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「恋する小惑星」を検証してみた 第12話【最終回】

3か月間追いかけてきた「恋アス」も、ついに最終回を迎えました。この検証記事のシリーズも今回がラスト。第11話から引き続き、濃い天文ネタが満載ですが、気合を入れていきましょう。今回も長いです(^^;



「きら星チャレンジ」2日目の昼は勉強会からスタート。小惑星についての教科書を輪読しています。


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後ろの黒板、ホワイトボードには色々と書かれていますが、気になったので内容を起こしてみました。まずはホワイトボードの方から。



研究の目的は?

・まず何をするか
 太陽系小天体の探査
 この研究をして何が面白い?
 
 太陽系の成り立ちを知る手がかりとなるため
 
 →小惑星を検出し小惑星帯の知見を広げる


背景

これまで80万の小惑星が確認されている
しかしながら暗い小惑星はまだたくさんある

 →小惑星を我々で発見しよう!
  その特徴を調べて性質を探る

これは今回の「きら星チャレンジ」の大目的ですね。地上から普通に観察する限り、小惑星は単に「動く光の点」にしかすぎませんが、例えば反射光のスペクトルを分析すれば表面の組成が分かりますし、光度変化や掩蔽*1の観測をすれば形についての情報が得られます。


こうした情報を積み重ねることで、小惑星帯がどうやって形成されたか、さらには惑星がどのようにして形成されたか、太陽系がどのようにして今のような姿になったのかの謎を解く手がかりとなるのです。


次に黒板の内容です。



小惑星
不規則な形をした岩石上の天体
100kmより小さいものが多い
ケレス→小惑星の中で最大!!
大きさ…約950km


大きさが大きい程引力が強いので球形に近い


ケレス 約950km
イトカワ 約500m

1段目は小惑星についての基礎の基礎、小惑星とは何か、です。


板書にあるとおり、小惑星は岩石状の小天体で、最大のケレスでさえ直径約950km。地球の月(直径3474.3km)の1/3以下のサイズしかありません。それでもケレスはある程度の大きさを持っているため、自身の重力でまだ球状の惑星っぽい姿をしていますが、それ以外のものは重力が弱いために球状の形にまとまることができず、不規則な形をしています。ラッコのようなイトカワの姿を覚えている方も多いでしょう。小惑星は全体で80万個近くあります*2が、直径100kmを超える小惑星は220個しかなく、ほとんどは直径数百m~数kmの小天体です。


なお、ケレスは2006年8月の国際天文学連合(IAU)での決議*3により「準惑星」として分類されなおしましたが、これを依然として「小惑星」として扱っていいのかどうかは議論があります。もしケレスを「準惑星」として扱うのであれば、最大の小惑星は(2)パラス(582×556×500km)になります。



・多くは誕生時の熱で溶けた経験がない
・風雨はないが宇宙風化で表面の性質は変化する
・太陽系のタイムカプセル

2段目は、小惑星を調べると何が分かるかについてです。


小惑星は、これまでの様々な調査より、そのほとんどが高温にさらされた経験がないことが分かっています。昔は「小惑星は何らかの原因で砕かれた惑星の残骸である」という説があったのですが、惑星が砕けたものなら核やマントルで高温にさらされた痕跡があるはずです。しかし、そうしたものがないことから、現在では「太陽系形成時に惑星になり切れなかったもの」と見られています。逆に言うと、太陽系形成時の情報がほぼそのまま残っていると考えられるのです。


とはいえ、小惑星の表面は太陽風宇宙線に晒されて様々な変化をしている(宇宙風化)ため、太陽系誕生時の姿そのまま、というわけではありません*4。余談ですが、はやぶさ2が弾丸を打ち込んで小惑星内部のサンプルを採取したのはまさにこれが理由で、宇宙風化を受けていないサンプルを分析することで、きっと太陽系誕生についての様々な情報を得ることができると思います。



※名前の付いた小惑星
 ↑
(約52万)確定番号の小惑星(正確な軌道確定)
 ↑ (5年以上)
(約25万)仮符号の小惑星(一晩で数回の位置観測 二夜以上)

合計78万個


命名のルール
発見者が名前を提案

3段目は小惑星命名について。


小惑星を発見したと思ったら、その情報を国際天文学連合(IAU)の下部組織の小惑星センター(MPC: Minor Planet Center)というところに送ります。そして、2夜以上の観測が行われて軌道がある程度決まると、発見した年月を元に「仮符号」というものが発行されます。仮符号が発行されている小惑星の数は、2018年現在、約25万個です。


そして、その後観測を重ねて軌道の精度が十分に高まると「確定番号」(小惑星番号)が与えられます。確定番号が発行された小惑星は2018年現在、約50万個に達します。


なお、板書には「確定番号」への矢印のわきに(5年以上)と書かれています。基本的には、小惑星については4回以上の衝で観測が行われて十分な軌道の精度が出せ、10年後の予報誤差が角度にして19.6秒角以下になった時に確定番号が与えられる*5 *6のですが、小惑星帯小惑星の公転周期は4~6年程度あるので、4回以上の衝を観測するには最短でも5年近くかかってしまうのです。


ここまでくると、ようやく小惑星に名前を付けることができます。小惑星は、太陽系の天体で唯一、発見者が自由に*7名前を付けられる天体で、それが長いことアマチュアを引き付けてきた理由でもあります。


ただ、最近は全自動掃天システムによって発見される小惑星が激増していて、命名がまったく追いついていません。理屈としては、命名の権利はプロジェクトの実施担当者にあるのですが、対象の数が多すぎるので彼らが名前をつけることはあまりなく、命名者が発見者に対して名前をつけることを要請して命名されることがほとんどです*8



性質
90~95%は小惑星帯
(火星と木星の軌道の間)


大部分は主要な惑星よりも高い離心率と軌道傾斜角を持つ
               ↓
              どちらかというと楕円形

e = √(a^2 - b^2) / a  e=0:円

4段目は小惑星の性質について。


今までのところ、小惑星は大半が火星軌道と木星軌道の間の「小惑星帯」で発見されています。そしてその軌道ですが、主要な惑星よりも高い離心率*9と軌道傾斜角*10を持つことが知られています。


例えば離心率ですが、惑星で最も大きいのは水星の0.20564、次いで火星の0.09342です。しかし小惑星帯小惑星の場合、下の図*11のように0.25を超えるのはザラです(横軸がおおむね2~4 auの範囲が小惑星帯に当たります)。


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また軌道傾斜角についても、惑星は水星が約7度と大きいものの、それ以外は4度以下に収まっています。しかし、小惑星帯小惑星は、下の図に示すように10度以上のものも多いのです。


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ともりん小惑星のスペクトルは、普通コンドライト、炭素型コンドライトにそれぞれ対応するS型、C型などがあり…って、なにそれ?』
マッキー小惑星の光を分析すると、主な成分が分かるってこと』
ともりん『へぇ~、小惑星にも種類があるんだねぇ』
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花島『例えば、はやぶさが行ったイトカワは岩石質のS型、はやぶさ2が目指しているリュウグウは炭素質のC型だね』
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いやいやいや。小惑星のスペクトル分類とか、コンドライトとか、こんなゴリゴリの専門用語を一切の注釈なしに放り込んでくるアニメは初めて見たよ!(笑) これは説明が必要ですね(^^;


小惑星は太陽の光を受けて輝いているわけですが、この反射してきた光の色成分を分析することで、小惑星の表面の様子が色々と分かってきます。これが小惑星のスペクトル分析です。


例えば、反射光に赤い光が多ければ、小惑星の表面に赤っぽい物質が多いことが分かりますし、反射光がものすごく暗ければ、表面は黒っぽい物質で覆われているのだろうということが分かります。また、ある物質に特徴的な光の吸収が見られれば、小惑星表面にその物質が存在することの証拠になります。


そして、このスペクトルの特徴によって、小惑星はS型、C型などいくつかのグループに分類されるのです。


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小惑星の代表的なスペクトル型
http://astro-dic.jp/spectral-type-2/より)


一方、地球に落ちてくる隕石はその多くが小惑星帯由来だと考えられていますが、これらについては、その成分によって石質隕石、鉄隕石、石鉄隕石などに分けられるのは第5話の検証記事で書いた通りです。
hpn.hatenablog.com


このうち、小惑星帯由来の石質隕石については、さらにその成分により普通コンドライト石質隕石の92%)、炭素質コンドライト(同5%)などに分類されます。コンドライトというのは「コンドルール」という隕石特有の球状の粒子を含む岩石のことで、普通コンドライトはその名の通りコンドライトとしてもっとも普通のもの、炭素質コンドライトは色々な化合物や有機物の形で炭素原子を含むものをいいます。


そして、これらの隕石との比較により、スペクトルによる小惑星の分類と隕石の分類とを紐づけることができました。


現在では、S型小惑星が普通コンドライトC型小惑星が炭素質コンドライトにそれぞれ対応することが分かっています。


なお、C型小惑星には、太陽系が生まれた当時の星間物質の元素組成の情報が含まれると考えられていて、アミノ酸脂肪酸といった生命活動に欠かせない分子も含まれている可能性があります。その意味で、C型小惑星をターゲットとした「はやぶさ2」には大きな期待がかけられているのです。



ちなみに、花島さんが手にしているのは、イトカワリュウグウの3D模型。これを出力した3Dプリンタは冒頭にちょこっとだけ写っていました。


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PCの脇にある黒いボックスがそれ。手前にはイトカワリュウグウの3D模型が置かれています。ボタンの配置などから、機種はおそらくXYZプリンティングの「ダヴィンチ 1.0 Pro」がモデルでしょう。同社の製品は価格が手ごろで、一般向けとして最も売れている3Dプリンタの1つです。
https://www.xyzprinting.com/ja-JP/product/da-vinci-pro


なお、イトカワリュウグウの3DデータはJAXANASAによって公開されていて、3Dプリンタさえあれば誰でも模型を出力することができます。
darts.isas.jaxa.jp
nasa3d.arc.nasa.gov
planetarium.jp




夜が更けると、いよいよ2度目の小惑星探索開始です。


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天文台の外の星空はおそらく21時ごろのもの。石垣島らしく、みなみのかんむり座やぼうえんきょう座などの南天の星座が、かなりの高さにまで昇っていることに注目です。


その後、小惑星の撮影の合間にみんなで屋上に出て、星空を観望します。


あお『あ、火星すごい!』
マッキー『今年は大接近の年だもんね。今、-2.5等くらいかな』
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2018年は火星の大接近の年でした。火星は約2年2か月ごとに地球に接近するので、このときが観測のチャンスなのですが、火星の軌道はかなりつぶれた楕円のため、軌道のどこで地球と接近したかによって地球との距離が大きく変わります。いわゆる「大接近」と呼ばれるような接近の時は地球に5600万km程度まで近づくのに対し、「小接近」では1億km以上も離れていて、見掛けの大きさは2倍ほども違います。


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2018年の大接近はかなり条件が良く、最接近時の地球-火星間の距離は5759万kmでした。ここまで接近するのは2003年以来で、次に同レベル以上の接近を見るには2035年9月まで待たなければなりません。


2018年は最接近が7月31日で、この時の明るさは-2.8等、視直径が24.3秒角(木星の半分程度)にもなりました。ところが、普段なら表面模様の観測に絶好の機会なのですが、この時は火星の表面で大砂嵐が起き、下の写真のようにうっすらとしか模様を確認することができませんでした。しかも、火星はいて座~やぎ座の付近の低空にあり、大気の揺らぎの影響もあって実際の観測条件は決して良くありませんでした。


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2018年8月1日0時22分20秒(日本時間)
セレストロンEdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm) SXP赤道儀
L画像:ZWO ASI290MM, 10ms, 4500フレームをスタック
RGB画像:ZWO ASI290MC, 30ms, 1500フレームをスタック


石垣島ぐらい南まで行くと火星の高度は上がりますし、そもそもの大気の揺らぎも小さいので、きっといい条件で火星の表面を観測できたのではないかと思います。


ともりん『あ、流れ星!』
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西空ですね。沈みゆく春の星座が見えています。星図と照らし合わせると22時ごろでしょうか。21時ごろから集合、撮影を開始したとして、1領域のひと揃いの撮影にかかる時間が30分ですから時間的に矛盾はありません。


8月中旬ですから、この時期の流星というとペルセウス座流星群を連想したくなりますが、残念ながらこの流星は流星群とは関係のない「散在流星」のようです。もしペルセウス座流星群であれば、かみのけ座~うしかい座の方からおとめ座~てんびん座の方へと飛んでくるはずです*12


西空を左から右へと横切ったのを考えると「やぎ座α流星群」(出現期間:7/10~8/25 極大日:7/30)や「みずがめ座δ南流星群」(出現期間:7/15~8/20 極大日:7/30)も考えられなくはないですが、西空ではもう少し上から下へと角度がついて流れるはずで、やはり流星の経路が合いません。


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一方、反対の東の空には、すでに秋の星座が昇ってきています。こちらでも流星が一瞬流れるのですが、経路を見ると、こちらは散在流星ではなく「やぎ座α流星群」の流星のようです*13。やぎ座α流星群は、極大時でも1時間当たりの出現数が3個ほどと小規模な流星群ですが、ゆっくりと流れ、また時折、火球めいた明るい流星が流れるのが特徴です。さらりとこんなマイナーな流星群を、活動期間中の放射点の移動を考慮し、しかも極大日から外して放り込んでくるあたり、本作のスタッフは相変わらず油断がなりません(^^;


みら『うーん…』
あお『新しいものはなさそうだね』
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マッキー『今度の領域はどう?』
ともりん『はぁ…ないねぇ…』
みら『こっちも既知のものしかない…』
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小惑星の探索を続けるみら達ですが、目指す新小惑星はなかなか見つかりません。


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位置としては、1枚目が赤経21h30m01s, 赤緯-15度03分25秒付近、2枚目が赤経21h32m13s, 赤緯-15度33分32秒付近。黄経で言うといずれも320度近辺になります。この時期の太陽の位置は、11話後半の検証記事で書いた通り黄経141度近辺ですから、やはり衝の位置を探索し続けていることになります。


花島『条件は悪くないから、あとは根性と運かな』
みら『運…ですか』
花島小惑星は自転してるし、いびつなものが多いから、角度によっては急に明るく見えたりもするんだよ』
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花島さんの言う通り、小惑星は自転の具合によって急に明るくなることがあります。


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https://darts.isas.jaxa.jp/planet/project/hayabusa/shape_ja.plより)

例えば、上の図はイトカワを別の方向から眺めたものですが、どちらの面が向いているかによって反射面の大きさ、すなわち明るさが大きく変わるのが分かると思います。



結局、残念ながら新天体発見とはいかず、翌日の結果発表会の資料作りに進みます。


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むりかぶし望遠鏡の撮影装置については、11話後半の検証記事に書いた通りです。資料にg', Rc, Icのフィルターがついていると書いてあるところを見る限り、やはり「MITSuME 3色同時撮像カメラ」を撮影に用いたようです。


ここで、あおが『むりかぶしの写真なら撮ってある』と言うので、てっきりスバルの写真を撮ったのかと思いましたが、「むりかぶし望遠鏡」のことでした(^^;


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実はこの時間……おそらく15日の4時ごろと思われますが、外には「むりかぶし」ことスバル(プレアデス星団、M45)がかなりの高さにまで昇ってきていたのです。



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徹夜で資料作りを行った面々は、結果発表会に臨みます。光学班、電波班ともに新天体発見には至りませんでした*14が、何度か触れられていた通り、「発見できなかった」ということも立派な結果。胸を張ってよいと思います。




みら達が帰郷後は、地学部の面々が集まって「おかえりなさい会」&屋上で観望会です。


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あおのカメラは、軍艦部~ダイヤル部が斜めにカットされている形状から見て、おそらく富士フイルムのX100Fがモデルでしょう。2430万画素のAPS-Cセンサーに23mmF2のレンズ(35mm判換算で35mm相当)を組み合わせた、高級コンパクトデジカメです。
fujifilm-x.com


富士フイルムのカメラは一般に、赤い散光星雲の写りがいいことで知られていますし、レンズのF値も明るいので、天体写真にはうってつけです。ただし、コンデジといえども「高級」の名に恥じず、2017年の初値で15万円前後、2018年時点でも実売価格は12~3万円と、なかなかいい値段がします。高校生のあおがポンと気軽に出せる金額でもないので、親からの借り物かもしれません。



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月の欠け具合などを見ると、この日は8月17日のようです。直前に、ともりんから『星まつりでナマねおんに会えたよ!!!!』とメッセージが来ているのですが、星まつりのモデルである2018年の「南の島の星まつり」では、11話後半の検証記事に書いた通り、ライブは18日の土曜日に開催です。おそらく作中の「石垣島星祭り」では当日金曜日にでもライブが行われたのでしょう。



みら木星の導入、終わりました!』
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最初の頃はもっぱら見せてもらう側で、望遠鏡の操作すらおぼつかなかったみらが、ちゃんと木星を導入できています。1年間でのみらの成長が実感できるいいシーンです。



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石垣島で高く昇っていた、みなみのかんむり座やぼうえんきょう座は地平線上すれすれに。川越との緯度の違いを感じます。ぼうえんきょう座は高度10度以下で、全体を見ることすらできません。



ナナ『しましま…』
あお『うん。今日は衛星が4つ見えるね』
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衛星の位置からすると、どうやら20時ごろのようです。『衛星が4つ』というのは、第2話の検証記事でも触れた「ガリレオ衛星」のことです。衛星の位置によっては、木星の影に隠れてしまって全部が見られないこともある*15のですが、この日は4つ全部がちゃんと確認できました。



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みんなで空を見上げるラストシーン。第1話冒頭の、みらとあおが木星を見上げながら小惑星の発見を誓うシーンから移り変わっていく演出を見ると、始めは二人だけの漠然とした約束だったのが、いつの間にか多くの人を巻き込んで、明確になったそれぞれの夢、目標に向かって進んでゆく……という風に変化していったのかなと感じさせます。




と、これでこの記事も最後です。ちょうど最終回と同じタイミングで、第11話に出てきたVERAが予算カットにより前倒しで運用停止、という残念なニュースも飛び込んできましたが、「恋アス」に触れていなければ、ここまで残念な気持ちにもならなかったでしょう。


幸い、こちらの検証記事も、思った以上に多くの人に読んでもらえていたようです。その意味でも、確実に天文・地学への興味を引き出すのに貢献した作品だったのかなと思います。折あしく、コロナウイルスの影響で各種の施設が閉まっていたり、コミケが中止になったりと逆風も多いのですが、天文などは長く続けることのできる趣味ですし、1人でも多くの人が夜空や地面にちょっとでも目を向けてもらえればと思います。


そして原作者のQuro先生、スタッフの皆様、素敵な作品をありがとうございました。


うつむいた先にも
見上げてる先にも
きっと未来は待っているよ
だから歩いていこう

   OP「歩いていこう!」
   (作詞・作曲:川嶋あい 編曲:伊賀拓郎 唄:東山奈央




※ 本ページでは比較研究目的で作中画像を使用していますが、作中画像の著作権は©Quro・芳文社/星咲高校地学部に帰属しています。また、各星図はステラナビゲータ11/株式会社アストロアーツを用いて作成しています。

*1:小惑星などの天体が恒星を隠す現象。恒星が隠れたタイミングや、隠れていた長さを複数の場所で観測することで、小惑星のおおよその形が分かります。

*2:2018年当時

*3:冥王星を惑星から外した決議。このとき、「準惑星」というカテゴリも新設されました。

*4:つい先日、イトカワのサンプルから、ひげ状の金属鉄の結晶が見つかりましたが、これも宇宙風化の一例です。https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11149_itokawa

*5:https://www.minorplanetcenter.net/iau/info/Astrometry.html#number

*6:https://www.minorplanetcenter.net/iau/info/UValue.html

*7:他の天体と重複しない、人名については、その個人が政治家、あるいは軍人である場合、死後100年以上経過している、などいくつかのルールはあります。https://minorplanetcenter.net/iau/info/HowNamed.html

*8:例えばイトカワの場合、発見したのは全自動掃天システムの1つLINEAR(Lincoln Near-Earth Asteroid Research)ですが、小惑星探査衛星「はやぶさ」を打ち上げた宇宙科学研究所がこのチームを通してIAUに申請し、名前が認められています。

*9:軌道がどれだけ円に近いかを示す。この数字が0の場合が真円で、大きくなるほど楕円に、そして1の場合が放物線となる。1以上だと双曲線であることを示す。板書にあるe = √(a^2 - b^2) / aという式が求め方。

*10:黄道面に対して軌道がどれだけ傾いているかを示す。

*11:https://www.rpubs.com/MHE/Asteroids_JPLより。次の図も同様。

*12:そもそも放射点のほぼ反対側ですので、その意味でも考えづらいです。

*13:やぎ座α流星群の放射点は、出現期間中に東へと移動していきます。図に示したのは8月14日時点の放射点の位置です。

*14:モデルとなっている「美ら星研究体験隊」でも、2018年度は新天体の発見はありませんでした。

*15:実際、第2話では衛星が3つしか見えませんでした。

「恋する小惑星」を検証してみた 第11話後半

さて、昨日に引き続き、第11話の後半戦です。前半パートを未読の方はこちらへどうぞ。
hpn.hatenablog.com


後半はいよいよみら達が小惑星探索に乗り出します。またしても天文ネタが山盛り満載なので、果たしてどれだけの分量になるか……。さっそく見ていきましょう。



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みら達が到着時の石垣島天文台。南~南西方向の空です。


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星図と突き合わせるとこんな感じで、おそらく8月13日の19時30分~20時頃の空ではないかと思います。この時期、関東では18時半ごろには日没を迎えますが、日本の西端近くにある石垣島では日没時間が遅く、19時20分にならないと日が沈みません*1。天文薄明が終わるのは、なんと20時40分のことです。


ともりん『食後にアレはキツイわ…』
みら『結構なクネクネ道だよね…』
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石垣島天文台は標高197mの前勢岳の山頂にありますが、そこまで行くためには3km以上にわたる細くて険しい山道を行かなくてはなりません。ここに限らず、天文台の多くは山頂にある*2ので、アクセスはなかなか大変です。


ひと息ついたら、新小惑星の探索を目指すグループのディスカッション開始です。ここではチューターの指導の下、グループ内で観測方針を決めていきます。


花島『さて、私たちが狙う小惑星はどこにあるかというと…』
みら小惑星帯』 マッキー『アステロイドベルト』
ともりん『おー!デュエット…』
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みらとマッキーが対象にすると言った小惑星帯(アステロイドベルト)は、火星と木星の軌道の間。小天体が密集している領域です。


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上の図は太陽系内の小惑星の分布をプロットしたものですが、まさに火星と木星の軌道の間に無数の小惑星(紫色の点)が群れているのが分かります。これが小惑星帯(アステロイドベルト)」です。プロットされているのは、当然、今までに発見された小惑星ですが、未発見のものもまだまだ同領域に多数存在するものと考えられ、新天体発見のチャンスは大いにあります。地球からの距離が比較的近く、動きが大きくて検出しやすいのも利点です。


なお、木星の軌道上にも、木星を挟み込むように小惑星の群れがありますが、これは「トロヤ群」と呼ばれる小惑星の一団です。これも面白い対象ではあるのですが、ひとまず今回は対象外です*3


未踏の領域と言えば、海王星以遠のエッジワース・カイパーベルト天体EKBO)」も現在非常にホットな対象です。しかし地球から遠いために暗いものが多く、また動きがゆっくりなので短期間では動きの検出が難しいという問題があります。少なくとも今回の趣旨には合わないでしょう。


花島『そうだね。じゃあ、夜空のどのあたりを観測すればいいかな?』
みら・マッキー『衝の位置』
ともりん『今度はユニゾンか』
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みら『地球からの距離が一番近くなる場所ですよね』
花島『そう。堀口さん、お願いします』
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堀口『はい。木ノ幡さんの言う通り、ここが衝。小惑星は太陽の光を反射してるから、衝にあるときが一番明るく大きく見えるんだ』
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国立天文台水沢VLBI観測所の堀内貴史 特任研究員の名前をもじったと思われる、堀口正美さん登場です。


「衝」というのは、惑星などの天体が地球を挟んで太陽のちょうど反対側に位置する時期のことです。このとき、天体と地球との距離は最も近くなり、また天体の全面が太陽に照らされる*4ため、最も明るく大きく見えます。


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ちなみに、この年(2018年)の「美ら星研究体験隊」の実施報告書を見ると、まさに同じような内容について話している写真が載っています。


花島『世界中の天文台や宇宙望遠鏡の全天サーベイで明るいものはほとんど見つかってるから未知の小惑星は20から21等級より暗いものが多いんだ』
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とはいえ、明るい小惑星はすでにPan-STARRSに代表される全自動掃天システムによって発見されつくしていますから、狙うのは衝でも20~21等級以下という暗くて小さい天体になります。ちなみに、Pan-STARRSで使われる望遠鏡の場合、口径は1.8m。視野が3度もあり、わずか30~60秒の露出で24等級までの天体を撮影することが可能という化け物です。こんなのと対抗していくのはなかなか大変です。


花島『今回は、一辺が0.2度角の範囲を1領域として、衝の周辺を撮影していきます』
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あお(月の大きさが0.5度角だから…これくらい)
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花島『1領域につき5回、各6分露出で写真を撮影して30分。こんな感じで時間の許す限り観測を繰り返します』
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天体の探し方ですが、基本的には時間をおいて写真を撮り、その間に恒星に対して動いている天体を探すというやり方になります。ただ、ここでは6分露出×5回と言っていますが、6分も露出すると小惑星などは線を引いて写ってしまうので、あくまでも「1回の撮影ターンが6分」で、正味の露出はもっと短いのではないかという気がします*5 *6。実際のところは分かりませんが。


【追記 2020/03/26】
下記の撮影システムだと、1分露出での検出限界が18~19等(「石垣島天文台の観測報告9」より)とのことなので、20~21等以下の小惑星を狙おうとすれば、もっと露出を伸ばす必要がありそうです。本当に6分露出かもしれません。



今回の場合、1回の撮影で撮れる範囲は一辺0.2度角の正方形の範囲。あおがメモっている通り、月の大きさより小さな範囲です。本当は上で触れたPan-STARRSのように、もっと広い範囲を一気に撮影できれば新天体を捉える確率は上がるのですが、焦点距離の長い大望遠鏡の場合、なかなかそうはいきません。むりかぶし望遠鏡の場合、焦点距離は実に12600mmもあります。いわば超望遠レンズで撮影するようなもので、どうしても狭い範囲しか写せないのです。


そこで、少しでも広い範囲を写せるよう、一般向けの望遠鏡で言うところの「レデューサー」を用います。


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「石垣島天文台の観測報告9」より)


むりかぶし望遠鏡のカセグレン焦点には「MITSuME 3色同時撮像カメラ」と呼ばれるシステムが取り付けられています。3台の冷却CCDカメラを用いてg'(緑)、Rc(赤)、Ic(近赤外)を同時に撮影できるもので、元々はガンマ線バーストを素早く観測するために開発されたものです*7。このシステムには「F変換レンズ」が搭載されていて、これを用いることで焦点距離を6825mmまで短縮することができるのです(F12→F6.5)*8


カメラ本体は冷却CCDカメラApogee ALTA U6で、撮像素子はKodakのKAF-1001E。画素数は1024ピクセル×1024ピクセルで、素子のサイズは24.6mm×24.6mmです。これらの組み合わせにより、1回で0.2度角四方の領域を撮影することができます。


また、ここでは説明されていませんでしたが、小惑星帯小惑星を探す場合は、主に黄道近辺を撮影することになります。小惑星を含む太陽系の天体の大部分は、ほぼ同一平面(黄道面)上を公転しているので、黄道近辺を探すのが最も探索効率が良いのです。中には黄道面を離れた軌道を回る小惑星もありますが、それらは大抵、EKBOのように地球から遠く離れていて、今回の探索プログラムの対象にはなりません*9



花島『撮影したデータはノイズを除去して小惑星探査ソフトで解析。5枚の画像を恒星が重なるようにして連続表示すると…』
みんな『『おお~!』』
花島『動いてるのが小惑星
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昔は、動いている天体を見つけても、それが未知のものであるかどうかを確認するのが本当に大変だったのですが、今ではデータベースと連動することで比較的簡単に未知の移動天体を同定することができます。


ここで見えているのは、(330179)という小惑星番号の天体です。小惑星は発見されると最初に「仮符号」というものが発行されます。これは発見年月を元に付けられるものですが、その後、観測が重ねられて軌道が確定すると、正式登録されて小惑星番号」が与えられます。小惑星番号は、初めて発見された小惑星である(1)ケレスから始まる通し番号になっています。


(330179)は、キットピーク国立天文台のSpacewatchプロジェクトによって2006年2月20日に発見された小惑星です。直径は3.2kmで、小惑星としてはありふれたサイズです。


(330179)の軌道要素はMinor Planet CenterJPLで公開されているので、これをステラナビゲータに入力して表示させてみると……


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2018年8月13日の23時30分~14日0時ごろの小惑星の位置がおおよそ一致します*10。みなさん、かなりの夜更かしさんのようです。


マッキー『それにたしか、新しい小惑星は最低2夜以上の観測が必要なんだよね』
みら『え!?』
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これは彗星を含め、新天体発見時の鉄則です。こうしておかないと、何かの理由で誤検出した、というケースを排除できません。実際、見つけたはずの新天体が2夜目以降に行方不明になるケースは昔からしばしばあります。今回の「きら星チャレンジ」の場合、2夜目以降の観測は天文台のスタッフが引き継いで行ってくれることになっています。


マッキー『観測の難しさは他にもあるよ』
あお『あ…天気モニター』
花島『心配はしてたけど確かに雲行きが怪しくなってきたなぁ』
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天文台には、たいてい空模様を監視するための全天モニターや降雨モニターが装備されていて、観測室に居ながらにして空の様子を監視することができるようになっています。現在の天文台では、望遠鏡からのデータもパソコンに取り込んでから処理するので、実際のところ、天文学者は昼夜問わず観測室や研究室にこもりきりで、星空を眺める時間よりもパソコンに向き合っている時間の方が圧倒的に長かったりします(^^; 星を眺める優雅でロマンチックな仕事だったのははるか昔の話です。


みら『観測4回目…はぁ…』
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ともりん『全部既知の星だねぇ…』
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天文台の外の星空が写りましたが、星図と突き合わせてみると2018年8月13日の21時ごろの空とおおよそ一致します。


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先ほど、小惑星探索をやっていた写真は2018年8月13日の23時30分~14日0時ごろのものでしたので、この作品にしては珍しく、時空が歪んでいるようです。おそらくは夏の南国の雰囲気を出すために、さそり座が見える時間帯をあえて選んだ演出かと思います*11。もし時刻通り正確に描写すると、空にあるのはやぎ座やけんびきょう座など暗くて地味な星座ばかりになってしまい、あまりに華に欠けます。


ここで注目はさそり座の位置が高いことで、また、さらに南側にあって本土での観測が難しい、じょうぎ座やさいだん座も見えています。緯度の低い石垣島ならではの星空と言えるでしょう。


そして小惑星探索の方ですが、残念ながら写っていたのは既知の小惑星ばかりでした。表示されている小惑星番号を見ると、(31632)(170056)の2つです。


(31632)は1999年4月7日に、全自動掃天システムLINEAR(Lincoln Near-Earth Asteroid Research)によって発見された小惑星で、Stephaying*12命名されています。直径は6.7km。(170056)は2002年11月7日に同じくLINEARによって発見された小惑星で、直径5.1km。小惑星帯にある小惑星の中で「ヒギエア族」*13と呼ばれるグループに属しています。


先の場合と同じく、軌道要素を入力してステラナビゲータで表示してみると……


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2018年8月14日の午前2時ごろの小惑星の位置がおおよそ一致します。


なお、彼女たちが撮影していた領域は、星図で示すと下の図の四角で示したあたりの位置になります(黄色のラインは黄道)。黄経で示すとおおよそ321°付近です。


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一方、この時の太陽の位置は黄経で示すとおおよそ141°付近で、ちょうど撮影領域の正反対に位置しています。つまり、事前の計画通り、衝の位置を撮影していたわけですね。



その後、雲の量が増えてきて解析は中断。休憩に入ります。お互いに「きら星チャレンジ」に参加した理由を聞いていくのですが……


ともりん『私は!ねおんに会いたくて!』
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みら『ねおん?』
ともりん『天文好きアイドルの天音ねおんー!』
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『きらチャレ後に星祭りあるじゃーん。今年のゲストなんだー』
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……うん、君は「推しが武道館いってくれたら死ぬ」世界線に行った方が幸せそうな気がします(笑)


ポスターにある「石垣島星祭り」は、実在の「南の島の星まつり」がモデルですね。
star-festival.amebaownd.com


2001年から続くお祭りで、石垣島天文台も深くかかわっています。星空観望会や講演会、フォトコン、ライブなどが大々的に催されるようです。


ちなみに2018年の星まつりのポスターはこちら。


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ライブは18日なので、なるほど「きら星チャレンジ」が終わってからでも*14十分間に合いますね。


「天音ねおん」が夏川りみになってるあたりはご愛敬(^^; 逆に、Skoop On Somebodyが「Sputnik」という、そこはかとなく音が似ていて、かつ天文に関係ありそうな名前のお笑いコンビ(?)になってるあたり、芸が細かいです。



花島『みんな申し訳ないけど…天気が回復しそうにない。今夜はここまでにしよう』
みら『え!そんな…』
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花島『その代わり過去の撮影データで探索の練習をしてみようか』
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ここまでの時刻の同定が正しければ、午前2時に最後の解析を行って休憩、ときていますから、この時点ですでに午前3時近いはずです。ここからさらに、過去データを使った探索の練習ですから、おそらくプラス1~2時間は作業したのではないかと思われます。この日の石垣島の天文薄明開始は4時57分、日出が6時17分なので、ほぼほぼ徹夜と言っていいでしょう。


実際、2018年度の「美ら星研究体験隊」実施報告書に掲載されているスケジュール表では、「29時」(!)まで観測が入ることになっています。翌日、みらが眠そうだったのも無理はありません。


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石垣島の夜明け。おそらくは14日の6時ごろでしょうか。中央に見えている輝星はシリウスです。8月と言えども、明け方にもなると冬の星座が昇ってきています。


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カットのつなぎ方からすると「翌朝」という印象ですが、みら達の活動時間を考えると、むしろ「観測終わり」のカットと捉えた方がいいのかもしれません(^^;



マッキー『時間帯に左右されない電波観測はいいよね~』
ともりん『今日は日中勉強会か~。コーヒー多めに飲まなきゃかな』
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当然、電波は太陽光や雲の有無には影響されませんから、昼夜や天気を問わず、理屈の上では24時間フルタイムで観測が可能です。また、電波望遠鏡に人が貼りついている必要もないため、「美ら星研究体験隊」では25時以降は無人観測となっています。ただし、その分データ量は膨大なはずで、VERA班もそれはそれで大変だったのではないかと思います。



ともりん『うおー!眠くない!眠くないぞー!』
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みら達が宿泊する「石垣青少年館」のモデルとなっている「石垣青少年の家」は東西方向に長い建物です。



みらたちが出てきたのが午前中であれば、このカットは逆光になるはず。木の影を見るとほぼ真下に落ちているようですし、時間帯としては昼頃と思われます。14日の石垣島で太陽が南中するのは12時48分なので、ざっくり13時ごろでしょうか?「美ら星研究体験隊」の場合、12時から活動再開だったので、「きら星チャレンジ」はもう少し余裕がありそうです。



……やれやれ、どうにかこれでほぼ全てのネタを拾い切りました。11話でこれなので、最終話はどうなることやらorz


お話はいよいよ「小惑星の発見なるか!?」というところに焦点が集まってきました。ここまで見てると、Quro先生はなかなかリアル志向の作家さんですし、アニメの制作陣も意図をよく汲んでいるので、そう簡単に夢をかなえさせたりはしなさそうな気もしますが……。ともあれ、最終回まであと数日。楽しみに待ちたいと思います。




※ 本ページでは比較研究目的で作中画像を使用していますが、作中画像の著作権は©Quro・芳文社/星咲高校地学部に帰属しています。また、各星図はステラナビゲータ11/株式会社アストロアーツを用いて作成しています。

*1:厳密に言うと、日出・日没時間の変化は経度だけでなく緯度の影響も受けます。

*2:それでも、石垣島天文台は市街地に近い分はるかにマシです。

*3:後述しますが、衝の位置から離れているのが一因です。

*4:月でいう満月に相当

*5:実際、このあとの小惑星検出画面では、小惑星は断続的に動いており、決して線は引いていません。

*6:1分露出の5分休憩とかだとキリが良さそう。

*7:MITSuMEについては、こちらの資料などが詳しいです。http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/prwps/infomation/workshop/2007/kyodoriyo/Dec.14.Part3/2.Mori-Kawai.pdf

*8:参考:http://oister.kwasan.kyoto-u.ac.jp/meeting/WS2018/pdf/OISTERWS2018_Horiuchi.pdf しかし、地味に色々とトラブルが発生してますね(^^;。

*9:ただし、黄道から離れた領域は探索の手があまり及んでいないので、新天体を見つけるチャンスは十分あります。例えば、準惑星のエリスは19等とかなり明るい天体ですが、軌道傾斜角が44度と大きく傾いていて、黄道面から離れたところを移動していたため、つい最近まで発見されませんでした。

*10:アニメ内のソフトウェア上で表示されている写真は(倒立像ではなく)上下が反転しているため、ここでは星図も上下反転させています。MITSuME 3色同時撮像カメラには波長分割のためのダイクロイックミラーが内蔵されていて、これで光路分割を行うため、ここでの反射により像が反転するのです(望遠鏡の像は倒立像で、ここにミラーによって奇数回の反射が起こると左右が反転するため、上下反転像となります)。

*11:加えて、石垣島より少々緯度が高いところの星空になっていますが、これも画面内にさそり座を収めるための演出なのでしょう。

*12:ニューヨークのManhasset高校に通うStephanie Yingという女学生の名前にちなんでの命名https://www.minorplanetcenter.net/db_search/show_object?object_id=31632

*13:(10)ヒギエアと似通った軌道を描いている小惑星の一群で、天体の衝突でヒギエアから飛び散った破片からなると考えられています。

*14:モデルである「美ら星研究体験隊」は8月13日~15日の日程で行われました。

「恋する小惑星」を検証してみた 第11話前半

いよいよ今回からは「きら星チャレンジ」。最終回に向けて一気に盛り上がってきました。モロに天文関連のイベントだけに、ネタは盛りだくさん。それだけに、一般にはあまりなじみのない用語なども頻発してましたので、そのあたりを含めて検証、解説していきましょう。


とはいえ、今回はあまりに物量が多いので、前半パートと後半パートの2回に分けて解説していきます。



先生『けど、事前にちゃんと相談してくれれば、参観者として同行することもできたんだぞ』
みら・あお『『えっ』』
先生『宿泊費なんかは自腹だけど…募集要項に書いてあっただろ』
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前回、みらに黙ってついてきてしまったあおですが、募集要項にあった参観者の件で先生にツッコまれています。前回の検証記事で、この参観者の項目については指摘しましたが、どうやらビンゴだったようです。

hpn.hatenablog.com



先生『主宰はいらっしゃいますか?』
堀口『ええ、あちらに…』
先生『廣瀬さん、ご無沙汰してます』
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主宰の廣瀬直也さん(CV: 土田大)。これも前回の検証記事で指摘の通り、「美ら星研究体験隊」の代表者、国立天文台水沢VLBI観測所の廣田朋也 助教のもじりでしょう。さすがに「声優としてご本人登場!」なんてことはなかったですね(^^;


このあと、直談判であおに参観者としての参加が認められますが、これはあくまでフィクションだからなせる業。実際のところ、この手の催しに参加する場合は保険などの手続きも事前に必要ですし、押しかけ参加は先方に多大な迷惑をかけてしまいます。絶対に真似はしないでください。



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指導役の花島和弘さん。これもほぼ間違いなく、国立天文台水沢VLBI観測所の花山秀和 特任研究員のもじりでしょう。花山さんは2016年からは石垣島天文台の副所長を務めていらっしゃいます*1



廣瀬『ここはVERA石垣島観測局』
ともりん『うわぁ、でっか~!』
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みら『これって国土地理院の?』
廣瀬『よく知ってるねぇ。以前つくばにあったのと似た種類のアンテナだよ』
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『これと同じものが国内4か所にあって、全体で直径2300kmの電波望遠鏡になるんだ』
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国立天文台の「VERA石垣島観測局」が出てきました。VERAというのは"VLBI Exploration of Radio Astrometry"の略で、直訳すると「VLBIによる電波天文学の探究」といった意味合いです。国立天文台が進めている研究テーマの1つです。


VERAについては後ほど説明するとして……ここでは先に、VLBIという技術について解説しておきましょう。


そもそも電波望遠鏡というものについてですが、これは身近な光学望遠鏡と同じく、電波を集めて対象を観察するための装置です。仕組み自体はほとんど光学望遠鏡と同じで、放物面のパラボラアンテナで集めた電波を受信器で受け、これを解析します。


ただ、厄介なのは電波望遠鏡の分解能は非常に低い」ということです。光学望遠鏡では口径を大きくすればするほど分解能が上がりますが、電波望遠鏡もそこの事情は同じです。しかし、分解能は観測する電磁波の波長の長さに反比例する(観測波長が短いほど高分解能)という特徴があります。光学望遠鏡の場合、観測する波長はおおむね380~760nm程度の可視光の範囲ですが、電波望遠鏡での観測に用いられる電波の波長は数mm~数十cmオーダーで、1万~100万倍もの長さです。


VERA石垣島観測局のアンテナは直径20mもありますが、観測波長が光学望遠鏡の100万倍とすると、光学望遠鏡で言えば口径2mm程度……口径5~7mmの肉眼にも劣る程度の分解能しかないわけです。そこで、これを克服するための技術が開発されました。それがVLBI(Very Long Baseline Interferometry, 超長基線電波干渉法)です。


VLBIでは、遠く離れた2つ以上の電波望遠鏡で発信源を同時に観測します*2。それぞれ離れた位置から発信源を観測すると、発信源からの距離がわずかに異なる分だけ電波の到達時間に差が生じるので、電波望遠鏡間の距離が正確に分かっていれば、発信源の方向を正確に決められます。そして望遠鏡間の距離が離れれば離れるほど、到達時間の差は大きくなり、発信源の方向を決める精度は上がっていきます。この性質を利用すれば、わずかに異なる方向にある接近した2つの発信源も見分けることができる……つまり高い分解能を得ることができるわけです。


VLBIの性能は電波望遠鏡間の距離に比例します。VERAで用いるVLBIの場合、最も遠く離れた石垣島~水沢間の距離、すなわち2300kmの口径の電波望遠鏡を使ったのと同じ分解能*3を得ることができるのです。



なお、VLBIは測量に用いることもできます。はるか遠くの発信源からの電波の到達時間の差を観測し、これに電波の速さ(=光速)をかけ、天体の方向を考慮することでアンテナ間の距離が極めて正確に分かります*4。これを複数の望遠鏡間で行うことで、正確な地球の形を求めたり、緯度・経度を厳密に決定したり、地殻変動を検出したり……といったことが可能になります。


みらが言っていた国土地理院の』というのは、おそらく合宿で行ったつくばにかつてあったアンテナのことですが、あれはまさに、この「測地VLBI」に用いられていたものです*5


測地分野でVLBIは天体の位置を基準に正確なアンテナ位置を求めますが、天文分野では逆にアンテナの位置を基準にすることで天体の正確な位置を求めます。「位置を決める」という意味で、両者は表裏一体の関係にあるわけです*6



廣瀬『VERAでは主に、強い電波を出すメーザー天体を観測して銀河系の立体地図を作ろうとしてるんです』
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みら『地図?』
廣瀬『年周視差を利用した宇宙三角測量で天体の正確な位置や動きが分かるからね』
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そして、VERAではこのVLBIネットワークを用いて、天体までの距離を正確に測ることを目的にしています。ターゲットは「メーザー天体」。メーザーというのはレーザーの電波版で、波の揃った非常に強力な電波です。これを発する天体をメーザー天体といい、赤色超巨星や活動銀河核*7などがそれにあたります。


地球は太陽の周りを回っているので、半年たつと地球軌道の直径分だけ離れた位置から天体を観測することになります。このとき、手前にある天体は、背景である遠くの天体に対して動いて見えます。この方向(角度)の差を年周視差と言い、VERAではこれを非常に厳密に測定します。地球軌道の直径は分かっていますから、あとは三角関数の応用で、対象の天体までの距離を決定することができるわけです。


ただ、年周視差は遠くの天体になるほど小さくなってきて、例えば銀河系中心部にある天体だと約3000万分の1度にしかなりません。ところが、地球には大気があって揺らぎを起こすため、地上から精密に位置を決定するのは困難です。ちょうど今週の「KiraKira増刊号」で関連する話を解説していますね。

www.youtube.com



そこで、VERAで用いる電波望遠鏡には、近接する2つの天体を同時に測定する「2ビーム観測」が可能になる仕組みが搭載されています。一方の天体をリファレンスとすることで大気の揺らぎを打ち消し、観測対象の位置を精密に測定することができるわけです。この仕組みを「相対VLBI」といいます。現時点では、2ビーム同時受信が可能な電波望遠鏡は、天文観測用としてはVERAが世界唯一のものです。


このように様々な技術を駆使したVERAが検出を目指す視差は、わずか10マイクロ秒角(=3億6000万分の1度)という超高精度。月面上の1円玉を地球から観測したときの見かけの大きさに匹敵します。10万光年という銀河系の大きさをほぼカバーできるレベルです。



みら『うわー!大きい!それになんかかわいい』
花島『むりかぶし望遠鏡は口径105cm。九州・沖縄地方では最大の反射望遠鏡です』
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みら『むしかぶり?』
ともりん『むりかぶし。こっちの言葉でスバルのこと』
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花島『ここでは可視光と赤外線の観測を行っています。小惑星の探索をするのはこっちだね』
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花島さんの解説の通り、石垣島天文台の望遠鏡「むりかぶし」は九州・沖縄地方で最大の望遠鏡*8で、可視光または赤外光での観測に対応しています。架台はコンピュータ制御の経緯台式です。一般に経緯台で天体を追尾すると、視野の中で徐々に天体が回転していってしまいますが、むりかぶし望遠鏡ではこれを、同じくコンピュータ制御の視野回転装置(ローテーター)でキャンセルするようになっています。


愛称の「むりかぶし」は石垣島方言でスバル(プレアデス星団, M45)のことで、「群れ星」または「盛る星」から転じたものです。なお、ともりんの出身地である沖縄本島の方言では、語源は同じですが「ムリブシ」、「ブリブシ」、「ブルブシ」、「ムリブサー」などと呼ぶので、ともりんが『こっち』と言ったのは石垣島を指しているのが分かります。



ともりん反射望遠鏡ってことは、レンズじゃなくて鏡?』
みら『うん。あ、えっと、主鏡と副鏡で光を反射して…』
マッキー『むりかぶしはカセグレン系の反射望遠鏡。凹面主鏡と凸面副鏡で像を結んでるんだね。焦点は研究用と観望用で3つあるみたい』
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レンズではなく凹面鏡を用いて光を集めるのが反射望遠鏡ですが、現在用いられている反射望遠鏡は大きく2つのタイプに分けられます。1つは、主鏡からの光を平面鏡を使って鏡筒の側面に導くニュートン式。そしてもう1つは、主鏡からの光を曲面の鏡を用いて、中心に穴をあけた主鏡の裏側に導くタイプです。後者の代表例がカセグレン式で、そのためこのタイプをまとめて「カセグレン系」と呼んだりします。



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カセグレン式は放物凹面の主鏡と双曲凸面の副鏡を組み合わせたものです。理論的には非常に優秀な光学系なのですが、双曲凸面の副鏡の製造が非常に難しいという問題があります。また、視野中心部は非常にシャープなものの、視野周辺の星像が崩れがち*9で、写真撮影などに使おうとすると広い視野が得られません。


そこで、このカセグレン式を改良して生み出されたのが「リッチー・クレチアン式」。むりかぶし望遠鏡はこの光学系を採用しています。


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リッチー・クレチアン式では、主鏡副鏡とも双曲面に近い高次非球面としています。製造が難しいのはカセグレン系と同様……いや、それより難しいくらいなのですが、視野周辺でも星像の崩れは小さく*10、広い範囲を写真撮影するのに向いています。このため、近年の天文台の望遠鏡の多くはこの光学系を採用しています。



さて、マッキーが『焦点は研究用と観望用で3つあるみたい』と言っていますが、ここでいう「焦点」は望遠鏡の光の出口……接眼部とほぼ同様の意味です。



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石垣島天文台ウェブサイトより)

上の模式図を見ると分かりますが、望遠鏡の光の出口は3か所あります。メインで使われるのは「カセグレン焦点」で、各種のカメラや観測装置はここに取り付けられます。


一方、光路の途中に平面鏡をセットすると、左側または右側の「ナスミス焦点」に光が導き出されます。この「ナスミス焦点」というのは、平面鏡を使って経緯台の高度軸*11に光を導き出す方法です。高度軸は望遠鏡に対して位置が動きませんので、望遠鏡がどんな方向を向いたとしても常に同じ姿勢で観測が可能です。


むりかぶし望遠鏡では、このナスミス焦点を観望用として利用しています*12。ここに潜望鏡のような構造の筒を装着し、背の低い人や車いすの人でも利用を可能にしているわけです。


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花島さんの頭上にあるのがそれで、この時はナスミス焦点未使用のため、筒は跳ね上げられています。使用時は適当な高さにまで引き下ろして使用します。



……と、ここまででようやく前半パート終了です。専門用語連発だったので、天文分野に馴染みのない人にはチンプンカンプンだったのではないでしょうか?まぁ、こうした用語を聞き流せるか、逆にしっかり理解している人以外は、すでに振り落とされてしまっているような気はしますが……(^^;




※ 本ページでは比較研究目的で作中画像を使用していますが、作中画像の著作権は©Quro・芳文社/星咲高校地学部に帰属しています。

*1:https://yaimatime.com/yaimanews/15509/

*2:実際には、原子時計によるタイミングデータと観測データを記録します。

*3:観測波長が光学望遠鏡の100万倍とした場合、光学望遠鏡の口径2m程度に相当

*4:数千km離れたアンテナの距離が、数mmの精度で決定できるレベル。

*5:同アンテナは2016年に運用を終え、解体されました。役目は茨城県石岡の観測施設に引き継がれています。

*6:イノ先輩が知ったら狂喜乱舞しそうです。

*7:銀河の中心にある大質量ブラックホールに物質が大量に落ち込み、そのエネルギーが強力な電磁波として放出されているもの。

*8:ちなみに、九州最大は福岡県八女市星野村の「星の文化館」にある口径100cmのもの。国内最大は岡山天文台の「せいめい望遠鏡」で口径3.8mです(一般の人が利用可能なものでは西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」の口径2mが最大)。

*9:おおむね同じF値ニュートン式反射と同程度のコマ収差が発生します。

*10:像面湾曲が残りますが、フラットナーで補正可能です。

*11:もちろん、光を通せるように軸は中空になっています

*12:高度軸という安定した位置に焦点があるので、重量級の観測装置を取り付けるのにもしばしば使われます。「ナスミス焦点1」はこの目的です。