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AMD、ATIの買収を発表

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0724/amdati.htm
とうとうウワサが現実のものに!これは業界激震の予感ですよ。とりあえず、それぞれの立場からの影響を考えて見ましょうか。

ATIにとって

GPU事業

単独のGPUに関しては、直接的な影響はあまりないでしょう。AMDの傘下だろうがなんだろうが、全プラットホームに対して製品供給できますから。むしろ、ATIが以前から進めてきたGPU上での汎用プロセッシング(General-Purpose GPU, GPGPU)にとっては追い風になるかもしれません。AMDの推進するコプロセッサ戦略「Trrenza initiative」がありますからねぇ。ただし、コプロセッサ開発にリソースを割かれて新GPUの開発が遅れる可能性はありますが。

チップセット事業

事業を続けるとすればすべてAMD向けになって、Intel向けの新製品はおそらく出なくなるでしょうから、その分、シェアが低下するのは避けられないだろうと思います。
読めないのはnVidiaの出方。AMDとの関係悪化は避けられないでしょうが、じゃあIntel向け専業になるかといえば、せっかくAMD向けチップセットでほぼ標準の座を射止めているのに、むざむざそれを捨ててしまうとも思えず。少なくとも現行のラインナップで行く限り、大勢は変わらなさそうな気がします。
変わるとすれば、上記の記事でも触れられているGPU統合CPUの計画が立ち上がった場合。Athlon64のようなメモリコントローラ統合アーキテクチャでは、ノースブリッジにGPUが統合されているよりは、CPUにGPUが統合されているほうがパフォーマンス的に有利(発熱等の問題は別として)。これが形になると、ノースブリッジの役割が大きく低下(うっかりするとなくなるかも(^^;)して、nVidiaの出る幕がなくなってしまう可能性があります。

AMDにとって

CPU事業

今回の買収の目的の1つに「Trrenza initiative」の推進があるのは間違いないでしょう。AMDにしてみれば、強力なベクタ演算能力と並列処理機構を持つGPUコプロセッサの雛形として魅力的です。では、なぜnVidiaではなくてATIなのかという点ですが、時価総額云々といったこともあるかもしれませんが、双方の持つGPUの違いが影響している可能性があります。nVidiaの現状のGPUでは、従来と同様、Vertex ShaderやGeometry Shader、Pixel Shaderが分離したアーキテクチャを取っていますが、ATIはこれらのShaderを統合してプログラム性を高めたUnified Shader型アーキテクチャを志向し、実際にXbox360向けGPUXenos」では既に実装しています。コプロセッサ搭載を考えるAMDにとっては、汎用コンピューティングに有利なUnified Shader型アーキテクチャのチップが手に入るというのは大きな利点だろうと想像されます。

その他

AMDは最近盛んにFabの拡張に走っていましたが、半導体Fabの場合、フル稼働して減価償却をして行かないと、投資分が無駄になってしまうリスクがあります。計画では2008年に自社Fabで8000万個のCPUを生産することになっていますが、もしこれを売り切るだけのシェアを取れないと不良在庫の山を抱えることになってしまいます。が、ここでもし生産能力の一部をATIGPU生産に回すことができれば、Fabの稼働率を一定に保つことができ、好都合です。もちろん、プロセス技術自体が大きく違いますので、現在TSMCで製造されているものをいきなり移すことはできないでしょうけど、展開次第では将来的にありえない話ではないような気がします。
ただ、そうした面とは別に心配なのが、最近の支出の大きさ。上記のFab新設に2007年までに25億ドルを投資する上、今回の54億ドルの買収劇です。もし少しでもコケたら大変なことになりますが…CPUコア本体の大幅刷新が事実上ほぼストップしている現状からすると、かなり危険な賭けなのも事実でしょう。さて、吉と出るか凶と出るか…。