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今年の天体写真振り返り

にゃあさんに先を越されてしまいましたが、こちらでも今年撮った写真を振り返っておこうかと思います。*1

今年は、昨年始めた「低感度&長時間露出撮影法」と「RGB分割フラット補正」が完成に近づくとともに、都心での「淡さへのチャレンジ」が本格化した年でした。

1月

今年は、オフアキシスガイダーを利用したEdgeHD800での撮影で幕を開けました。

EdgeHD800は、ミラークラッチが備わっているためミラーシフトがない……ということになっているのですが、どうも完全には抑えきれていないようで、常に星像の「流れ」に悩まされていました。

そこで昨年、オフアキシスガイダーを導入。今年から長時間露出に本格投入するようになりました。


結果は明白で、安定したガイドが可能になった結果、安心して長時間露出が行えるようになりました。「小亜鈴状星雲」M76の淡い「耳」の部分を無理せず写せるようになったのはこのおかげです。



2月

「低感度&長時間露出」の撮り方だと、電力消費が多い分、カメラのバッテリーをたびたび交換する必要があり、撮影に集中できませんでした。

そこで、シールドバッテリーと降圧可変型DC-DCコンバータを使ってカメラを外部電源化。電源の心配を事実上しなくてよくなったため、安心して撮影に専念できるようになりました。「黒眼銀河」M64は、前記のオフアキと外部電源化の恩恵を受けた1枚です。



3月

この月は引き続き銀河がメインの被写体。とはいえ、ただでさえ酷い光害が春霞でさらに悪化して、かなり苦戦を強いられました。「子持ち銀河」M51は、捉えこそしたものの周辺の淡い領域を炙り出すには至らず。散光星雲などと異なり、銀河は特徴的な色を持たないため、色を手掛かりにして強調処理を行うことはできません。

都心でこれなら上出来ともいえますが、個人的にはもう一息何とかしたいところです。




また、3月23日には金星が内合を迎えましたが、内合に向けて地球に接近する様子を昼間の撮影で捉えました。内合が近づくにつれてどんどん大きく、細くなっていくのがハッキリわかってなかなか面白いものです。



4月

3月中旬以降は天気の悪い日が続き、本格撮影できたのは4月28〜29日の夜のみ。しかしこのとき撮った「オメガ星雲」M17は、IC1407を含め周囲の淡いガスまで炙り出すことができ、まずまずの写りかと。しかし一方で、明暗差が非常に大きい領域で、きれいに表現するのが難しいとも感じました。




「天文リフレクション」さんに捕捉されたのもこのころで、4月19日付の記事で、見事「ド変態」のお墨付きを頂きました(^^;

5月

5月もなかなか天気に恵まれませんでしたが、そんな中で木星は好シーイングに恵まれ、今までで一番の写りになりました。惑星の画像処理に慣れてきたこともあるかと思います。



6月

1月に購入したOPTOLONGの「CLS-CCD for EOS APS-C」フィルターを初投入。網状星雲の東側領域NGC6992-5を狙ってみたところ、期待通りなかなかコントラストの高い写りになりました。元画像のコントラストが比較的高い分、画像処理も比較的楽で、被写体を選べばなかなか有効なフィルターだと感じました。



7月

昨年購入したものの、使いこなすに至らなかったZWOのADC(Atmospheric Dispersion Corrector, 大気分散補正用可変ウェッジプリズム)を投入して土星を撮影しました。今まで撮った中ではかなりいい写り。

ようやくADCのセッティングの勘所も分かって、効果を実感できるようになりましたが、一方でカラーカメラであるASI120MCの性能(主に感度面)の限界もあらわになった感じです。



8月

好天の夜が少なかったので、自宅前でも短時間で撮影できる惑星状星雲の撮影に注力しました。こちらは、普段の撮影方法とは好対照の「短時間露出・多数枚撮影」で、ウェーブレット処理による高解像度化を狙った撮り方をしています。

特に「キャッツアイ星雲」NGC6543は、複雑な構造をハッキリと捉えることができました。



9月

6月に買った「BORG55FL+レデューサー7880セット」がファーストライトを迎えましたが、ピント合わせの難しさを痛感することに。このとき撮った「ハート星雲」+「胎児星雲」(IC1805, IC1848)は微妙にピントを外しているので、機会があれば撮り直ししたいところです。




そして、この55FLに好適な対象が淡い散光星雲ばかりということで、このあたりから「淡さへのチャレンジ」がエスカレートしてきます(^^;

10月

秋晴れからほど遠い曇りや雨ばかりの天気でしたが、辛うじて9月30日〜10月1日に出撃して、55FLを使って「勾玉星雲」IC405を撮影。前月のピント合わせの問題もクリアして、ようやく55FLが実用域に達した感じがします。



11月

11月後半になってようやく晴れの天気が安定し、撮影がはかどるように。

まずは55FLを用いて、これまた淡いIC1398を。撮った時は、おそらくこのあたりがこの撮影環境&自分の技術で撮れる限界に近いのじゃないかと思っていたのですが……。




そして、おそらく今年のベストショットである「オリオン大星雲」もこの月。東京都心のド真ん中で分子雲まで表現できたというのは、個人的にもかなりの衝撃でした。まさに「低感度&長時間露出撮影法」のおかげかと思います。



12月

そして今月、クリスマスツリー星団周辺を撮ったあたりで「都心で淡いものチャレンジ」の極北に近いところまでいった感が。現在使用中のカメラ(EOS KissX5 SEO-SP3)の性能をほぼ限界まで引き出し切ったのじゃないかという感触があります。




次のステップに進みたい気もするのですが、一方で限界ギリギリを攻め続けるのもなかなかしんどいので撮りやすい天体に回帰したい気もあり……この先どうしたものか、ちょっと考えてしまうところではあります。

ともあれ、来年はまた色々な工夫をしつつ、さらにいい写真をモノにしたいと思います。もちろん東京都心から(^^;

*1:Twitterの方で先に「今年の4枚」を出してた(https://twitter.com/hiropon_hp2/status/946010786207379456)のでいいかとも思ったのですが、のちのち振り返るのにブログの方が便利ですし、記録の意味も兼ねて。