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双眼鏡を選ぶ

先日、双眼鏡を買い換えようと考えている話をしましたが、あれからさらに情報収集を進め、おおよそ候補を絞り込みました。
今まで私が使っていたのは、前にも書きましたが、ビクセンの「アルティマ Z10×42(W)」。対物レンズ42mm、倍率10倍の中型機で、実視界が6.6°という広視野タイプのものです。買った当時でおおよそ3万円くらいだったでしょうか。で、これのリプレイスということになるわけですが、使用目的やこれまでの経験から、以下のような条件で後継機を選ぶことにしました。

対物レンズ口径は40mmクラスのもの

取り回しの容易さから、バードウォッチングでは30mmクラスのものも人気がありますが、私の場合、鳥以外に星も見ますので、集光力を考えるとある程度の口径はほしいところ。とはいえ、その上の50mmクラスになると、今度は重量やサイズがかさんで持ち運びに不便するので40mmクラスで。現状維持になりますが、汎用性という意味ではこのくらいが使いやすいです。

倍率は8〜10倍

手持ちなら一番使いやすい倍率だろうと思います。8倍だと像が明るく、視野も広くて動きの早い鳥などを見やすいですが、水辺の鳥などを見る場合は接近できませんので、多少倍率が高めのほうがよいように思います。

重量が軽いこと

上でも書きましたが、あまりに重いと持ち運びに難儀しますし、使っているときも腕が疲れてしまうので、強度や光学性能が保たれている限り、軽いほうが望ましいです。ただ、重い双眼鏡というのは、その分レンズや内部構造がしっかりしていることが多いので、一概に軽ければいいというものでもないのが難しいところですが*1。ちなみに「アルティマ Z10×42(W)」は625gと、このクラスの双眼鏡の中ではかなり軽い部類に入ります。

アイレリーフが長いこと

双眼鏡をのぞいたときに、全視野を見ることのできる目の位置(アイポイント)と接眼レンズ面との距離をアイレリーフといいますが、これが15mm以上あるのがメガネをかけている自分にとって大きな条件の1つ。これが15mmを切るようだとメガネをかけたままでは非常に覗きにくくなります。

予算は5〜15万円程度*2

「アルティマ Z10×42(W)」は3万円程度でしたが、先日書いたように、現在主流のダハプリズム型の双眼鏡は、ポロプリズム型に比べて製造が難しく、高価になりがち。同等の光学性能を持ったもの同士で比べると、大体1.5〜2倍程度の価格になります。となると、アルティマと同等程度のものは5万円前後で購入できるという計算になります。ところが、双眼鏡の市場で「40mmクラスで5万円程度」というのは中途半端なところ。1万円台の普及機、3万円前後の中級機の上は10万円以上の高級機という具合に分化が進んでいて、5万円前後の機種というのはあまり選択肢が多くないのです。3万円の機種ですら20年近くもったことを考えれば、15万円くらいまでの支出はなんとかギリギリ許容範囲内でしょうか。ツァイスやライカ、スワロフスキーといったヨーロッパの有名メーカーの高級品になると、ユーロ高もあって20万円を軽く超えてきますが、いい品物とはいえ、ここまでくるとさすがにコストパフォーマンスが悪すぎです。スワロフスキーのEL8.5×42WBとか、ツァイスのVictory 8×42 T* FLなんかは憧れではあるんですが…。
以上のような条件で、候補を以下の機種に絞り込みました。

ニコンの2機種は、同社のハイエンドに位置する双眼鏡で、海外での評価も非常に高いものです。重量も790g前後とこのクラスの中では比較的軽量。ただし、価格はどちらも13万円前後とそれなりです。
一方のビクセンはコストパフォーマンスで勝負。同社の最上位機種でありながら、実売価格は4万4000円程度です。ビクセンの加工技術は意外と優秀なので、もしこれで見え味がよければかなりお買い得です。705gと軽量なのも魅力的です。
ペンタックスの2機種も700g前後と軽量。接眼レンズに非球面レンズを使ってクリアな視界を実現したとのことですが、実際のところどうなのか、気になるところです。価格はおおむね8万円前後。
そして最後のコーワ*3ですが、こちらは実売価格がちょうど15万円くらいと予算ギリギリ。しかも、同社自慢の「PROMINAR XDレンズ」を採用するなど、光学系にこだわった結果か、重量が940gとこのクラスにしては異例の重さになっています。とはいえ、スポッティングスコープの分野で世界的に有名な同社が、その技術を双眼鏡につぎ込んだ力作だけにチェックはしておきたいところです。



というわけで、例によってアキバのヨドバシへ。とはいえ、なにぶんマニアックなものばかりリストアップしたので、在庫や展示があるとは限りません。とりあえず、ここで在庫のあるものだけチェックして、ないものについては近くにある専門店、協栄産業あたりで見ようと思っていたのですが、あにはからんやペンタックスの10×43 DCF SP以外は、ヨドバシに全部揃ってました。これでは周りの専門店ではたまったものではないよなぁ…と思いつつ、ポイントのこともあるので、ここで買うことを前提に各機種のチェックをしてみます。
まず、最初に手に取ったのはビクセンのアペックスプロ HR 8x42。覗いてみると、視界自体は明るいものの、色収差がやや気になります。また、ピントを合わせるために調節リングを回す際、最短合焦距離〜無限遠に至るまでの回す量が比較的多い感じです。素早いピント合わせという意味ではやや問題がありそうです。
次に、ニコンの2機種ですが、こちらは色収差も見事に補正され、キリッとした見え味。視野の周辺部でも像の崩れはほとんどありません。最短合焦距離〜無限遠まではピント調節リングを1回転させれば到達するので、素早い合焦が可能です。また、重量はアペックスプロに比べれば100g近く重いはずですが、形状がいいのか重さはあまり感じませんでした。
ペンタックスについては上述のとおり8×43 DCF SPしかありませんでしたが、とりあえず手にとってみます。アペックスプロと同様、非常に軽いのは好印象。これで見え味がよければ…というところだったのですが、ニコンのを見た後だと、どうにもダルく感じます。色収差はそれほどないのですが、シャープさというかヌケが今1つといった感じです。価格が1.5倍以上違うので、同じ水準で比べるのに無理があるいえばあるんですが…(^^;
そして最後にコーワGENESIS 44 PROMINAR 8.5×44。対物レンズを見るとレンズのコーティングも優秀で、いかにもよく見えそうな感じがします。実際覗いてみると、なるほどかなりハイレベルな見え味です。収差はニコンのものよりさらに徹底的に排除されている感じで、非常にキレのある像を結びます。さすがに同社の高性能スポッティングスコープと同じ「PROMINAR」の名を冠するだけのことはあります。ただ、案の定というかなんというか、とにかく重いです。デザインがいいのか、見ているときにはあまり重さを感じないのですが、目から外して「荷物」として手に持ったとき、1kg近い重さがズシッときます。体力のない自分では、野山での機動性にちょっと問題が出そうです。
とっかえひっかえ、双眼鏡をのぞきつつ考えて…

*1:もちろん、ガワがやたら重くて中身はロクでもないというのもありますし、その逆もあるので総合的に判断するしかないですね。

*2:すでにこの辺で世間一般の感覚からかけ離れてきてるような気もしますが、「光学系萌え」の人のたわごとと、遠巻きに生暖かい目で見守っていただければ(^^; まぁ、本当にビョーキが進んだ人に比べれば、私などかわいいものです。

*3:ちなみにこの会社、「キャベジン」や「キューピーコーワゴールド」で有名なあの「興和」です。すさまじいまでの多角化っぷりですが…(^^;