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「いいめもダイエット」サービス停止騒動と知的財産権

http://d.hatena.ne.jp/kaien/20071015/p1
先日著作権がらみの話をしたら、また著作権に関係して面白い話題が。
「いつまでもデブと思うなよ」で最近絶好調の岡田斗司夫氏ですが、著作が好評だと周囲で色々ともめ事も起こるようで、あるネットサービスが中止に追い込まれたとのこと。そのサービスというのは「いいめもダイエット」。
開発ブログによれば、

「いいめもダイエット」とは、携帯電話のメール機能を利用して、専用のアドレス(d@ememo.jp)へ食べた物を送るだけで一覧を作成してくれるサービスで、ダイエットに取り組んでいるユーザーをサポートします。

というサービス。なるほど、岡田氏の著作の内容に似ています…というか、そもそも

いいめもプロジェクト第1弾のサービス「いいめも おこづかい帳」をリリースした際、ユーザーから岡田斗司夫氏が著書『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書、2007年)で提唱している「自分の食事をすべて記録する」レコーディングダイエットに使いたいというご要望を多数いただき、その声を元に開発しました。

ということですので、岡田氏の著作で行われているダイエット法を実践するために生まれたサービスのようです。
これに対し、岡田氏が

しかしながら、著者の岡田氏より、「記録をしてダイエットに結びつけるという発想は、私の著作からスタートしていますので、見た目上はただの記録するのに便利なものですが、それをダイエットに結びつけているという点で言えば、私の著作の核心と同一ですので、著作権の侵害に当たる可能性が極めて高いと思います」などのご指摘をいただき、「「いいめもダイエット」の取り下げを希望いたします」と求められました。

と、著作権を根拠にサービスの停止を求め、開発者側がそれに応じたという経緯のようです。
しかし、リンク先のid:kaienさんの記事中にもあるように、アイデア著作権法では保護されません。著作権法の範囲内で今回の件に該当しそうなものというと…「著作物の翻訳・翻案」(いわゆる二次的著作物)でしょうか。ただ、今回問題になっているサービスは、著作そのものの翻案というよりは、著作の内容を実行するための手段を提供したということになりますから、二次的著作物に当たるかどうか微妙なところだろうと思います*1。しかも、岡田氏の著作で述べられている方法自体、決して特筆するほど珍しいものではありませんし*2
なお、id:kaienさんが記事中で、アイデアを保護する方法として特許に触れていますが、このダイエット方法については残念ながら特許にも実用新案にもなりません。特許でいう発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法第二条)、実用新案でいう考案は「自然法則を利用した技術的思想の創作」(実用新案法第二条)のことをいいます。しかるに、岡田氏のダイエット方法は「人為的な取決め」であって自然法則を利用していませんから「発明」や「考案」には該当しないのです。まぁ、いずれにしても先行事例があるようなので、権利化はどのみち無理ですが。

*1:ただ、このあたりは判例に当たってみないと、少なくとも素人の私には正確なところは分かりません。

*2:その点から言えば、岡田氏の名前を出したのはまずかったですね。言い方は悪いけれど、名前を出さなければ言い逃れのしようはいくらでもあったような気がします。名前を出したことで、岡田氏の名前を利用したと取られても仕方のない面もありますし。