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惑星撮影システム構築

先日購入した動画カメラ、ZW OpticalのASI120MMとASI120MCですが、これを望遠鏡に接続するにあたり、拡大光学系をどうするか、また2つのカメラの切り替えをどうするか、といった問題がありました。


拡大光学系については、まずなにより必要な拡大率を求める必要があります。この拡大率は、望遠鏡の分解能とカメラの解像度との兼ね合いで、合理的な大きさを求める必要があります。拡大率が足りなければ望遠鏡やカメラの性能が生かしきれませんし、逆に大きすぎれば、解像度が上がらないにもかかわらず像が暗くなり、ノイズやシャッター速度の面で不利です。

そこで、望遠鏡の「遮断空間周波数」(Spatial cutoff frequency)νとイメージセンサーの「ナイキスト周波数」νnをそれぞれ求めた上で比を取り、ここから必要な拡大率を求めるという方法を取ります。

「遮断空間周波数」というのは、その光学系がどれだけ細かい明暗模様を見分けることができるか(1mmあたり何組の明暗模様を見分けられるか)を示す値で、以下の式で求めることができます(単位はmm-1)。

ν=1/λF=D/λf
 D:対物レンズの口径(mm)
 f:対物レンズの焦点距離(mm)
 F:対物レンズのF値
 λ:光の波長(mm)


λは可視光の範囲で色々な数値を取りえますが、ここでは簡単のためにλ=500nm=0.0005mmとします。EdgeHD 800の場合、D=203mm、f=2032mmですから、これらを上の式に代入すると、

ν=203/(0.0005x2032)=199.8(mm-1

となります。


一方、イメージセンサーには多数の画素が並んでいますが、この画素間の間隔(画素ピッチ)によって記録できる明暗模様の細かさは決まってきます。これを「ナイキスト周波数」といい、以下の式で求められます。

νn=1/2d
 d:画素ピッチ(mm)


ASI120MMで用いられているAptina ImagingのMT9M034の画素ピッチは3.75μm=0.00375mmですから、ナイキスト周波数は1/(2x0.00375)=133.3(mm-1)となります。


もしナイキスト周波数が望遠鏡の空間遮断周波数を上回っていれば、センサーは望遠鏡が改造した像を完璧に記録することができるということになるのですが、今回の場合、νn=133.3(mm-1)に対し、ν=199.8(mm-1)となっていて、望遠鏡の解像度の方が上回っています。逆に言えば、なるべくν=νnとなるように光学系の焦点距離を伸ばしてやればいいということになります。

具体的には、M=ν/νnを計算することで、必要な拡大率を求めることができます。今回の場合、この値は約1.5となります。つまり、1.5倍〜2倍のバーローレンズを用いることで、必要な拡大率が得られることになります。


ただし、ここで考慮しなければいけないのがカラーセンサーの方です。ここまではモノクロセンサーを前提に計算していましたが、一般的なベイヤー配列のカラーセンサーの場合、正方形に並んだR, Gx2, Bの4画素が基本単位となっています。そのためMの2倍、すなわち「3倍」が適正な拡大率ということになります。


3倍程度の倍率が得られるバローはいくつかありますが、価格と性能のバランス、評判などをもとに、Meadeの3X Ultra TeleXtenderを選びました。これと31.7mm-2インチ変換アダプターをTelescopper.jpで購入し、手持ちのフリップミラーに接続。これで拡大撮影系完成、のはずだったのですが…

なんとピントが出ませんでした(T▽T)
確認してみると、もうあと5〜6cmはバックフォーカスを確保しないとピントが合わない感じ。そこで、急遽笠井トレーディングから2インチスリーブ延長筒(80mm)を取り寄せ、31.7mm-2インチ変換アダプターとフリップミラーの間に挿入しました。


かなり長大なシステムになってしまいましたが、これでピントが合うはずです。ただでさえ鏡筒後方に重心が偏りがちなシュミットカセグレン系で、接眼部がこれだけ長くなるとバランスがとれるかどうか心配ですが…。