太陽への最接近まで100日を切ったアイソン彗星ですが、今年2月以降、明るさが伸び悩んでいました。6月から7月にかけて、地球から見て太陽の方向にあって観測できない状況が続いていましたが、8月に入って観測が行われるようになってきましたので、これらのデータを基に、独自に光度予測をしてみようと思います。
なお、データはMinor Planet Centerで報告されているものを用い、光度式の予測、光度グラフの作成には「Comet for Windows」を用いました。
で、上がこうして作成した光度予測グラフです。赤いラインが、得られている全観測データから予測される光度変化、青いラインが2012年9月以降の観測データから予測される光度変化になります。
青いラインの方は悲観的に過ぎるので、さすがにもっと明るくなると思いますが、赤いラインの方でも最大光度はせいぜい-1等級にとどまります。発見直後は「満月以上の明るさか!?」などと言われていたのに比べると、相当物足りない明るさです。しかもアイソン彗星の場合、太陽に最接近した前後の明るさの差が大きいため、実際に観測できる頃には計算上の最大光度からかなり暗くなっているはずです。
アイソン彗星はオールトの雲から初めて太陽系内にやってきた彗星ですが、このタイプの彗星は太陽に近づいても意外と明るくならないことが知られています。古いところではコホーテク彗星(C/1973 E1)やオースチン彗星(C/1989 X1)がそうでしたし、先日のパンスターズ彗星(C/2011 L4)もこのタイプでした。
これは、彗星の核が太陽の熱にあぶられているうちに、表面にチリでできた殻のようなものができ、物質の放出が妨げられるためと考えられています。光度変化を見るに、アイソン彗星もこのパターンにはまっているようです。
ただ、明るさを決定づける水の蒸発はまだそれほど活発ではないはず。また、アイソン彗星は太陽に大接近するため、たとえ「殻」ができていたとしても、熱や圧力で壊されて近日点通過前後に大化けする可能性があります*1。
過度の期待はせずに、ゆるゆると接近を待つことにした方が精神衛生上よさそうです(^^;
*1:マックノート彗星(C/2006 P1)がこのパターン