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「冷却カメラ」補足

先日の冷却カメラの記事についての補足です。

フルウェルキャパシティとADコンバータのビット数について

イメージセンサーは、画素に入射した光を電子に置き換えて蓄積しますが、ピクセルあたりに蓄積できる電子の容量(数)を「フルウェルキャパシティ」といいます。フルウェルキャパシティはおおよそピクセルの面積に比例します。

そして、ピクセルごとに蓄積された電子はコンデンサに移され、ここで発生した電圧(電子数に比例します)をADコンバータでアナログ-デジタル変換し、データを読み出しています。この変換の際、電圧をどの程度の細かさで読み取ってデジタル信号に変換するかを示すのが「ADコンバータのビット数」です。

12bitなら4096段階、14bitなら16384段階、16bitなら65536段階の細かさで電圧を読み取ることになります。つまり、ビット数が大きいほど、わずかな電圧変化=電子数の差=光強度の差をシグナルとして抽出することができるということになります。

ここで、たとえばフルウェルキャパシティ=256e-のセンサーがあったとすると、ADコンバータのビット数が8bit(=256段階)あれば、ちょうど電子1個の差を検出できることになります*1。このセンサーに対して16bit(65536段階)で変換しても、電子数は整数なので無駄が出ますし、逆に4bit(=16段階)ではせっかくのセンサーの性能を生かし切れません。

耐光害性能について

ノイズがある程度以上あると、ADコンバータのビット数が高くても無駄……というところですが、一面では真実でしょう。ただ、コンポジットによってS/N比が上がってくると、コンバータの精度の差が出てくる場面もあるかと思います。

「ビット数が高いから細かい明暗も検出できる」というほど単純な話ではないですが、上記のような状況、あるいは後述するようにビニング時には、ビット数が意味を持つ場面も出てくるはず。多少の余裕は見ておきたいところです。

*1:ここではノイズはないものと仮定します。