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「恋する小惑星」を検証してみた 第12話【最終回】

3か月間追いかけてきた「恋アス」も、ついに最終回を迎えました。この検証記事のシリーズも今回がラスト。第11話から引き続き、濃い天文ネタが満載ですが、気合を入れていきましょう。今回も長いです(^^;



「きら星チャレンジ」2日目の昼は勉強会からスタート。小惑星についての教科書を輪読しています。


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後ろの黒板、ホワイトボードには色々と書かれていますが、気になったので内容を起こしてみました。まずはホワイトボードの方から。



研究の目的は?

・まず何をするか
 太陽系小天体の探査
 この研究をして何が面白い?
 
 太陽系の成り立ちを知る手がかりとなるため
 
 →小惑星を検出し小惑星帯の知見を広げる


背景

これまで80万の小惑星が確認されている
しかしながら暗い小惑星はまだたくさんある

 →小惑星を我々で発見しよう!
  その特徴を調べて性質を探る

これは今回の「きら星チャレンジ」の大目的ですね。地上から普通に観察する限り、小惑星は単に「動く光の点」にしかすぎませんが、例えば反射光のスペクトルを分析すれば表面の組成が分かりますし、光度変化や掩蔽*1の観測をすれば形についての情報が得られます。


こうした情報を積み重ねることで、小惑星帯がどうやって形成されたか、さらには惑星がどのようにして形成されたか、太陽系がどのようにして今のような姿になったのかの謎を解く手がかりとなるのです。


次に黒板の内容です。



小惑星
不規則な形をした岩石上の天体
100kmより小さいものが多い
ケレス→小惑星の中で最大!!
大きさ…約950km


大きさが大きい程引力が強いので球形に近い


ケレス 約950km
イトカワ 約500m

1段目は小惑星についての基礎の基礎、小惑星とは何か、です。


板書にあるとおり、小惑星は岩石状の小天体で、最大のケレスでさえ直径約950km。地球の月(直径3474.3km)の1/3以下のサイズしかありません。それでもケレスはある程度の大きさを持っているため、自身の重力でまだ球状の惑星っぽい姿をしていますが、それ以外のものは重力が弱いために球状の形にまとまることができず、不規則な形をしています。ラッコのようなイトカワの姿を覚えている方も多いでしょう。小惑星は全体で80万個近くあります*2が、直径100kmを超える小惑星は220個しかなく、ほとんどは直径数百m~数kmの小天体です。


なお、ケレスは2006年8月の国際天文学連合(IAU)での決議*3により「準惑星」として分類されなおしましたが、これを依然として「小惑星」として扱っていいのかどうかは議論があります。もしケレスを「準惑星」として扱うのであれば、最大の小惑星は(2)パラス(582×556×500km)になります。



・多くは誕生時の熱で溶けた経験がない
・風雨はないが宇宙風化で表面の性質は変化する
・太陽系のタイムカプセル

2段目は、小惑星を調べると何が分かるかについてです。


小惑星は、これまでの様々な調査より、そのほとんどが高温にさらされた経験がないことが分かっています。昔は「小惑星は何らかの原因で砕かれた惑星の残骸である」という説があったのですが、惑星が砕けたものなら核やマントルで高温にさらされた痕跡があるはずです。しかし、そうしたものがないことから、現在では「太陽系形成時に惑星になり切れなかったもの」と見られています。逆に言うと、太陽系形成時の情報がほぼそのまま残っていると考えられるのです。


とはいえ、小惑星の表面は太陽風宇宙線に晒されて様々な変化をしている(宇宙風化)ため、太陽系誕生時の姿そのまま、というわけではありません*4。余談ですが、はやぶさ2が弾丸を打ち込んで小惑星内部のサンプルを採取したのはまさにこれが理由で、宇宙風化を受けていないサンプルを分析することで、きっと太陽系誕生についての様々な情報を得ることができると思います。



※名前の付いた小惑星
 ↑
(約52万)確定番号の小惑星(正確な軌道確定)
 ↑ (5年以上)
(約25万)仮符号の小惑星(一晩で数回の位置観測 二夜以上)

合計78万個


命名のルール
発見者が名前を提案

3段目は小惑星命名について。


小惑星を発見したと思ったら、その情報を国際天文学連合(IAU)の下部組織の小惑星センター(MPC: Minor Planet Center)というところに送ります。そして、2夜以上の観測が行われて軌道がある程度決まると、発見した年月を元に「仮符号」というものが発行されます。仮符号が発行されている小惑星の数は、2018年現在、約25万個です。


そして、その後観測を重ねて軌道の精度が十分に高まると「確定番号」(小惑星番号)が与えられます。確定番号が発行された小惑星は2018年現在、約50万個に達します。


なお、板書には「確定番号」への矢印のわきに(5年以上)と書かれています。基本的には、小惑星については4回以上の衝で観測が行われて十分な軌道の精度が出せ、10年後の予報誤差が角度にして19.6秒角以下になった時に確定番号が与えられる*5 *6のですが、小惑星帯小惑星の公転周期は4~6年程度あるので、4回以上の衝を観測するには最短でも5年近くかかってしまうのです。


ここまでくると、ようやく小惑星に名前を付けることができます。小惑星は、太陽系の天体で唯一、発見者が自由に*7名前を付けられる天体で、それが長いことアマチュアを引き付けてきた理由でもあります。


ただ、最近は全自動掃天システムによって発見される小惑星が激増していて、命名がまったく追いついていません。理屈としては、命名の権利はプロジェクトの実施担当者にあるのですが、対象の数が多すぎるので彼らが名前をつけることはあまりなく、命名者が発見者に対して名前をつけることを要請して命名されることがほとんどです*8



性質
90~95%は小惑星帯
(火星と木星の軌道の間)


大部分は主要な惑星よりも高い離心率と軌道傾斜角を持つ
               ↓
              どちらかというと楕円形

e = √(a^2 - b^2) / a  e=0:円

4段目は小惑星の性質について。


今までのところ、小惑星は大半が火星軌道と木星軌道の間の「小惑星帯」で発見されています。そしてその軌道ですが、主要な惑星よりも高い離心率*9と軌道傾斜角*10を持つことが知られています。


例えば離心率ですが、惑星で最も大きいのは水星の0.20564、次いで火星の0.09342です。しかし小惑星帯小惑星の場合、下の図*11のように0.25を超えるのはザラです(横軸がおおむね2~4 auの範囲が小惑星帯に当たります)。


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また軌道傾斜角についても、惑星は水星が約7度と大きいものの、それ以外は4度以下に収まっています。しかし、小惑星帯小惑星は、下の図に示すように10度以上のものも多いのです。


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ともりん小惑星のスペクトルは、普通コンドライト、炭素型コンドライトにそれぞれ対応するS型、C型などがあり…って、なにそれ?』
マッキー小惑星の光を分析すると、主な成分が分かるってこと』
ともりん『へぇ~、小惑星にも種類があるんだねぇ』
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花島『例えば、はやぶさが行ったイトカワは岩石質のS型、はやぶさ2が目指しているリュウグウは炭素質のC型だね』
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いやいやいや。小惑星のスペクトル分類とか、コンドライトとか、こんなゴリゴリの専門用語を一切の注釈なしに放り込んでくるアニメは初めて見たよ!(笑) これは説明が必要ですね(^^;


小惑星は太陽の光を受けて輝いているわけですが、この反射してきた光の色成分を分析することで、小惑星の表面の様子が色々と分かってきます。これが小惑星のスペクトル分析です。


例えば、反射光に赤い光が多ければ、小惑星の表面に赤っぽい物質が多いことが分かりますし、反射光がものすごく暗ければ、表面は黒っぽい物質で覆われているのだろうということが分かります。また、ある物質に特徴的な光の吸収が見られれば、小惑星表面にその物質が存在することの証拠になります。


そして、このスペクトルの特徴によって、小惑星はS型、C型などいくつかのグループに分類されるのです。


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小惑星の代表的なスペクトル型
http://astro-dic.jp/spectral-type-2/より)


一方、地球に落ちてくる隕石はその多くが小惑星帯由来だと考えられていますが、これらについては、その成分によって石質隕石、鉄隕石、石鉄隕石などに分けられるのは第5話の検証記事で書いた通りです。
hpn.hatenablog.com


このうち、小惑星帯由来の石質隕石については、さらにその成分により普通コンドライト石質隕石の92%)、炭素質コンドライト(同5%)などに分類されます。コンドライトというのは「コンドルール」という隕石特有の球状の粒子を含む岩石のことで、普通コンドライトはその名の通りコンドライトとしてもっとも普通のもの、炭素質コンドライトは色々な化合物や有機物の形で炭素原子を含むものをいいます。


そして、これらの隕石との比較により、スペクトルによる小惑星の分類と隕石の分類とを紐づけることができました。


現在では、S型小惑星が普通コンドライトC型小惑星が炭素質コンドライトにそれぞれ対応することが分かっています。


なお、C型小惑星には、太陽系が生まれた当時の星間物質の元素組成の情報が含まれると考えられていて、アミノ酸脂肪酸といった生命活動に欠かせない分子も含まれている可能性があります。その意味で、C型小惑星をターゲットとした「はやぶさ2」には大きな期待がかけられているのです。



ちなみに、花島さんが手にしているのは、イトカワリュウグウの3D模型。これを出力した3Dプリンタは冒頭にちょこっとだけ写っていました。


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PCの脇にある黒いボックスがそれ。手前にはイトカワリュウグウの3D模型が置かれています。ボタンの配置などから、機種はおそらくXYZプリンティングの「ダヴィンチ 1.0 Pro」がモデルでしょう。同社の製品は価格が手ごろで、一般向けとして最も売れている3Dプリンタの1つです。
https://www.xyzprinting.com/ja-JP/product/da-vinci-pro


なお、イトカワリュウグウの3DデータはJAXANASAによって公開されていて、3Dプリンタさえあれば誰でも模型を出力することができます。
darts.isas.jaxa.jp
nasa3d.arc.nasa.gov
planetarium.jp




夜が更けると、いよいよ2度目の小惑星探索開始です。


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天文台の外の星空はおそらく21時ごろのもの。石垣島らしく、みなみのかんむり座やぼうえんきょう座などの南天の星座が、かなりの高さにまで昇っていることに注目です。


その後、小惑星の撮影の合間にみんなで屋上に出て、星空を観望します。


あお『あ、火星すごい!』
マッキー『今年は大接近の年だもんね。今、-2.5等くらいかな』
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2018年は火星の大接近の年でした。火星は約2年2か月ごとに地球に接近するので、このときが観測のチャンスなのですが、火星の軌道はかなりつぶれた楕円のため、軌道のどこで地球と接近したかによって地球との距離が大きく変わります。いわゆる「大接近」と呼ばれるような接近の時は地球に5600万km程度まで近づくのに対し、「小接近」では1億km以上も離れていて、見掛けの大きさは2倍ほども違います。


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2018年の大接近はかなり条件が良く、最接近時の地球-火星間の距離は5759万kmでした。ここまで接近するのは2003年以来で、次に同レベル以上の接近を見るには2035年9月まで待たなければなりません。


2018年は最接近が7月31日で、この時の明るさは-2.8等、視直径が24.3秒角(木星の半分程度)にもなりました。ところが、普段なら表面模様の観測に絶好の機会なのですが、この時は火星の表面で大砂嵐が起き、下の写真のようにうっすらとしか模様を確認することができませんでした。しかも、火星はいて座~やぎ座の付近の低空にあり、大気の揺らぎの影響もあって実際の観測条件は決して良くありませんでした。


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2018年8月1日0時22分20秒(日本時間)
セレストロンEdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm) SXP赤道儀
L画像:ZWO ASI290MM, 10ms, 4500フレームをスタック
RGB画像:ZWO ASI290MC, 30ms, 1500フレームをスタック


石垣島ぐらい南まで行くと火星の高度は上がりますし、そもそもの大気の揺らぎも小さいので、きっといい条件で火星の表面を観測できたのではないかと思います。


ともりん『あ、流れ星!』
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西空ですね。沈みゆく春の星座が見えています。星図と照らし合わせると22時ごろでしょうか。21時ごろから集合、撮影を開始したとして、1領域のひと揃いの撮影にかかる時間が30分ですから時間的に矛盾はありません。


8月中旬ですから、この時期の流星というとペルセウス座流星群を連想したくなりますが、残念ながらこの流星は流星群とは関係のない「散在流星」のようです。もしペルセウス座流星群であれば、かみのけ座~うしかい座の方からおとめ座~てんびん座の方へと飛んでくるはずです*12


西空を左から右へと横切ったのを考えると「やぎ座α流星群」(出現期間:7/10~8/25 極大日:7/30)や「みずがめ座δ南流星群」(出現期間:7/15~8/20 極大日:7/30)も考えられなくはないですが、西空ではもう少し上から下へと角度がついて流れるはずで、やはり流星の経路が合いません。


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一方、反対の東の空には、すでに秋の星座が昇ってきています。こちらでも流星が一瞬流れるのですが、経路を見ると、こちらは散在流星ではなく「やぎ座α流星群」の流星のようです*13。やぎ座α流星群は、極大時でも1時間当たりの出現数が3個ほどと小規模な流星群ですが、ゆっくりと流れ、また時折、火球めいた明るい流星が流れるのが特徴です。さらりとこんなマイナーな流星群を、活動期間中の放射点の移動を考慮し、しかも極大日から外して放り込んでくるあたり、本作のスタッフは相変わらず油断がなりません(^^;


みら『うーん…』
あお『新しいものはなさそうだね』
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マッキー『今度の領域はどう?』
ともりん『はぁ…ないねぇ…』
みら『こっちも既知のものしかない…』
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小惑星の探索を続けるみら達ですが、目指す新小惑星はなかなか見つかりません。


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位置としては、1枚目が赤経21h30m01s, 赤緯-15度03分25秒付近、2枚目が赤経21h32m13s, 赤緯-15度33分32秒付近。黄経で言うといずれも320度近辺になります。この時期の太陽の位置は、11話後半の検証記事で書いた通り黄経141度近辺ですから、やはり衝の位置を探索し続けていることになります。


花島『条件は悪くないから、あとは根性と運かな』
みら『運…ですか』
花島小惑星は自転してるし、いびつなものが多いから、角度によっては急に明るく見えたりもするんだよ』
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花島さんの言う通り、小惑星は自転の具合によって急に明るくなることがあります。


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https://darts.isas.jaxa.jp/planet/project/hayabusa/shape_ja.plより)

例えば、上の図はイトカワを別の方向から眺めたものですが、どちらの面が向いているかによって反射面の大きさ、すなわち明るさが大きく変わるのが分かると思います。



結局、残念ながら新天体発見とはいかず、翌日の結果発表会の資料作りに進みます。


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むりかぶし望遠鏡の撮影装置については、11話後半の検証記事に書いた通りです。資料にg', Rc, Icのフィルターがついていると書いてあるところを見る限り、やはり「MITSuME 3色同時撮像カメラ」を撮影に用いたようです。


ここで、あおが『むりかぶしの写真なら撮ってある』と言うので、てっきりスバルの写真を撮ったのかと思いましたが、「むりかぶし望遠鏡」のことでした(^^;


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実はこの時間……おそらく15日の4時ごろと思われますが、外には「むりかぶし」ことスバル(プレアデス星団、M45)がかなりの高さにまで昇ってきていたのです。



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徹夜で資料作りを行った面々は、結果発表会に臨みます。光学班、電波班ともに新天体発見には至りませんでした*14が、何度か触れられていた通り、「発見できなかった」ということも立派な結果。胸を張ってよいと思います。




みら達が帰郷後は、地学部の面々が集まって「おかえりなさい会」&屋上で観望会です。


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あおのカメラは、軍艦部~ダイヤル部が斜めにカットされている形状から見て、おそらく富士フイルムのX100Fがモデルでしょう。2430万画素のAPS-Cセンサーに23mmF2のレンズ(35mm判換算で35mm相当)を組み合わせた、高級コンパクトデジカメです。
fujifilm-x.com


富士フイルムのカメラは一般に、赤い散光星雲の写りがいいことで知られていますし、レンズのF値も明るいので、天体写真にはうってつけです。ただし、コンデジといえども「高級」の名に恥じず、2017年の初値で15万円前後、2018年時点でも実売価格は12~3万円と、なかなかいい値段がします。高校生のあおがポンと気軽に出せる金額でもないので、親からの借り物かもしれません。



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月の欠け具合などを見ると、この日は8月17日のようです。直前に、ともりんから『星まつりでナマねおんに会えたよ!!!!』とメッセージが来ているのですが、星まつりのモデルである2018年の「南の島の星まつり」では、11話後半の検証記事に書いた通り、ライブは18日の土曜日に開催です。おそらく作中の「石垣島星祭り」では当日金曜日にでもライブが行われたのでしょう。



みら木星の導入、終わりました!』
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最初の頃はもっぱら見せてもらう側で、望遠鏡の操作すらおぼつかなかったみらが、ちゃんと木星を導入できています。1年間でのみらの成長が実感できるいいシーンです。



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石垣島で高く昇っていた、みなみのかんむり座やぼうえんきょう座は地平線上すれすれに。川越との緯度の違いを感じます。ぼうえんきょう座は高度10度以下で、全体を見ることすらできません。



ナナ『しましま…』
あお『うん。今日は衛星が4つ見えるね』
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衛星の位置からすると、どうやら20時ごろのようです。『衛星が4つ』というのは、第2話の検証記事でも触れた「ガリレオ衛星」のことです。衛星の位置によっては、木星の影に隠れてしまって全部が見られないこともある*15のですが、この日は4つ全部がちゃんと確認できました。



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みんなで空を見上げるラストシーン。第1話冒頭の、みらとあおが木星を見上げながら小惑星の発見を誓うシーンから移り変わっていく演出を見ると、始めは二人だけの漠然とした約束だったのが、いつの間にか多くの人を巻き込んで、明確になったそれぞれの夢、目標に向かって進んでゆく……という風に変化していったのかなと感じさせます。




と、これでこの記事も最後です。ちょうど最終回と同じタイミングで、第11話に出てきたVERAが予算カットにより前倒しで運用停止、という残念なニュースも飛び込んできましたが、「恋アス」に触れていなければ、ここまで残念な気持ちにもならなかったでしょう。


幸い、こちらの検証記事も、思った以上に多くの人に読んでもらえていたようです。その意味でも、確実に天文・地学への興味を引き出すのに貢献した作品だったのかなと思います。折あしく、コロナウイルスの影響で各種の施設が閉まっていたり、コミケが中止になったりと逆風も多いのですが、天文などは長く続けることのできる趣味ですし、1人でも多くの人が夜空や地面にちょっとでも目を向けてもらえればと思います。


そして原作者のQuro先生、スタッフの皆様、素敵な作品をありがとうございました。


うつむいた先にも
見上げてる先にも
きっと未来は待っているよ
だから歩いていこう

   OP「歩いていこう!」
   (作詞・作曲:川嶋あい 編曲:伊賀拓郎 唄:東山奈央




※ 本ページでは比較研究目的で作中画像を使用していますが、作中画像の著作権は©Quro・芳文社/星咲高校地学部に帰属しています。また、各星図はステラナビゲータ11/株式会社アストロアーツを用いて作成しています。

*1:小惑星などの天体が恒星を隠す現象。恒星が隠れたタイミングや、隠れていた長さを複数の場所で観測することで、小惑星のおおよその形が分かります。

*2:2018年当時

*3:冥王星を惑星から外した決議。このとき、「準惑星」というカテゴリも新設されました。

*4:つい先日、イトカワのサンプルから、ひげ状の金属鉄の結晶が見つかりましたが、これも宇宙風化の一例です。https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11149_itokawa

*5:https://www.minorplanetcenter.net/iau/info/Astrometry.html#number

*6:https://www.minorplanetcenter.net/iau/info/UValue.html

*7:他の天体と重複しない、人名については、その個人が政治家、あるいは軍人である場合、死後100年以上経過している、などいくつかのルールはあります。https://minorplanetcenter.net/iau/info/HowNamed.html

*8:例えばイトカワの場合、発見したのは全自動掃天システムの1つLINEAR(Lincoln Near-Earth Asteroid Research)ですが、小惑星探査衛星「はやぶさ」を打ち上げた宇宙科学研究所がこのチームを通してIAUに申請し、名前が認められています。

*9:軌道がどれだけ円に近いかを示す。この数字が0の場合が真円で、大きくなるほど楕円に、そして1の場合が放物線となる。1以上だと双曲線であることを示す。板書にあるe = √(a^2 - b^2) / aという式が求め方。

*10:黄道面に対して軌道がどれだけ傾いているかを示す。

*11:https://www.rpubs.com/MHE/Asteroids_JPLより。次の図も同様。

*12:そもそも放射点のほぼ反対側ですので、その意味でも考えづらいです。

*13:やぎ座α流星群の放射点は、出現期間中に東へと移動していきます。図に示したのは8月14日時点の放射点の位置です。

*14:モデルとなっている「美ら星研究体験隊」でも、2018年度は新天体の発見はありませんでした。

*15:実際、第2話では衛星が3つしか見えませんでした。