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著作権分科会、法制問題小委員会と私的録音録画小委員会から中間報告

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/10/12/17169.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/12/news109.html
まず「法制問題小委員会」からの中間報告ですが、ずいぶん前にこのあたりでもだいぶ話題になっていた著作権侵害非親告罪化、さすがに該当しちゃう範囲が広すぎる上に実効性も疑問ということで、見送りとなる方向のようです。もしこの改正が成立したりすると、コミケなど含めて同人関連の業界は壊滅するでしょうし、著作権を1度も侵害したことのない人などまずいない以上、その気になれば誰でも逮捕、訴追のし放題*1という、笑っちゃうような恐ろしい状態になりかねませんので、まずはよかったかと。
それにしても、検索エンジンのウェブページ収集が著作権侵害かどうかなどという議論、いまだにやってたというのは驚きを通り越して呆れてしまいます*2。早いところ結論を出さないと、経産省主導の国産検索エンジン開発プロジェクト「情報大航海」が沈没しちゃいますよ?(笑)
一方、「私的録音録画小委員会」からは、これまた物議をかもしている「違法サイトからのダウンロード違法化」について「違法化することが適当であるとする意見が大勢であった」という報告が。ただ、これに関しては適用要件や実効性などの面で非常に問題が大きいと思いますね。
適用要件としては「違法サイトと知っていたなど『情を知って』録音録画した場合などは、私的使用の範囲から除外する」といったものが上げられていますが、そもそも何を持って「情を知って」行ったと判断するのか?とか、ローカルへのキャッシュや画面表示は本当にダウンロードに当たらないのか?など、制裁を加える方向の規定があいまいなため、利用者への萎縮効果しか生まないかと。これでは「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的に逆行していると言わざるをえないでしょう。まぁ、コンテンツホルダー側の言い分も分かるんですが、だからといってダウンロードも違法化しちゃえというのはいくらなんでも乱暴すぎる議論。
幸い、16日からパブリックコメントを募集するそうなので、関心のある人は簡単でもいいと思うので、意見を寄せましょう。おそらく業界側も社員を総動員してパブコメを集めてくるでしょうから、こちらも頑張りませんと(^^;

以下、法律の素人の戯言ですが(^^;
コンテンツホルダー側が著作権強化の方向に一斉に流れていっているのは、著作権を特許などと同様の知的財産権と位置づける考え方が大きいと思います。確かに、著作権特許権意匠権などと同じく知的財産権として扱われることが多いですし、現実に利益を生み出してもいますが、実は著作権は、特許権などの他の知的財産権とは立ち位置が大きく異なります。
それが最もよく分かるのが各法の第一条。例えば特許法には「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」とあり、意匠法には「この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」とあります。すなわち、いずれも産業の発達…つまり経済的な利益に重点を置いているわけです。
ところが、著作権法の第一条は「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」とあります。すなわち、元々が経済的な利益を守ることを主たる目的とはしていないのです。
アメリカの著作権法などは、日本のものに比べると経済面に重きが置かれていて、性格が特許法などと非常に近いものになっていますが、このあたりの違いを踏まえずにアメリカに倣って、それ知財立国だ、知的財産権の強化だ、とやろうとしたために、あちこちで歪みが生じるんじゃないかと思います。国ごとに文化に対する態度や考え方は違うはずなので、文化に直結する著作権については、国際協調も意識しつつ、相当に慎重な議論が必要なはずなんですが…。

*1:まぁ、これは冗談半分の極論ですけど、当局が恣意的な運用をすれば不可能ではないはず。そして歴史を振り返れば「治安維持法」など、そういったケースはまま存在するわけで…。

*2:アメリカやドイツなど多くの国が「フェアユース」の考え方を適用することで、この問題をひとまず回避してますね。フェアユースについてはこちらこちらがよくまとまっています。