PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。

個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

20cmクラスの鏡筒

惑星状星雲や銀河、はたまた惑星など視直径の小さな対象を撮影・観察する上で、現在持っているもの(ED103S)より大口径かつ長焦点距離の筒が欲しいなとは、前々から思っていました。

下の表は、現在国内で容易に入手可能な口径20cm前後の長焦点望遠鏡の一覧です。現在使用中のSXP赤道儀の搭載可能重量(16kg)も考えて、重量が10kg以下のものに限定してあります。

この中では、笠井のALTER-7/7Pがまず脱落。性能はよさそうなのですが、いかんせん予算オーバーです。逆に、ビクセンのVMC200Lは性能面で脱落しました。製造しやすさとコストを優先し、光学性能をある程度割り切った設計なのですが、温度順応が速い開放鏡筒であるということ以外、通常のシュミットカセグレンに比べて優位性が見出せません。

次いで、SkyWatcherのBKMAK180とタカハシのμ-210が脱落。どちらも惑星の眼視・撮影に限れば大変優秀な望遠鏡ですが、どちらも焦点距離がかなり長く、直焦点撮影には向きません。レデューサーをかませても大幅に明るくなるわけではなく、加えてμ-210では強烈なコマ収差が発生するのも問題です。上にも書いたように惑星状星雲や銀河の撮影にも使いたいので、この仕様だとちょっと困ります。

笠井のGS-200RCはバックフォーカスが非常に長く、オフアキシスガイダーやフィルターホイールをはじめ様々なアクセサリーを取り付けられるのが利点ですが、その分、取り回しがやや厄介そう。性格的には冷却CCDで銀河などを狙うことに特化した筒で、副鏡による遮蔽が大きいこともあわせ、汎用性にはやや欠ける印象です。

ミードについては、昨今の会社本体の経営難や代理店の姿勢*1を考えると、あまり積極的には手を出したくない感じです。ACF光学系は補正板と球面主鏡、双曲面の副鏡を組み合わせて各種収差を補正するという優秀な設計ですが、天文ガイド2011年9月号、10月号のレビューを見る限り、性能や作りの面でセレストロンのEdge HDシリーズと同じかやや下回る印象で、無理に選ぶ必要はなさそうです。

セレストロンの口径235mmの筒は重量がそれなりにあり、口径が大きい分焦点距離も長め。加えて口径200mmのものと比べて価格差が大きく(特にEdge HD)、これも脱落です。


というわけで、残ったのはVC200LとC8AL-XLT、Edge HD 800の3本となりました。

VC200Lは開放鏡筒なので温度順応が速く、また良像範囲が広くて設計上の写真性能は非常に優秀です。手持ちのカメラアダプターなどがそのまま使えるのも利点。また、光軸が狂いにくく、この手のカタディオプトリック系にしては扱いは容易な方です。一方で、太いスパイダーと大きな副鏡は像のコントラスト面で不利に働きます。また、各所の評価をつぶさに調べてみると、どうやら鏡の精度にばらつきが少なからずあるようで、中には複数の同製品をサイド・バイ・サイドで見比べても明らかに見え味が悪い個体もあるようです。このような筒に当たった場合、昔はビクセンの方でかなり良心的な対応が行われていたようなのですが、最近はそうでもないようでここは不安材料です。

一方、C8AL-XLTは昔からのベストセラー鏡筒で実績は十分。コマ収差が残っていること、光軸が狂いやすいこと、構造上ミラーシフトが発生すること、密閉型鏡筒なので温度順応に時間がかかることなど、欠点も少なからずありますが、ユーザー数の多さとノウハウの蓄積量、アクセサリの豊富さは魅力です。価格も突出して安いですし。

Edge HD 800は上記C8にフラットナーを組み込んだような構造で、コマ収差が補正され良像範囲が広がっています。温度順応を促進するチューブベント*2や主鏡を固定するミラークラッチが設けられるなど、鏡筒の構造も改良されています。


…で、なんでこんな話をいきなりし始めたかというと、今月、セレストロンの数量限定セールが始まっていて、Edge HD 800が普段の実売価格から3万円引きの128000円という…。

で、PCの前で気絶して、やってしまいました。いわゆる「戦略的衝動買い」というヤツですね。まぁ、実際のところ、天文ガイドのバックナンバー漁ったりして事前にさんざん検討した挙句、あとはタイミングだけの問題だったので予定通りといえば予定通り。来春には消費税も上がりますし…

*1:中古品について修理対応を一切しないなど。おかげで不要になったとしても中古買取を拒否される場合もしばしばとか。買い取ってもらえたとしても、かなり安くなってしまうと思います。

*2:換気孔が小さい上にホコリ侵入防止用のフィルターまでついているので、実際の効果のほどは少々怪しいですが