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久々の出撃

上記のフラットナーを買ったのが7月頭ですが、梅雨に加え、夜になると雲が湧き出す関東特有の悪天候に悩まされ、さらに週末に限って悪天候という巡りの悪さも重なって出撃の機会がなかなかありませんでした。

しかし、9日の夜は久々の快晴。というわけで、いつもの公園に久々に出撃です。



西の空には立派な入道雲が立ち上がっていたので雷雨を警戒したのですが、幸い都心の方には来ませんでした(青梅、奥多摩方面で雷雨だったようです)。

この夜は、夏のこの時期にしては比較的空の透明度が高く、さそり座の主要な星々がほぼすべて見えていました。天頂付近に昇ったはくちょう座アルビレオ(3.05等)や、こと座のスラファト(3.25等)も肉眼で見えたことを考えると、限界等級は天頂付近で3.3〜3.4等といったところでしょうか。東京都心にしてはかなりの好条件です。



というわけで、フラットナーを装着したミニボーグ60EDで撮影開始。南天の定番スポットを狙います。

ちなみに、今回からカメラの制御に「BackyardEOS」を使っています。なぜかウチの環境で純正の「EOS Utility」が動作しなくなっちゃったので…。有料のソフトですが、ピント合わせをはじめ様々な機能をこの1本に集約できるので大変便利です。地味なところでは、天体名やカメラの設定を反映したファイル名を自動でつけてくれる機能が助かります。



2015年8月9日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用, ISO1600, 露出120秒×32コマ
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
ステライメージVer.7.1cで画像処理

で、上がその成果物。いて座のM8(干潟星雲)からM20(三裂星雲)、散開星団M21にかけての領域です。画面左下には小さな球状星団NGC6544も見えています。

この付近は以前も撮影していますが、当時はED103S+レデューサーEDの組合せ(焦点距離533mm)しか持っていなかったため、画角的にM8とM20を収めるのがやっとで、かなり窮屈な感じになっていました。さらに、周辺部の星像も乱れている上、当時はフラット補正を真面目にやっていなかったので、今から見ると不満の残る仕上がりでした。


今回は、フラット補正をなるべく丁寧にやった上で、画質が荒れがちな星雲の強調はほどほどに抑え、一方でM8の中にあるNGC6530やM21といった散開星団をやや強調するよう処理をかけてみました。色調に関しては、何も考えずに処理すると散光星雲が「赤」というより「濁った褐色」になりがちなので、今回は散開星団の雰囲気も加味してあえてやや青系の色を強めにしています。

真夏の都心かつ南の低空という悪条件下での写りとしては、まずまずかと思います。とはいえ、BackyardEOSの読み値では、センサー温度は41℃にまで達していた模様。これだけ温度が高いとノイズも相応に増えているはずで…やっぱり夏場の撮影は厳しいですね。



なお、問題のフラットナーの性能ですが、ミニボーグ60EDと組み合わせた時の中央と四隅の星像を示したのが上の写真(クリックで実寸表示)。コンポジット含め、各種補正操作を行っていない「撮って出し」の状態です。フルサイズだとまた様子が違ってくるかもしれませんが、少なくともAPS-Cで撮る限り十分に補正されている印象です。また、周辺減光も少なく、フラット補正が簡単だったのもありがたいところです。