リコーから、皆がアッと驚くレンズ・センサー一体型カメラ「GXR」が発表されたわけですが、ここでちょっと冷静に、この方式のカメラが持つであろう利点と欠点を考えてみたいと思います。
まずは利点から。
実質上異なるカメラを、同じ操作系で使用できる
操作系の統一というのは、GR Digitalシリーズでリコーがかたくなに守ってきたことで、これがリコーのデジカメが支持される理由の1つですが、逆に言えば、これができていないメーカーがいかに多いかということの裏返しでもあります。下手をすれば、後継機であっても操作系がまったく変わってしまうこともしばしば。慣れの問題といってしまえばそれまでですが、操作系の異なるカメラを混在させて使うことは、撮影者に想像以上の負担をかけるものです。まぁ、これはレンズ交換式カメラ全般に言える利点の1つですね。
小型軽量なサイズを保ったまま、様々な撮影シーンに対応できる
これはレンズ・センサー一体型カメラならでは。例えば通常の一眼レフですと、超望遠撮影ともなれば、長大なレンズを装着した大掛かりなシステムにならざるをえませんが、このカメラの場合、理屈の上では小型のセンサーを採用することで、小型の超望遠撮影ユニットを作ることができます。もっともGXRの場合、通常のコンデジを上回る画質を実現することが要求されますので、そうむやみに小型のセンサーを採用するわけに行かないでしょうが、それでも通常の一眼レフよりは小型のシステムを組めそうです。
多種多様なユニットの展開が期待できる
発表の場でも触れられていたようですが、このシステムであれば、「フルサイズセンサー搭載ポートレート撮影ユニット」、「超ワイド/パンフォーカスマクロ撮影ユニット」、「超望遠/高感度天体撮影ユニット」、「超高速連写スポーツ撮影ユニット」、「防水防塵ユニット」などといった、様々な展開が考えられます。それどころか、理屈の上では撮像素子だけを乗せて他社のマウントをつけたマウントアダプター的なユニット(まずやらないでしょうけど)とか、撮影用ユニット以外の展開も考えられるわけで、やり方次第では魅力的な「総合画像処理プラットフォーム」になりうる可能性を秘めています。
一方、欠点はというと…
価格
なんといっても、買う側にとってこれが最も気になるところなのは間違いないでしょう。今回発表された本体とレンズユニットの価格ですが、店頭予想価格で本体が5万円前後、GR LENS A12 50mm F2.5 Macroが7万円前後、RICOH LENS S10 24-70mm F2.5-4.4 VCが4万円前後とのことなので、全部そろえると16万円あまりになります。一見高く思えますが、APS-Cのデジタル一眼のボディ+50mmマクロレンズと、1/1.7型採用の高級コンデジを買ったと思えば、そう価格は違いません。むしろ、よくこの価格に抑えたものだと思います。
しかし、今後、同じ撮像素子を使ったユニットや、性格の似たユニット(標準単焦点と標準ズームなど)が出てきた場合、センサーがダブる分、無駄な出費を強いられたと感じる場合が増えてくるだろうことは想像に難くありません。
ユニットのラインナップ拡充体制
レンズとセンサーが一体化しているという構造上、タムロンをはじめとするレンズメーカーの参入は困難でしょう。可能性があるとすればFOVEONを持つシグマでしょうけど、それにしても画像処理エンジンのマッチングなどを考えると参入は難しそう。となると、ユニットの供給は基本的にリコーが一手に担うことになるでしょう。供給元が1社しかない以上、ラインナップが揃ってくるには時間がかかるでしょうし、価格も高止まりするのは必定。これらが充実してくるのをユーザーが待てるかどうか、あるいは逆にリコーが開発・リリース体制を維持できるかどうかが問題になってきそうです。
また、欠点というわけではありませんが、発想があまりに斬新なため、保守的な層には受けが悪そうなのもやや気になるところではありますね。少なくとも、バンバン数が出るようなカメラにはちょっとなりにくそうな気がします。歴史の徒花にならないとよいのですけど…(^^;