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「ヱヴァ」を見てきた

遅ればせながら、ようやく昨日、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」を見てきました。会社帰りにユナイテッド・シネマ豊洲に寄って20:15からのレイトショーで見たんですけど、場所が穴場がちの上に、平日のあの時間ということもあってか館内はガラガラで、スクリーンの真ん前でゆったり見ることができました。

で、もう散々あちこちに感想上がっているんでいいような気もしますけど、とりあえず自分なりに感じたところを。
(以下、ネタバレあり)
とりあえず、映像の迫力は「REBUILD」と豪語するだけに、密度、情報量、緻密さともにすさまじいです。兵装ビルといい、エヴァのケージといい、使徒の描写といい、描き込みから動きまでそのこだわりは偏執狂的と言ってもいいくらいの異常っぷり。TV版の予算は1話あたり650万円程度の破格の低予算だったと聞いたことがありますが、たっぷり金と時間をかけ、当時はなかったデジタル技術を駆使することで、当時スタッフの頭の中にあったであろう理想の映像を具現化したということなのでしょう。

そして本作品中、特に強烈なのはなんといってもラミエルラミエルラミエル!いや、ホント、この映画の主役はエヴァじゃなくてラミエルなんじゃないかというくらい。あの破壊力と恐ろしさといったら…無理無理無理無理っ!絶対あんなのに勝てっこないYO!さすがはあの巨神兵のシーンを作り上げた庵野監督、面目約如といったところでしょうか。このラミエルヤシマ作戦だけでも見に行く価値は十二分にあるかと。

というわけで、映像のほうはとにかくすごかったわけですが、じゃあ話の方はというと、これも見事に「エヴァ」してましたね。序盤こそ駆け足であっさりしすぎ*1な感があるものの、ヤシマ作戦の盛り上がりっぷりでそれも帳消し。相変わらずカヲル君は言ってること謎だらけだし、スタッフロール後の予告編も含めて期待を持たせるには十分。見る前は「ネット上であれこれ盛り上がっている人もいるけど、所詮総集編に毛の生えたようなものだろ?」と思ってたんですが、気づけば見事に術中にはまって来年の「破」を楽しみにしている自分がいる…。えぇい、もういいや。好きにしてくれ!ってなもんです(笑)

…と、まぁ、こう書いてくると手放しで絶賛しているように見えますが、もちろん若干の違和感というか、乗り切れない部分があったのもまた事実。

一番の要因は、「完成度が高すぎる」ことにあるような気がします。映像はすごいです。演出にも冴えを感じます。しかし、ここで感じる「すごさ」は高度な技術に対するそれであって、決して斬新さや勢いから来るものではないです。職人芸的と言い換えてもいいでしょうか。

前の劇場版「THE END OF EVANGELION」のパンフの中のインタビューで、鶴巻和哉氏(劇場版・新劇場版監督)はTVシリーズについて、こう述べています。

最後の方はほんとにいい気分だったんですよ。第拾六話の作業を終えて、特に弐拾話以降ですね。勿論、体はボロボロで疲れてもいたけど、頭だけは冴えてるっていうか、自分が本来持っているスペックが最大効率で発揮されている感じだったんです。
(中略)
スケジュールは破綻して作画枚数は落ちていくし、クオリティとして残念な部分はあるけれど、絶望的に追い詰められていくスタッフの緊張感は確かにフィルムに出ている。

エヴァ」のすごかったところは、まさにこの狂気ともいえるようなエネルギーがフィルムに容赦なくブチ込まれているところで、だからこそ視聴者もあれだけ熱狂したんじゃないでしょうか*2。回収できなかった伏線や、ストーリーの矛盾は山ほどあったけれど、それをものともしない暴力的なまでのパワーがあの作品にはみなぎってました。

しかし、翻ってみてみると、今回の映画にはそうした部分はほとんどない。むしろ、完成度を上げるために意図的に排除したんじゃないかという感じすらします。演出から何から、とにかくすべてが計算ずく。もちろん、完全新作を作っているわけではないですし、狂気とパワーに満ち溢れた前作を超えるには、完成度という方向から攻めていくぐらいしかないんでしょうけど…。*3

とはいえ、まだまだ第1作目。最終的に予定されている四部作が揃ったときに、狂気と完成度を兼ね備えたとんでもない化け物作品が出来上がるのか、それとも熱狂の残滓はあるけれどこぎれいなだけの作品が残るのか、見届ける義務が「エヴァ」に夢中になった我々にはありそうです。

まぁ、小難しい議論は抜きにしても*4、ヤマト、ガンダムエヴァと、アニメの三大ムーブメントをリアルタイムで体験し続けられている*5ことに感謝ですな(^^;

*1:新劇場版作成の「決意表明」で庵野氏は「中高生のアニメ離れが加速していく中、彼らに向けた作品が必要だと感じます」と言っていますが、その割に、これだと初見の人は序盤で置いてけぼりを食ってしまいそうな気がします(^^;

*2:不思議なもので、作者の精神状態は作品を見る者に伝染するようです。これは自分で絵などを描いていても実感します。

*3:逆に言うと、そういう狂気に満ちた新作を見たい気もしますが…「エヴァ」という自己をさらけ出す手段を既に手に入れている上に、良くも悪くも齢を重ねた庵野氏にはハードルが高いかもしれません。まぁ、いずれ「エヴァ」という形では自分を表現しきれなくなりそうな気もしますが。

*4:なにかと議論してしまいたくなるところが「エヴァ」の不思議なところで、その意味では今回の「ヱヴァ」も間違いなく「エヴァ」ってことなんでしょう(^^;

*5:ヤマトのブームは小学校入学前のことなのでリアルタイムというにはいささかギリギリですが、夢中になっていたのは確か。