ASI2600MC Proが手元に届いて約1年になりますが、面倒でずっと後回しにしていたのがEdgeHD800のオフアキシスシステムの調整です。
EdgeHD800の場合、光学系内(バッフル内)に補正レンズが組み込まれているため、設計通りの性能を発揮させるには接眼部~センサーまでの距離をきっちり規定値に収める必要があります。EdgeHD800では、接眼部後端から133mmの位置にセンサーが来なくてはなりません。
そこで、デジカメを使っていた頃は、上記のようなセッティングでセレストロン純正のオフアキシスガイダーを利用していました。まず、φ52mmフィルターがない場合ですが、
SCTアダプター | 25.3mm |
オフアキシスガイダー本体 | 29mm |
M42(オス)Tマウント用カメラアダプター | 12.5mm |
TスレッドスペーサーリングB | 11.55mm |
Tリング(N) キヤノンEOS用 | 10.8mm |
EOS KissX5 | 44mm |
計 | 133.15mm |
となり、光路長はほぼ133mmとなります。これはセレストロンの推奨設定でもあります。
実際には、カメラ側にマウント内部に装着するLPS-P2-FFを装着することが多いので、光路長はその分伸びます。以下の記事を参照すると、LPS-P2-FFの場合、0.5mmほど伸びるようです。
hdv-blog.blogspot.com
とはいえ、ここで光路を0.5mm縮めるにはおそらくカスタムパーツが必要ですし、妥協せざるを得ないところでしょう。
一方、φ52mmフィルターを使おうとすると、いささか面倒になります。というのも、オフアキシスガイダー自体にフィルターを装着する機能がないためで、やむを得ずボーグの規格に変換してからカメラを装着する形になりました。
SCTアダプター | 25.3mm |
オフアキシスガイダー本体 | 29mm |
M42(オス)Tマウント用カメラアダプター | 12.5mm |
M42P0.75→M57AD【7528】 | 8mm |
フィルターBOXn【7519】 | 15mm |
M57→M49.8ADSS【7923】 | 0mm |
カメラマウント キヤノンEOS用【5005】 | 10.8mm |
EOS KissX5 | 44mm |
計 | 144.6mm |
これだと規定値を10mm以上もオーバーしていて、さすがに像の悪化が無視できません。フィルターとしてNebulaBooster NB1などを使うと、光路長はさらに0.8mmも伸びます。
実際、この組み合わせで撮ると、周辺部の星が細長く伸びているのがハッキリ分かります。しかし、幸い撮影対象は視直径が小さいものが多いのでトリミングで回避できますし、代替手段もないので、これで撮影していました。
ASI2600MC Proとの接続方法を考える
ASI2600MC Proでオフアキシスガイダーを使うにあたって、一番素直な方法は、デジカメをASI2600MC Proでそのまま置き換える方法です。ZWOではEOSシステムでカメラをそのまま使えるよう、「EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用」というものを販売しています。これを組み込んでデジカメと置き換えると、以下のようになります。
フィルターを使わない場合の光路長は
SCTアダプター | 25.3mm |
オフアキシスガイダー本体 | 29mm |
M42(オス)Tマウント用カメラアダプター | 12.5mm |
TスレッドスペーサーリングB | 11.55mm |
Tリング(N) キヤノンEOS用 | 10.8mm |
EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用 | 26.5mm |
ASI2600MC Pro | 17.5mm |
計 | 133.15mm |
φ52mmのフィルターを使う場合は
SCTアダプター | 25.3mm |
オフアキシスガイダー本体 | 29mm |
M42(オス)Tマウント用カメラアダプター | 12.5mm |
M42P0.75→M57AD【7528】 | 8mm |
フィルターBOXn【7519】 | 15mm |
M57→M49.8ADSS【7923】 | 0mm |
EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用 | 26.5mm |
ASI2600MC Pro | 17.5mm |
計 | 144.6mm |
といった具合です。
なお「EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用」は前後二分割できて、そのうちのカメラ側リングの内部にφ48mmのフィルターを装着できるよう溝が切ってあります。ステップアップリングを使えばφ52mmのフィルターを付けられるので、これを使えば長すぎる光路長を短縮できるのでは……と言いたいところですが、内径がぎりぎりのため、これをやってしまうとマウント側のパーツがねじ込めなくなってしまい事実上使えません。
マウントアダプターの怪
ともあれ、これで一件落着……と思ったのですが、ふと思い立ってパーツの寸法を実測してみたところ……
……!?
なんと、「EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用」のサイズが違います。公称値だと26.5mmあったはず……。
www.kyoei-tokyo.jp
この件をTwitterでつぶやいたところ、同じサイズの人や「26mmあった」という人、中には公称値通り26.5mmだったと言う人まで現れる始末。わけが分からないよ
どうやら、フィルターが入ることをある程度想定してなのか、やや短めの長さを標準に作られていて*1、光路延長が必要な場合は同梱のシムリングで調整しろということだったようです。今さらながらシムリングの意味が分かりましたが……さすがにちょっと雑すぎやしませんかね、これ?*2 *3
とりあえずウチの場合、上記の光路長はそれぞれ0.7mmほど短くなるわけです。フィルター厚みによる光路長延長分がほぼ相殺されるのは不幸中の幸いですが……。
ASI2600MC Proとの接続方法再考
さて、ひとまずカメラがシステムに繋がることは確認できたわけですが、このカメラの場合、そもそもEOSマウントにこだわる必要はありません。パーツをうまく組み合わせれば、光路長超過の状態を解消できるかもしれません。
これについては、実は勝算が1つありました。「EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用」のカメラ側リング内部にフィルターが装着できることは上で書きましたが、一方、このリングとマウント側パーツの接続はM60のねじ込みになっています。そして、ボーグの延長筒にはM60のネジ山が。さらに、ボーグの延長筒はマウント側パーツより肉薄……。
そう、実は「EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用」のカメラ側リングにφ52mmのフィルターを装着した状態で、ボーグの延長筒をねじ込むことができるのです。
こうなれば、あとは簡単。電卓片手に手元ののパーツを取っ換え引っ換えして……こうだ!
オフアキの直後でM42を一旦M57に変換、ボーグの延長筒経由で「EOS-EFマウントアダプターII・ASIカメラ全般用」のカメラ側リングに繋いだ後、マウントアダプター付属の延長リングおよびオフアキ付属のスペーサーリングで光路長を稼いでいます。
SCTアダプター | 25.3mm |
オフアキシスガイダー本体 | 29mm |
M42(オス)Tマウント用カメラアダプター | 12.5mm |
M42P0.75→M57AD【7528】 | 8mm |
M57/60延長筒S【7602】 +ZWO EOS-EFマウントアダプターII後部 | 29.5mm |
延長リング | 5mm |
TスレッドスペーサーリングA | 6mm |
ASI2600MC Pro | 17.5mm |
計 | 132.8mm |
機械的な光路長はこんな感じで、ここにフィルターを入れると0.5~0.8mmほど光路長が伸びることになります。これで、おおむね光路長133mmを達成できたことになります。
なお、M57/60延長筒S【7602】については、カメラ側リングにねじ込めるだけねじ込んでありますが、カメラ側リングのサイズや切られたネジの長さに不確定要素があるので、もしこの接続を真似しようという場合は、光路長を実測することをお勧めしておきます。
ちなみにオートガイダー側ですが、ビクセンの「接眼アダプター 42T→31.7AD SX」を装着した上で、StarlightXpressのLodestarを適当な深さまで突っ込んであります。Lodestar本体には安物の31.7mm接眼アダプターが別途ストッパー代わりに固定してあって、そこまで突っ込めばピントが合うようにしてあります。オートガイダー自体はそれなりに古いですが、筐体が31.7mmサイズで前後の調節がしやすい上、センサー面積も1/2型と比較的大きいため、オフアキ用として便利です。