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アイソン彗星の光度予測

【11/10 追記】最新予測はこちら

太陽最接近まであと50日ほどとなったアイソン彗星。こんな無茶な企画まで立ち上がる中、明るくなってくれないと困るわけですが…どうもなんかキナ臭い雰囲気が漂ってきています。Minor Planet Center(MPC)に報告されているデータを用い、「Comet for Windows」で光度式の予測、光度グラフの作成を行ったのがこちら。




赤いラインが当初予測されていた光度変化、青いラインが2013年1月以降の観測データから予測される光度変化を示したものになります。MPCに報告されているデータは主にCCDでの観測によるもので、これで得られる光度は眼視観測で得られる光度より1〜2等ほど低く出るといわれています。なので、その点を考慮に入れれば、予想光度は赤いラインに近づいてはきますが…さて、どうなりますことやら。

ただ、少なくとも「今世紀最も明るい」なんてことにはならなさそうに思います。まぁ、その辺の不透明さも含めて、「彗星は水物」といわれる所以なんですが。

QHY製カメラ国内発売開始

http://www.syumitto.jp/SHOP/950415/list.html
http://www.y-tomita.co.jp/ccd/qhyccd/qhyccd01.html
Syumittoと天文ハウスTOMITAが国内代理店となって、QHY製のカメラの販売がスタート。特に注目はQHY5L-IIで、小型で高感度、お手軽な値段と三拍子そろっているので、オートガイダーとして、あるいは惑星などの撮影用として人気が出そうな気がします。

オートガイダーとして見た場合、感度は十分高いですし、ピクセルサイズも小さいので高精度のガイドが期待できます。ただし、チップサイズが4.83×3.63mmと小さく必然的に視野が狭くなるのが弱点。現在人気のLodestarのように「ガイドマウントなしでもガイド星が楽に見つかる」となるかどうか…。とはいえ、半額近いので十分お買い得だと思います。

ところで、このQHY5L-IIが搭載しているAptinaのMT9M034というチップはCMOSです。CMOSは、CCDに比べると感度面では有利になったものの、構造上ノイズが多くなりがちでゲインを上げづらく、天体用としてはこれまであまり使われてこなかったのですが、いよいよ使い物になるものが出てきたということのようです。なお、電子シャッターはCMOSとしては一般的な「ローリングシャッター」。動体を撮影すると対象が歪んで写る、いわゆる「コンニャク現象」が発生することで有名ですが、天体のような静止物を撮影する分には問題ないでしょう。理屈の上では、シーイングが激しく乱れているときに影響が出る可能性がありますが、そんな日はそもそも撮影に向いていません。

このチップを搭載したカメラは、ほかにZW OpticsのASI120MMなどがありますが、これも恐ろしいほどの低価格。もちろん、どちらのカメラも中華製なので、その意味でのコストダウンもあるとは思いますが…。

下に現在人気の製品も含め、天体用動画カメラのスペックをまとめてみました。この様子では今後、全体的な価格破壊が起こってくるかもしれません。

なお、表中の「量子効率」は、チップに入射した光に対してどれだけの電子が発生したかを表す数値で、この数字が大きいほど感度が高いチップといえます。ここでは各チップのデータシートなどを調べた上での数字を上げています。ただし、カメラ全体としてみた場合、読み出し部やシグナル増幅回路の作り、放熱効率の良し悪しなどにより実用感度は変わってきますので、チップの量子効率がいいからといっても、必ずしも高感度で使えるカメラになるとは限りません。

ちなみに、オートガイダーとして人気のLodestar、QHYのカメラのように惑星撮影にも使えないかと考える人もいるかもしれませんが、残念ながらあまりその用途には向いていません。Lodestarで用いられているCCDはインターレーススキャン型のものです。これは走査線を奇数ラインと偶数ラインに分けて、交互に伝送・表示する方式ですが、この場合、フレームごとの解像度は本来の撮像素子の解像度の半分になってしまいます。つまり粗い画像しか得られないわけで、惑星撮影などにはまったく向いていないといえます。