン出力の効果ということもあるかもしれませんが、本当に印象的。ボリュームを上げても無音部分はきっちり無音で、結果的に、表現できる音のレンジの広さ、コントラストの高さに繋がっています。
低音域は、iPod直結だと音の輪郭が不鮮明なままボワボワと膨らむ感じですが、P-51では量感があるにもかかわらずしっかりと制動が効いた解像感のある音で、またズーンと深く沈みこむため、聞いていて小気味よいです。ベースなどは弦や指の動きがハッキリと分かるよう。中音域ではさらに顕著で、実に表情豊かな音を聞かせてくれます。楽器の種類をアンプが判断しているわけもないのですが、特にギターの鳴りっぷりは鳥肌モノです。ヴォーカルもあたかも急に活舌がよくなったかのようで、それまでモヤッとした音の塊として聞こえていた英語詞が、きっちり単語単位で聞こえてくるようになったのには驚きました。…と、こう書くと、いかにも低音よりかつ人工的で不自然な音を鳴らすアンプのように感じるかもしれませんが、高音は高音で抜けがよく、また解像感があるといっても、神経質に1つ1つの音を解析的に鳴らすといったキャラクターではないので、バランスとして不自然な感じはしません。パンチは効いているものの、AT-PHA30iあたりに比べると、はるかに上品で上質な音だと思います。

…というわけで、現時点では非常に満足しています。それなりの性能・価格帯のイヤホンを持っているようでしたら、このクラスのPHPAを思い切って試してみてはいかがでしょうか?*3なかなか試聴する機会がないのが難ですが、中途半端なものを買うよりは満足できると思います。

*1:ちなみに、高価なケーブルとしてよく引き合いに出されるALOの一部製品はプラグのメッキの強度が弱く、すぐボロボロになってしまうようです(http://afterdot.net/?p=1215)。線材に凝る前に、こちらの接触抵抗の方がよほど問題でしょうに…。もっとも10cm程度のケーブルの線材を奢ったところで、音質が変わるとは思えませんが。

*2:スピーカーやイヤホンと違って、機械的な作働部があるわけではないので、Burn-inに効果があるかどうかは、個人的にはかなり懐疑的ですが。どちらかというと、耳が慣れてくるほうがはるかに大きいんじゃないかと…

*3:逆に、それなりのイヤホン、ヘッドホンを使っていないと効果は薄いでしょう。それにPHPAはあくまでも信号の増幅が本来の役割で、音質の変化は副次的なものですから、音質の激変を期待すると肩透かしを食らうかも。まずは環境を整えて、PHPAに手を出すのは「最後の一手」ということで。