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TPC 812簡易レビュー


というわけで、Cooler MasterTPC 812を買ってきました。同時にArctic coolingの高性能グリス「MX-4」も購入*1。値は張りますが性能には定評があり、また、塗りやすく導電性がない使いやすいグリスです。

本体を取り出したところ。最近のハイエンドクラスのクーラーとしては小型とはいえ、138×103×163mm(幅・奥行・高さ)と、それなりの大きさではあります。ファンは120mm角でPWM対応。600rpmの低速回転からカバーしてるのは、静音を重視した場合に有利な点。また、付属の「Silent mode adapter」を使えば、上限回転数を1600rpmに制限できます(通常は2400rpm)。各所のレビューを見る限り、あまり高回転にしてもメリットはなさそうなので、「Silent mode adapter」の使用を前提で考えればよいでしょう。

瀬文茶氏のレビューで触れられていましたが、ベースユニットのつくりは、なるほど少々雑な感じです。ベイパーチャンバーはベースプレートから熱を吸い上げるので、記事で指摘されていた「ヒートパイプとベイパーチャンバーの間の隙間」自体はあまり問題ではないと思いますが、肝心のベースプレートとヒートパイプ、ベースプレートとベイパーチャンバーの接合の精度がイマイチのように感じました。写真でも、これらとベースプレートの間に微妙な隙間があるように見えます。

また、あまり問題ではないと書いた「ヒートパイプとベイパーチャンバーの間の隙間」ですが、ここがきっちり埋まっていれば、もっといい性能が出るのではないかという気もします。ともあれ、8000円超の高額製品としては(性能に問題ないとしても)少々残念なデキではあります。

取り付け自体は比較的容易ですが、X字型のリテンションプレートの取り付けには少々悩まされました。LGA1155につけるためには、プレートをいったん分解してベースユニット上空をまたがせ、そこで再度X字型に組みなおす必要があったのですが、説明書には記載がなく、手順に気づくまでにずいぶん時間を食ってしまいました。分かってしまえば簡単ですが、もう一息説明書が親切だったらと思います。


大きさ自体はごらんの通り。比較的小型とはいえ、かなりの存在感です。P8Z77-Vの場合、マザーボード本体のパーツとの干渉はありませんでした。

一番上のPCI-e 1×とはギリギリ干渉しませんが、余裕があるわけでもないので、拡張カードの裏面の状態には気を付けておいたほうがよさそうです。ハンダがヒートシンクに接触してショートなんてことになったら笑えません。

メモリスロットについては、一番CPUよりのスロットは完全にファンが覆いかぶさり、二番目のスロットも位置的にはかなりギリギリです。とはいえ、ヒートシンクなしのメモリであれば問題はありません。ヒートシンクつきのものも、背が低ければ大丈夫でしょう*2

心配していた高さ方向は全く問題なし。側面パネル内側に防音材が貼ってあるSoloでも干渉はしませんでした。

さて、取り付け終わったところで冷却性能の確認です。ケースは上記の通りAntec Solo。吸気ファンとして前面にGELID Silent9 PWMを2つ、排気ファンとしてGELID Silent12 PWMを1つ(ケース付属のAntec TriCoolの代わりに)取り付けてあります。室温は27℃。この状態でOCCT4.3.1で負荷をかけます。まずはリテールクーラーでの結果から。


アイドル時のコア温度からして45℃程度ありましたが、負荷をかけると温度は急上昇。3分で88℃、5分で90℃にまで達しました。ファンもフル回転で、かなりうるさいです。

一方、こちらがTPC 812に換装後。アイドル時のコア温度は30℃台後半と、リテールクーラーに比べて5〜10度ほど低め。そして負荷をかけても、5分後で65℃前後にとどまり、リテールクーラーより25℃は低い結果になっています。典型的な「窒息ケース」を使っている割にはよく冷えていると思います。「Silent mode adapter」を装着していることもあって、ファンも静か。総合的にはなかなか良好な結果ではないでしょうか。

性能や作りの甘さを考えると、正直、価格としてはもう千円ほど安いあたりが適正ではないかという気がしますが、取り回しの良さと静音性を考えれば、悪くない選択肢だと思います。

*1:TPC 812にもグリスは同梱されています。念のため。

*2:ヒートシンクはよほど大きいか、直接風が当たらない限り、チップと空気との接触を妨げ熱をこもらせる原因にしかならないので、サイドフロー型CPUクーラーを使うシステムにおいて、わざわざヒートシンクつきのものを選ぶメリットもあまりないだろうと個人的には思います。もっともOCメモリの類など、好むと好まざるとにかかわらずヒートシンクが「ついてきてしまう」のが大半ですが。