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現代ファインダー考

この三連休、晴れ間が広がったこともあって、惑星状星雲狙いで毎晩望遠鏡をスタンバイしていたのですが、結果的にはセッティング中に雲が全天に広がってしまい、一度も撮影にまで至ることが出来ませんでした。

しかしその過程で、先日購入したSkyWatcherの9×50 正立ファインダーを実戦投入できましたので、その感想などを。


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まず、EdgeHD800への正立ファインダーの取り付けですが、国際光器の「オリジナル・ファインダー・クランプ」を用いました。国際光器のオンラインストアでは4800円(税込5184円)で販売されていますが、協栄産業ではなぜか3519円(税込3800円)で販売されていたので、こちらで購入しました。

このクランプは底面にRがついていて、鏡筒の丸みにうまくフィットするようになっています。また、後縁にくぼみがあるのも重要な点。ビクセンやSkyWatcherのファインダー脚底部には位置決めのためにもれなく突起がついているのですが、これとくぼみがかみ合うようになっています。安価なクランプには後縁が直線状になっているものも少なくないので要注意です。

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EdheHD800にファインダーを取り付けた様子です。脚がやや長すぎるきらいはありますが、それほど大きな違和感はありません。基本的に、正立プリズム部分のみを回転させることはできず*1、回転が必要な場合にはファインダー本体を回転させる必要があります。しかし、初期状態で鏡筒本体の反対側を向くようになっているので、通常は回転させる必要はないでしょう。

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ファインダー内のパターンは上の写真の通り。十字線はやや太めです。とはいえ、EdgeHD800に元々ついていたファインダーと同程度……というか、全く同じと思われる*2ので、実用には十分です。

実際の使い勝手ですが、直視型のファインダーと比べると覗きやすさは段違いです。特に、天頂付近の天体を捉える場合には恩恵を強く感じます。

現代のファインダーに求められるもの

現在、望遠鏡に付属しているファインダーは直視型が大半です。屈折望遠鏡などでは天頂プリズムを使うのがほぼ当たり前になっているのに、ファインダーが直視型になっているのには理由があります。

ファインダーを使うときは、まず肉眼で目標を捉えてから、その方向に望遠鏡を向けてファインダー視野内に目標を捉えます。この操作が直視型だと圧倒的にやりやすいのです。ベテランになると、片眼で目標を直接見ながら、もう一方の眼でファインダー内を覗き、両眼視の要領で目標の像が一致するように望遠鏡を動かして目標を導入する、ということをします。こうしたことは、直視型でなければ不可能です。


しかし、これは天体を手動で導入するときの話です。現在の赤道儀は大半が自動導入機能付きで、ファインダーはアライメント時に目標の星を導入するくらいにしか使いません。今時の自動導入機は高性能で、極軸さえ合わせてあればアライメントの最初の段階から、アライメント対象の星はファインダー視野内にだいたい入ってくれます。この場合、上記のようなアナログ的手法は全く不要です。だとすれば、お世辞にも覗きやすいとは言えない直視型を採用する意味はあまりないように思います。

さらに言えば、アライメント対象になるような1~2等星が見えればいいだけなら、最近流行気味の大口径ファインダーすら不要ということになります。


自動導入機のファインダーであれば、口径を欲張らずに2~3cmにとどめ、天頂プリズム・ミラーや正立プリズムを用いた直角視型にした方が、より望ましいように思います。*3


部品が増える分高価になりそうですが、例えばジズコの以下のページにまとめられている米オライオン社のファインダーを見ると、8×40の直視型ファインダーが税込10044円、9×50の直視型ファインダーが税込11880円なのに対し、6×30 90度正立ファインダーは税込9720円でむしろ安くなっています。

www.zizco.jp


大きいファインダーがついているとハッタリが利く一面もある*4ので、メーカーとしては止めづらいのかもしれませんが、現在の自動導入機における実用性を考えたら、もっと積極的に直角視型を導入してほしいものです。もしハッタリ優先で使い勝手が犠牲になっているのだとしたら、本末転倒もいいところです。

*1:プリズムを含めた接眼部は鏡筒にねじ込まれているだけなので、これを丸ごと緩めることで回せないことはありません。しかし緩んだ接眼部を固定する方法がないですし、あまりお勧めできません。

*2:セレストロンの親会社はSYNTAなので、同じでも全く不思議はありません。

*3:もっとも、ZWOのASIAIRに代表されるようにPlate solvingも徐々に敷居が下がってきており、写真用途に限れば早晩ファインダー自体がいらなくなる未来が来そうな気もします。

*4:ハッタリがすべてとは言いませんが、例えばセレストロンのC8では6×30のファインダーが付属する一方、同口径の上位ラインであるEdgeHD800には9×50のファインダーが付属しています。鏡筒自体はほぼ同スペックなのにこうした差をつけているあたり、ハッタリの要素がないとは言い切れないように思います。