PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。

個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

Sky&Telescope購読開始

以前からどうしようかとは思っていたのですが、アメリカの老舗天文雑誌「Sky&Telescope」の電子版を購読することにしました。


価格は29.95ドル/年…今のレートだと、日本円で3600円くらいでしょうか。「天文ガイド」が800〜1000円/月程度(冊子体、電子版とも)*1、電子版の年間購読で8660円/年、「星ナビ」が冊子体のみで800〜1000円/月程度、年間購読で11100円/年であることを考えると、圧倒的に安いです。

電子版自体も、ウェブ上から各種デバイスでアクセス、閲覧が可能であるだけでなく、特別な制限のかかっていないPDFで入手することもでき、非常にハンドリングしやすいです。コピー不可だったり閲覧デバイス数に制限があったり、果ては書店や出版社のサービスが終了したら閲覧自体が不可能になったりしがちな日本の電子書籍はえらい違いです。


肝心の内容ですが、これは非常に実践的でまじめなもの。おおまかな章立てとしては毎月の特集記事(8月号はアメリカの天文台の資金難の話題)、天文ニュース、毎月の天文現象、観測・観望ガイド、製品レビュー、読者からの投稿写真といった具合で、日本の天文2誌とそれほど大きな違いはありませんが、情報の質、量ともに圧倒的です。特に観測・観望ガイドについては手厚い印象*2。さらにアマチュアの自作望遠鏡の紹介などもあって、昔「天文ガイド」で掲載されていた「私の愛機」のコーナーを彷彿とさせます。新技術や新サービスの紹介も積極的に行っていて、カラーとしては20年以上前の天文ガイドが比較的近いでしょうか(情報量は比較になりませんが)。

もちろん全文英語ですが、大して難しい英語は使っていないので、特に理系で英語論文に慣れている人なら難なく読みこなせると思います。逆に「天文は好きだけど英語はちょっと…」という人には、英語の勉強にちょうどいいかもしれません。慣れ親しんだ分野なら、案外読めるものです。


さて、ひるがえって日本の天文2誌はどうかといえば…現状、お寒い限りと言わざるを得ません。

天文ガイドは執筆陣や読者層の高齢化が進んだせいか、新技術の紹介や実験的な記事は減り、内輪向けの懐古的な随筆紛いが増える一方。製品のレビューにしても予算が厳しいこともあってか、昔はほとんど見なかったメーカー提供の記事が幅を利かせています。星ナビの方は前身の「SkyWatcher」誌の頃からあえて「軟派」な方向に振っていることもあって、ある程度経験がある人にとってはやや抵抗のある紙面構成。また、良くも悪くも天体写真に比重を置きすぎている印象で、総合天文誌としてはややバランスを欠きます。


そして、このネット時代にもかかわらず、どちらも国内にしか目が向いておらず(特に天文ガイド)、海外の先進的な情報がほとんど誌面に反映されていません。


自分自身、昔から毎月の天文ガイドを中心に、星ナビ(含 旧SkyWatcher)や今は亡き「月刊天文」(地人書館)、「星の手帖」(星の手帖社)なども不定期に購入していましたが、この状況では高い金を払ってまで国内雑誌に価値を見出すのは難しいといわざるをえません。今後はせいぜい立ち読みで済ます程度でしょうか。国内天文産業の衰退に手を貸すようで、正直心苦しいのですが…。

*1:本当は電子版が冊子体と大して値段が変わらない時点ですでにおかしくて、Sky&Telescopeの場合、冊子体+電子版だと37.95ドル+送料24ドル/年かかり、電子版の方が送料抜きにしても2割以上安くなっています。このあたり、日本の書籍産業の闇を見る思いですが…

*2:写真よりは眼視が重視されている印象で、さすがはドブソニアンを生んだ国といったところです。